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Melbourne Art Book Fair Report by commune

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桜のつぼみがうっすらと赤みを帯びてきた3月中旬、オーストラリアはヴィクトリア州のヴィクトリア国立美術館 (National Gallery of Victoria; NGV)で開催されたメルボルンアートブックフェア(Melbourne Art Book Fair)2018に参加してきました。メルボルンアートブックフェアは今年で4年目の開催で、communeとしては3度目の参加。こなれた感もありつつも、国立美術館の厳かな雰囲気が背筋をピンとさせてくれます。

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以前、サンフランシスコアートブックフェアレポートの際もお伝えした通り、年々アートブックフェアの人気は高まるばかりで、メルボルンアートブックフェアの応募者数もかなりの数だったらしく、審査が非常に厳しくなっている様子。その分審査時間もかかるのか、今回は2017年10月頭には応募が開始されました。
ただ、南半球に位置するメルボルンまではるばる参加する海外組は少なく、今回も日本からの参加はcommuneだけ(!)だったので、もしかしたら優遇されたのかもしれません。各ブースには机とデザインされた壁面棚が設置され、参加費は320AUD(日本円で27,000円弱)。サンフランシスコよりはかなりお安く、とはいえ3年前と比べると参加費は1.3倍以上になっていました。

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開催期間は3月16日(金)~19日(日)までの3日間で、初日は10時~17時まで一般開放、その後休憩を挟んで、19時からオープニングレセプションが始まりました。昨年までは乾杯用のスパークリングワイン以外のドリンクは全て自費で購入する必要がありましたが、今年はなんと!ソフトドリンクからビールなどのアルコールまで飲み放題!フィンガーフードも食べ放題!の大判振る舞い。会場にいる人たちは皆全力でパーティーを楽しんでいるし、照明もムーディー(紫色のライティング)になっている為、もはやろくに見えないですし、zineやアートブックは一向に売れません(笑)。ここは気持ちを切り替えて、隣ブースの友人達(メルボルンのパブリッシャー Knowledge Editions)とビール片手にパーティーを楽しみました。それにしても、次から次へとフィンガーフードが配られ、グラスが空になると即ワインが注がれていった為、最終的に我々参加者はフラフラに。。日本ではなかなかこういう機会がないので、調子に乗って楽しんだ夜でした。(あとで聞いてみると、今回のオープニングレセプションは一般告知されておらず、参加者達とNGVのメンバーシップ会員しか参加できない特別なパーティーだったとのこと。どうりで豪華!)

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2日目と最終日も午前10時スタート。メルボルンに住んでいる人たちは、早寝早起きが基本だそうで(お子様がいる家庭はほぼ21時には就寝とのこと)、イベントのスタートも朝早いです。会場近くにはローヤル植物園(Royal Botanic Gardens Melbourne)が広がっているので、来場前に公園を散歩するのもおすすめです。

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ここのフェアの良い所は、土日になると美術館(NGV)のメンバーシップ会員の方が多く来場し、子供から高齢者まで老若男女で賑わいます。東京をはじめアジア圏のフェアは若い方が中心ですが、アメリカなどの海外のフェアはバックグラウンドや年代に関係なく様々な方にzineやアートブックを手にとってもらえますし、そこから自国や他国のアーティストの話や印刷手法の話だったり、来場者との情報交換もあり、とても刺激になります。

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参加者は全部で約100組。今回はNGVトリエンナーレ(NGV Triennial)も同時開催だった為か、昨年カフェエリアに展開されていたzineエリアがなくなり、アーティスト個人での参加が減り、アンダーグラウンド感が薄らいでいたように思います。一方で、今回のフェアではフェミニズムに関する雑誌を出版するパブリッシャーが目立ち、女性の参加者や来場者が増えているように感じました。ただ、友人曰く、フェミニズムの勢いが本当にすごく、逆に怯んでしまっている男性陣も多く、確かにいつも目にしていたスケボー片手にzineを漁りに(またはzineを売り込みに)やってくる男子達が減った気がしました。

フェア会場入り口前に、巨大な涅槃像(と天使達?)の彫刻がどどーんと設置されていた為か、今年は不思議な閉塞感と例年とはどこか異なる雰囲気を連日肌で感じたので、何人かの友人知人に「今年は何かが違う」と話しかけたところ、フェア直前まで会場のNGV(そしてオーストラリア全体)が色々と問題を抱えているようでした。

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オーストラリア政府が設置した太平洋の島国ナウルやマヌス島の難民収容所にて、管理しているWilson Securityの職員が難民や難民申請者(子供や女性を含む)に対して性的暴力や暴力を行っていたことが発覚し、収容所とWilson Securityの契約は2017年に終了しました。しかしながら、NGVはフェア開催直線の2月末までWilson Securityと契約を結んでいた為、多くのアーティストやインディペンデントパブリッシャーがNGVでの開催イベントをボイコットし、抗議活動をしたようです。
NGVトリエンナーレスタート時(2017年12月中旬)は未だ契約は解除されておらず、活動家が展示されていたピカソの作品「Weeping Woman」をWilson Securityのロゴをあしらった黒幕で覆ったり、リチャード・モス、キャンディス・ブレッツ、ラファエル・ロザノ・ヘマーら国際的なアーティストが意図的に作品の名前を改名、変更するなどして抗議をし、NGVトリエンナーレの関係者プレビューを混乱に陥れたとのことでした。

難しい話題の為、友人達の話だけでは全てを理解することができず、自分でニュース記事を調べてみると、また一つこれまで知ることのなかった世界の実情に直面し、胸が締め付けられました。海外のアートブックフェアに参加し、アーティストをはじめ現地の人々と交流することで、思いがけない事実を知ることが多々あります。

私自身、頻繁に海外のアーティストと仕事をしている為、彼らが生活する国の政治的状況や問題点、またその人のバックグラウンドについて話すことは日常茶飯事です。ただその度に自分の無知さ加減に落胆し、どうにか理解しようとリサーチすることで多くのことを学びます。

アートブックフェア自体に決して重たい雰囲気はありませんが、せっかく遠く離れた地に足を踏み入れるのであれば、その機会を利用し、その国のことを知ることもアートに触れることと同じく重要なことだと思うのです。

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Links:
https://www.theguardian.com/australia-news/2018/feb/28/national-gallery-of-victoria-dumps-wilson-security-over-offshore-detention

Links:
https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/19/australia-australia_n_12554446.html

commune
有名無名問わず国内外のアーティストを紹介してきた新代田の「gallery commune」を2015年6月で閉鎖し、現在は出版レーベル「commune Press」を運営。国内外で開催される展示のキュレーションなども手掛けている。2016年2月には、zineやアートブックに特化したセレクトショップをオープン。
http://www.ccommunee.com/

commune – commune Press
【SHOP 営業時間】 土 / 日 : 15:00 – 19:00 (不定休)
*時間が変更になる場合もございます。SNSでご確認下さい。
*zine、アートブック、作品などの持ち込み営業は受け付けておりません。

【SHOP/OFFICE】
〒156-0042 東京都世田谷区羽根木1-12-10-2F
e-mail : [email protected]

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