インテリア界のアカデミー賞!日本人デザイナー×日本企業で初受賞
毎年ミラノ・サローネの期間中に[ELLE DECO INTERNATIONAL DESIGN AWARDS (以降、EDIDA)]が発表される。「インテリア業界のオスカー(アカデミー賞)」と、世界的人気デザイナーPatricia Urquiola女史が称した名誉ある賞。今年、日本人デザイナーと日本企業というジャパン・カップリングによるプロダクトが受賞したというニュースが入った!
「ELLE DECO」世界25誌の編集長による選出
フランス本国はじめ世界に25版を展開するインテリア誌「ELLE DECO」。その各国編集長がノミネートした13カテゴリー(デザイナー部門、家具やキッチン部門など)について、今年の一番優れたものを選出するアワード。中でもDESIGNER OF THE YEARは”今年の顔”的なデザイナーに贈られる賞で、2016年はスペイン人のJaime Hayon氏が受賞。うなずける選出だった。【画像1】授賞式はミラノのフランコ・パレンティ劇場にて「ELLE DECO」25誌の編集長が一堂に、Jaime Hayon氏を囲んで(写真/Valentina Sommariva)
日本人デザイナー×日本企業によるプロダクトが受賞したのは、キッチン部門。
吉岡徳仁氏デザインによる、トーヨーキッチンスタイル社の「FINESSE」。
トーヨーキッチンスタイル渡辺社長が授賞式に登壇し、世界のジャーナリストなど関係者を前に英語で喜びのスピーチをした。【画像2】「大変名誉な賞を頂き、光栄に感じております。このような賞を頂けた事に感謝し、今後もトーヨーキッチンスタイルならではのキッチンの在り方を皆様にお届けできるよう邁進して参ります」左から2人目が渡辺社長(写真/Valentina Sommariva)
授賞式に所用で出席できなかった吉岡氏は
「2009年にDESIGNER OF THE YEARを光栄にも受賞し、その受賞を機に、多くの出会いときっかけを頂きました。この度は、キッチン部門の賞を頂き大変光栄です。これからもこの賞を有り難く受け止め、デザインの歴史を創り出すような、心が震えるようなものづくりを心掛けていきたい思います」とコメントを寄せた。【画像3】吉岡徳仁:2000年吉岡徳仁デザイン事務所を設立。 デザインからアート、建築まで幅広い領域において、実験的で革新的なクリエーションは国内外で高く評価され世界のデザイン賞を多数受賞。アメリカNewsweek誌日本版による「世界が尊敬する日本人100人」にも選出(写真/(c) MASAHIRO SANBE)
「ELLE DECO」日本版の濱口編集長も、「吉岡さんはじめ日本人デザイナーは深澤直人さん、佐藤オオキ(nendo)さんと既にDESIGNER OF THE YEARを受賞していますが、日本企業のプロダクトでは初めて」とうれしいサプライズ。と言うのも、日本版からのキッチン部門ノミネートは別の企業のプロダクトだった。
「世界の編集長から吉岡さんのデザイン発想と、トーヨーキッチンスタイル社の製品の完成度の高さに評価が集まりました」という経緯。
「日本企業はインハウス(社内)デザイナー中心の文化ですが、このように外部デザイナーとメーカーが対等なメンタリティでコラボレーションする事で、より面白い作品が生まれることが期待できます。この受賞は他の日本企業にも良いキッカケになりそう」と、話してくれた。
“FINESSE(フィネス)ー透明なキッチン” はこうして生まれた
では、なぜトーヨーキッチンスタイル社が吉岡氏とコラボすることになったのか? 渡辺社長に聞いてみた。
「吉岡徳仁さんの作品が好きだったから」というのが理由。トーヨーキッチンスタイル社はキッチンだけでなく家具や照明などインテリアをトータルに提案する会社。長年、カルテル社など吉岡氏の家具も販売してきた中で
「今までと違った視点のキッチンはないだろうか? と考えたときに、吉岡さんの手がけるキッチンが見たくなり依頼したのです」
