ワーキングマザーが「キャリアを前進させる」ために必要なこととは?【女性活躍支援イベントレポート】
リクルートキャリアの女性活躍支援プロジェクトチーム「RCAジョカツ部」が開催する「キャリージョ・エンカレッジ・プログラム」。過日、第3回目となるイベント『私を前に進めるための、小さな一歩の踏み出し方』が開催されました。
本イベントは三部構成。第一部が株式会社ChangeWAVEの佐々木裕子さんによる基調講演。第二部が、リーディングカンパニー3社の女性社員によるパネルディスカッション。そして第三部が、佐々木さん、パネラーとして登壇した女性社員と参加者によるキャリア座談会。
先日、第一部の佐々木さんの講演内容をご紹介しましたが、今回は第二部・パネルディスカッションのもようをリポートします。
(登壇者紹介)
MSD株式会社 伊東朝香さん
アビームコンサルティング株式会社 髙橋美砂子さん
株式会社リクルートキャリア 梅田杏奈さん
今回の登壇企業3社はいずれも、女性の働きやすさ向上や活躍を支援する制度を整備しています。その中で、パネルディスカッションにご参加いただいた3名の女性は、いずれも仕事と子育てを両立しながらステップアップを実現したワーキングマザーです。
まずは、第一部の佐々木さん基調講演で話題に挙がった「己の情熱を知る」について。ご自身が情熱を燃やしているテーマは何か、そしてどのようにそれを見つけたのか、語っていただきました。
仕事で得たスキルがプライベートでも活かせていることに気づき、さらに仕事への情熱が増す
アビームコンサルティングの高橋さんは、メーカーに5年間勤務した後、「大学で学んだ会計の知識を活かしたい」と今の会社に転職。さまざまな業界のプロジェクトを担当した後、現在はマネージャーとして活躍しています。
「20代の時は、『会計領域に携わりたい。会計の知識を活かしてクライアントにベストな提案を行い、それを実現したい』という熱い思いを持ち、アビームに転職し仕事に打ち込んでいました。一方で趣味も多く、料理が好きだからレストランをやってみたいと思いレストランビジネスを勉強したり、野菜ソムリエの資格を取ったり、社会起業家に興味を持ってプロボノ活動をしてみたりと、プライベートでもいろいろなことに挑戦していました」
これらの社外活動を通じて、コンサルタントとして積み重ねてきたものがプライベートの領域でも活かせることに気づき、さらに仕事に情熱を注げるようになった…と言います。
「例えば、仕事で培ったコミュニケーション力を活かして、野菜ソムリエに関する地域コミュニティを立ち上げました。趣味など、好きなことを仕事にするという選択もあったかとは思いますが、コンサルタントの仕事が好きで自分に合っているからこそ、仕事以外の活動の場でも力が発揮できているのだと感じたので、この仕事に没頭できています」
家事・育児との両立においても、試行錯誤はあったものの、現在では仕事で得た能力を活かせているとのこと。
「長女の産休・育休から復帰した後は、どうすれば時間を生み出せるのか模索する日々が続きました。次女の産休・育休から復帰する際に、『同じことを繰り返すわけにはいかない。やるべきことを組み立てて効率的に時間を使おう』と考えました。行ったのは、家事の中で大事にしたいこと、後回しにしたいことの整理。料理は好きだし自分で作りたい。でも掃除はできるだけ手をかけたくない…などと組み立てていき、どのように進めるのが一番効率がいいかを追求。その結果、掃除はルンバに任せ、洗濯は夜、そして子どもと一緒に夜9時に就寝し、朝4時に起きて苦手な洗濯物を畳む作業を一気にやってしまうことに。すると、その後1時間ぐらい、自分の時間が取れるんです。このようにいろいろ試行錯誤しながら、今のスタイルを作り上げていきました」
ワーママも仕事に没頭できる環境。10年ぶりに「仕事へのワクワク」を感じられている
MSDの伊東さんは、コンサルティング会社に10年間務めた後、医療機器メーカーに転職して5年間マーケティングを担当。その後、現在の会社に転職し、カスタマーエンゲージメント領域を担当しています。「学生のときはバイオテクノロジーを専攻。その知識を活かして、コンサルタント時代は製薬業界を多く担当していました。でも、いつかはライフサイエンスの分野に携わりたいと思っていました。製薬会社である当社に転職してきたのは、学生時代から抱き続けてきた情熱を体現したかったから。今まさに、仕事をエンジョイしています」
