世界的に増加傾向のキャッシュレス決済 日本での普及に向けた課題は
イオンとVISAの連携でキャッシュレス決済の進行が期待される
流通大手のイオンは国内の総合スーパーやドラッグストアなどでVISAのタッチ決済端末を導入することを発表しました。2020年までに国内グループの約10万台のレジで専用端末にかざすだけで支払いできるようになります。店員にカードを渡さないため、カード情報が盗まれる危険も低くなります。
日本では物品の購入やサービスを利用する際に現金を使うことが主流であり、クレジットカードや電子マネーなどで支払うキャッシュレス決済の利用がなかなか広がりません。経済産業省の調査によると、日本ではキャッシュレス決済の比率が2割にも満たない一方で、欧米などの主要国のほとんどでは5割を超えており、中国では約6割、韓国では約9割という結果が発表されています。
日本でキャッシュレス決済がなかなか進まなかった理由とは
キャッシュレス決済は新しいものではなく、従来からクレジットカードによる決済方式は存在していました。それでもキャッシュレス決済を利用しない理由としてよく言われるのは、「あえて利用する機会や必要がないから」という意見です。この理由には、多額の現金を持ち歩いても街中で奪われるリスクが低いという日本の治安の良さが背景にあります。
また、日本の紙幣の印刷技術は高度で偽造しにくいため、現金に対する信認が高いことも影響しています。また、「現金以外で支払うことに不安」と考える方も多いようです。これは、匿名性の高い現金決済に比べ、キャッシュレス決済による購買履歴等の個人情報漏えいを懸念する意識があるようです。キャッシュレス決済だと実際の支払額が把握できず、「使いすぎてしまう」ことを気にするという意見も見られます。
「観光立国」の実現にはキャッシュレス決済のインフラ整備が必要
しかし、訪日外国人は増加する一方であり、東京オリンピックが開催される2020年には4000万人を超えるという試算もあります。中には、そのまま日本に居住しようと考える外国人もいるでしょう。
前述の通り、主要国におけるキャッシュレス決済の割合が5割以上ということは、訪日外国人の5割以上が日常キャッシュレス決済を行っていると考えられます。こうした外国人に対して、キャッシュレス決済を行える環境を整備することが、観光立国を目指す日本にとって急務であると考えます。
海外ではキャッシュレス決済を普及させるために様々な施策を行っており、中には少々強引な例もあります。例えば、インドでは高額紙幣を廃止しました。スウェーデンでは法的に店頭での現金取引を拒否できます。韓国ではキャッシュレス決済の一部を所得控除しています。このくらいの思い切った施策を行わないと、国内でのキャッシュレス決済の普及は難しいかもしれません。
キャッシュレス決済におけるセキュリティの懸念が課題か
キャッシュレス決済とは、言い換えればITを活用した決済です。ITが関わると、どうしてもセキュリティリスクを懸念してしまいます。日本におけるキャッシュレス決済の課題は、決済インフラの普及が十分でないことと同時に、既存の決済インフラの老朽化にあります。
クレジットカードのスキミングによる被害は従来の磁気カードからICカードに変更することで防止できますが、日本ではカード、端末共にIC化が遅れています。また、カード情報が漏れないよう店舗等でカード情報を電磁的に送受信しない仕組みへの対応も考えられています。しかし、こうした施策は店舗からすれば決済端末の入れ替えコストが発生する等の弊害があるため、何らかの支援を行って普及を促進する必要があると考えます。
(金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント)
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