プロジェクトスタートから発表まで約5年の開発期間をかけ「当初の私の期待以上に美しく完成しました」と大満足、今秋発売を前に既に予約が入っているということだ。 【画像4】収納するキッチンから、魅せるキッチンへ。「シェフから長く愛される道具たちは、とてもシンプルで、機能的な美しさを兼ね備えている。透明なキッチンに収納された道具たちを、シルエットが美しく奏でることで、使う人の自由な発想によって変化する、新しいキッチンが生み出される」という吉岡氏のコンセプト(写真/(c) TOKUJIN YOSHIOKA DESIGN)【画像5】キッチン本体は、ステンレスのフレームのグリッド構造で構成され、全体を覆うスモークガラスによって、道具たちの美しいシルエットが浮かび上がる(写真/(c)TOKUJIN YOSHIOKA DESIGN)
世界が評価した日本の技術力&職人技
吉岡氏の斬新な発想のデザインを実現するのは簡単ではないはず。トーヨーキッチンスタイル社の開発担当に伺ったところ
「完成するまで全てが挑戦の連続だった」という言葉が返って来た。
「FINESSEの特徴である内部が見える構造は、本来であれば隠れる場所が見えるということ。ネジ一本一本の色や配置までも考慮し、技術開発部門とデザイン部門が一体となって、細心の注意とさまざまなアイデアを駆使して設計しました」【画像6】ステンレスの幅4.8mもある巨大なワークトップは繋ぎ目が分からないようにつくられている。80年を超えて培ってきた、トーヨーキッチンスタイル社の職人技術の結晶(写真提供/TOYO KITCHEN STYLE)
私も欧州で取材して感じることだが、このような仕上げの美しさや工程の難しさへの理解が日本人以上に高いのがフランス人やイタリア人。今回受賞の理由も「見る人が見ると分かる」、そんな所にあるのだろう。
ますます目が離せない、トーヨーキッチンスタイル社の展開
今回は吉岡氏とのコラボで成功を収めたトーヨーキッチンスタイル社だが、DESIGNER OF THE YEAR受賞のJaime Hayonも起用してオリジナル洗面「MATERICO by Jaime Hayon」を2014年に発表するなど、トータルインテリアの”スタイル”提案を広げている。
今年6月18日には、オランダのインテリアブランド「moooi(モーイ)」の東京ショールームをオープン予定。
「moooi」は今年のミラノ・サローネで私も印象に残ったプレゼンテーションだったので、東京ではどんなことになるのかワクワクする!【画像7】ミラノ・トルトーナ地区での「moooi」。展示会場に現れた、共同創業者&デザイナーのMarcel Wanders。Lovely な小鳥の照明が今回私のお気に入り!(写真撮影/藤井繁子)
2016年のミラノ・サローネは、トーヨーキッチンスタイル社のEDIDA受賞だけでなく、EuroCucinaキッチン見本市会場にサンワカンパニー社が出展したり、フォーリ・サローネ街中展示でもパナソニックやアイシン精機が賞を受賞するなど日本企業の活躍が見られた。日本へ凱旋した各社の動きにも注目したい!●ミラノ・サローネ 2016のレポート
・写真満載!ミラノ・サローネ2016の家具&キッチン最新トレンド
・世界最大のインテリアの祭典「ミラノ・サローネ2016」現地レポート●以前のイベントの様子(SUUMOジャーナル)
・【ミラノ・サローネ現地レポート(1)】Milan Design Week 2012 プレスレビュー@TORTONA
・【ミラノ・サローネ現地レポート(2)】LIXILもDIESELも!TORTONA地区が面白い
・【海外レポート】ミラノ・サローネ前夜、注目のデザイナーPiet Boonを訪ねて
・【海外レポート】アムステルダムでトップデザイナーの自宅に訪問●参考
・ELLE DECO INTERNATIONAL DESIGN AWARDS
・トーヨーキッチンスタイル社
・吉岡徳仁デザイン事務所
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