前職では、仕事と子育てを両立する中で不満を飲みこむことが多かった…と伊東さん。
「もっと仕事がしたいのに、できない。『私がやります!』と手を挙げたいけれど、ぐっとこらえる。こんなことを繰り返してきましたが、今の会社はワーキングマザーの活躍を支援する制度が整っていて、人事の役員には面接時に『あなたにはこの会社でワーキングマザーのモデルになってほしい』と言われました。ここならば子育てを言い訳にせずにやりたいことに打ち込めるのではないか、やりたいことにリミッターをかけなくてもいいんじゃないかと思い、転職してきました。出産後、10年近く封印していた“仕事に対するワクワク”を再び感じることができています」
仕事を通じて情熱の矛先が徐々に変化、ありたい姿が明確に
リクルートキャリアの梅田さんは、企業の採用支援を手掛ける営業を3年間務めた後、営業リーダーも経験。その後、社内異動を通じ、現在は主に自社の中途採用を担当しています。現在2歳になる女児のママ。約1年前に職場復帰しました。
「入社のきっかけは、自分が関わることで多くの人を幸せにしたい、イキイキ働く人を世の中に増やしたいと思ったから。そこに情熱を感じながら働いているのは、以前も今も変わりはありません」
ただ、営業時代に、「転職希望者の人生が転職を通じて変わる。そしてその人の入社を通じて会社が変わる」を目の当たりにしたからこそ、入社後の過程を見ていきたいと感じるようになったのだとか。
「入社後、どんな壁を乗り越えて個人が能力を発揮するのか、そして企業がどのように変化し、成長していくのかまで見届けたい。そして、その過程において価値貢献したいと思うようになったのです。その後、人事への異動となりましたが、この一連の流れを通じ、自分の想いやありたい姿がより明確になりました」
リミッターが外れたきっかけは「転職」「職場復帰」「上司のアドバイス」
自身を取り巻くさまざまな制約を振りほどき、「リミッターが外れた!」と感じた瞬間についても教えていただきました。
MSDの伊東さんは、前の会社では「周りも自分も『子どもがいるから無理だよね』という暗黙の了解があり、力を最大化できずにもがき苦しんでいた」とのこと。リミッターが外れたのは、今の会社への転職がきっかけだと話します。
「当社はダイバーシティ推進に積極的で、子育てや介護などの制限に関わらず、社員一人ひとりが持つ力とその個性を最大限に発揮できる環境を作ることを目指しています。制限があることを引け目に感じなくていいんだと、心が軽くなりました」
子育て中の女性が役員として活躍していることも、モチベーションアップにつながっていると言います。
「彼女が昇進を打診されたとき、『実は…』と妊娠していることを打ち明けたところ、社長から『素晴らしい、おめでとう』と言われたそうです。その後、彼女は出産後も役員として復帰、在宅勤務などを利用しながら重責を果たしています。実は私自身、昇進に対する思いも封印していたのですが、このエピソードを聞いて昇進も望んでいいのだと嬉しく思いました。子育てを言い訳にせず、リミッターを外してやりたい仕事に没頭できる。そしてキャリアも追うことができる。こういう環境こそ、私が求めていたものでした」
アビームコンサルティングの髙橋さんは、時短制度を利用して夕方4時に退社していますが、「その事実をクライアントに伝えるかどうかがリミッターの一つだった」と振り返ります。
「長女を出産後、職場復帰したときは、クライアントには時短勤務のことは伝えず、4時以降のミーティングは上司か部下に変わってもらっていました。でも、子どもが2人になると限界があります。次女を出産して職場復帰した後は、クライアントにお伝えし、幸いにもご理解いただけました。正直、伝えるのは勇気が要りましたが、快く受け入れて下さったときは本当に嬉しく、仕事に対するモチベーションも上がりました。働き方改革やダイバーシティの推進など、時代の流れがリミッター解除を後押ししてくれたとも感じています」
リクルートキャリアの梅田さんは、入社3年目の時に「このまま楽しく仕事を続けるイメージはあるけれど、例えばその先でマネージャーになったとして何が得られるのだろう?」と疑問に思ったタイミングがあったと言います。
