単純作業ばかりやってない?「TODOリスト」をうまく使えていない人が見落としているポイント
『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパービジネスパーソンです。そんな石川さんに「残業しないチームと残業だらけチームの特徴」についてお聞きしました。
今日やる仕事を「完全見える化」することで目の前の仕事に集中する
私が出社して必ず最初にやること。それは「B5版のノートを開くこと」です。
ノートには「今日やるべきこと(TODOリスト)」が書かれています。昨日終業時に「明日やるべきこと」として書いておいたものです。そのリストに、出社するまでに思い出した追加でやるべきことを書き加えます。ノートは両開きで70行もありますので、最大70項目のリストを作ることができます。
リストの内容は、株主総会の手続きや決算業務などの重たい仕事から、仮払精算やメール作成などの軽い仕事まで様々です。
皆さんの中にも、今日やるべきことを書き出しているという方がいるかもしれません。しかし、毎日習慣化している人はそれほど多くないのではないでしょうか?結構面倒な作業ではありますが、私は毎日これを欠かさずにやっています。
そのはなぜか?
私の場合「頭の中にあるすべての事柄を吐き出す」ことで、目の前にある仕事に集中できるからです。たとえハガキを投函するという簡単な仕事でも、頭の片隅に覚えておくより、ノートに書いてしまうことで目の前にある仕事に集中できるのです。このノートの最大のメリットは、やるべきことは全てこのノートに書いてあるという安心感が得られるということです。そして、やることが終わるたびに赤いペンで丸を付けていく達成感も味わえること。丸が増えていく達成感は、仕事が楽しくなる要因にもなります。
すごいスピードで仕事が片づいても“満たされない”理由
しかし、丸が増えていっても、どこか充実感に欠ける…といった状況になることがあります。なぜでしょう…。
ズバリその答えが書いてあるビジネス書がありました。『一流の仕事術』(浜口直太著、明日香出版社)です。
この本には、「仕事とは自分のわがままとの戦いで、好きな仕事や自分のできる仕事ばかりを優先していると必ずトラブルが起きる。テキパキと仕事をしているつもりでも落とし穴があるから用心しなければならない」という趣旨のことが書かれています。
確かに、簡単な仕事であればあるほど、すぐに片付き、丸の数も増えていきます。一方で、どんどん処理して丸の数が増えていく達成感と同時に、思考力を要する重たい仕事が残っているという焦燥感も増していくのです。
難易度の高い仕事は残っているので、丸が増えても充実感は得られないままでした。
難易度の高い仕事も「細分化」すれば簡単な仕事に変わる
解決策自体は簡単です。まず優先順位の高い仕事を終わらせるのです。それから優先順位の低い仕事をやるようにします。
しかし、言うのは簡単ですがやるのは難しい。なぜなら優先順位の高い仕事は難易度が高かったり、面倒だったり、膨大な量だったりするため、やる気を奮い立たせるのが大変だからです。つい現実逃避をするように簡単な仕事を優先してしまい、優先順位の高い仕事を後回しにしていると、疲れてきた午後にやりはじめることになり、パフォーマンスも悪くなって、所要時間も多くなってしまいます。
そこで、こうした仕事に向き合う際に必要なのが「仕事の細分化」です。
例えば、「決算書の作成」は何日もかけて行う大変な仕事です。ノートに「決算書の作成」と書いても、丸はつけられずにその日が終わってしまいます。毎朝ノートに「決算書の作成」と書き続けることもストレスの要因になります。優先順位の高い仕事が終わらないという罪悪感は増していくばかりです。
結局、丸がつきやすい簡単なものから行い、提出期限が迫るまで取りかかりません。取り組んだ頃には期限が迫り、残業して行うことになってしまいます。
その罪悪感やストレスから解放されるために考えたのが、優先順位の高い仕事を細分化する方法です。
例えば、今まで「決算書の作成」と書いていたのを『1.売上の集計、2.現金のチェック、3.預金の残高確認、4.管理費の決算整理、5.立替金の処理……』など実行することについて細分化して記入します。
細分化のポイントは、項目をできるだけ細かく分けること。細かくできればできるだけ、1つ1つの仕事により取り組みやすくなります。
「仕事を細分化できるか」が大切
中には、細分化がなかなか難しい仕事もあるでしょう。例えば企画を立てる…など、なにをどう進めていこうか、迷うような仕事もあります。そういった仕事にはどう対応する必要があるのでしょうか?
こういった「どう進めていいのか迷う」仕事については、進め方を決めるところから業務として捉えて、実行することを細分化しリスト化するのが良いでしょう。例えば、見識のあるAさんに聞くとか、まずは仮説を作るためにカスタマー3人にヒアリングする…など何かとっかかりを見つけて動き出すことが重要です。もちろんやみくもに動くということではなく、進め方のイメージが作れるような動きを取ることが大切です。
その意味では、「仕事を細分化できるか」は、うまく仕事を進められるかと同義であると考えられます。高度な仕事においても、1つ1つの実行できるサイズまで仕事を因数分解することができるか。とっかかりを見出しにくい仕事でも、進め方のイメージが作れるような1歩が踏み出せるか。ぜひ仕事の細分化について考えてみるといいと思います。
【プロフィール】石川和男(いしかわ・かずお)建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。
最新刊の『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)ほか、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)など、勉強法、時間術などのビジネス書を6冊出版している。
石川和男 公式サイト https://ishikawa-kazuo.com
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