「そんなとき、上司から『なぜやらないうちから得られるものがないと決めつけてしまうの?』と言われ、はっとさせられました。自分の目先の価値観だけで考えていることに気づき、固定観念のリミッターが外れ、『もう少し営業を突き詰めたい』と思うように。そして翌年、営業リーダーを任されたのですが、メンバーがどんどん成長していくさまを目の当たりにして、『人や組織のあり方の中で、自分が想像できていたものは本当に一部なんだ』と気づき、重ねて価値観が大きく変わる体験をしました」
キャリアを前進させるには、個人の努力だけでなく「会社の環境、制度」が大事
女性リーダーとしても活躍している皆さんに、「キャリアを前進させるために大事なこと」を伺ったところ、3者とも「会社の環境、制度が大事」と口を揃えました。
リクルートキャリアでは「Will・Can・Must シート」をもとに、上司と今後のキャリアを考える制度があるとのこと。
「Willのために、Mustの業務を通じて磨くべきCanを設定するサイクルが半期ごとに用意されています。私は、人を巻き込んで物事を進めることは得意ですが、構造的に物事を捉えたり、全体を俯瞰で見て数字で分析したりすることは苦手。でも、人事として人の成長を促し、組織や事業を成長させたいという“ありたい姿=Will”を考えれば、弱みも伸ばしていかなければなりません。強み、弱みを整理すれば、自分に足りないものを強く認識でき、頑張ろうというモチベーションが生まれます。このような制度がない場合も、自分で強み、弱みを書き出してみて、自己認識するという方法はお勧めです」(梅田さん)
アビームコンサルティングでは、中長期的なキャリア支援を目的に、社員一人ひとりにカンセラーがつき、半期に一度の振り返りを行っているとのこと。
「コンサルタントは、所属するプロジェクトによって上司が変わるため、キャリアの相談はより中長期的なキャリア形成サポートの役目を担う『カウンセラー』に行います。半期に一度、カウンセラーと会話する中で今の立ち位置、自身の強み、弱みを整理でき、キャリアパスに関するアドバイスももらえます。節目ごとに自分自身を見直すことは、今後のキャリアを考えるうえで重要なこと。カウンセラー相手に壁打ちすることで、1年後、3年後のキャリアイメージも具体化できます」(髙橋さん)
やりたいと思ったことを自由に言える風土も、キャリア前進のいいきっかけになっていると髙橋さんは言います。「もしこのような制度があるなら、積極的に活用して仕事を楽しむのも一つの方法だと思います」
MSDに入社するまでに、ワーキングマザーとして3社を経験した伊東さんは、環境や制度の大切さを身に染みて感じているのだそう。
「自分で環境を変える努力をすることも大事だけれど、ものすごい労力がかかる。今の整った環境に身を置くと、あの努力は本当に必要だったのか?と思ってしまいます。もし今の職場に、キャリアを伸ばせる環境がない場合、アンテナを張って新しい出会いを探すことも重要です」
さらに伊東さんは、「仕事とキャリア、子育てを両立するためには、頑張りすぎないことも大切」とアドバイスします。
「女性が子育てをしつつキャリアを発展させるためには、『頑張りすぎない』『仕事を楽しむ』が大切なキーワードだと思います。仕事も子育ても頑張らねばと真面目に取り組みすぎて、倒れてしまった女性を何人も見てきました。真面目に頑張るのはいいことですが、子育ては長期戦なだけに、頑張りすぎるといつか限界が来る。肩の力を抜いて、意識して仕事を楽しむよう心がければ、多少しんどい場面でも苦労とまでは感じず、心や身体への負担も少なく済みますよ」
仕事と子育ての両立の難しさ、キャリアを追うことの大変さを乗り越えながら前進してきた
イキイキ活躍している女性リーダーも、仕事と子育ての両立の難しさや、その中でキャリアを追うことの大変さに直面し、試行錯誤しながらステップアップしてきたことがわかりました。
参加者の中には、これから結婚、出産というライフステージを控えている方、小さな子どもを抱えてキャリアとの両立に悩んでいる方も多かったようです。このイベントで、キャリアを一歩前進させるヒントが得られたという方も多いのではないでしょうか? 女性がイキイキ働き、活躍するためのこのイベントは、今後も不定期開催予定。イベント情報等はこちらをご覧ください。
リクルートキャリア「ジョカツ部」 https://www.facebook.com/rcajokatsu/
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康
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