受動喫煙対策強化の流れ。改正案が自民党の部会で了承
東京オリンピックに向けて強まる喫煙の法規制
東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙対策を強化した健康増進法の改正案が、自民党の厚生労働部会で了承されたそうです。3月に閣議決定のうえで国会提出する予定だとか、国際オリンピック委員会は、「タバコのないオリンピック」を進めており、北京オリンピック以降の開催国は、罰則付きの法規制を行っているのだとか。
そこで、わが日本も同じように罰則付きの法規制に向けて動き出したということになります。改正案のニュースの中心は、飲食店への例外の規模のようで、今回の案では、客室面積100㎡以下の店舗については喫煙可とされています。小規模の店舗での費用負担に配慮したこの措置は、厚生労働省の案では、30㎡以下とされていたので、嫌煙家からは骨抜きになったと批判が多いようです。
スナックでウィスキーを片手に、タバコをくゆらすのではなく、チュパチャプスをなめるのが絵になるのは、「刑事コジャック」(テリー・サバラス)くらいですが、そのスナックが、10m×10mだと、ちょっと寒々しいかもしれません。
喫煙率は減少傾向にあるが、世界から見ると日本はまだ喫煙大国
タバコの煙には、ニコチンやタールをはじめ4000種類の化学物質、200種類の有害物質、60種類以上の発がん物質が含まれていて、がんや心筋梗塞など多くの病気の原因とされていて、寿命が10年短くなるという調査結果もあるようです。私などは、つくづくタバコをやめてよかったと思いますが、問題はさらに続きます。
タバコの喫い口には、フィルターがついていて、副流煙(タバコから直接出る煙)には、主流煙(喫煙者が吸いこむ煙)より、ニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素が4.7倍含まれている(ファイザー製薬:タバコの害について学ぶhttp://sugu-kinen.jp/harm/)となると、「自分自身の害は抑えて、まわりはお構いなしなの?」と事は重大です。
政府のがん対策推進基本計画(第3期2017~2022)でも、受動喫が原因で年間1万5千人が死亡すると推計されていて、受動喫煙への取り組みは大きな課題となっているのです。
日本の喫煙率は、昭和40年の男82.3%、女15.7%から平成28年には、男28.2%、女9.0%とほぼ一貫して減り続けていますが、欧米並みの水準になってきたのは、ここ10年余りで、世界の評価的には、我が国は喫煙大国だとか。
非喫煙者のほうが健康的な生活を送れていない!?
ところが、平均寿命の同じ昭和40年からの国際比較のグラフを見ると、喫煙大国日本人の平均寿命は、この間、ずーっと1位をキープしていて、あろうことか喫煙率70%台を維持していた男性の方が女性より5年も早く世界一の座を獲得しているのです。(図‐2)
一見矛盾する両方のデータが正しいとすれば、「喫煙者は、非喫煙者よりも病気にかかる確率が高いが、病気の状態でもなおしぶとく生き残っている。一方の、非喫煙者の方は、副流煙で喫煙者より3倍以上の有害物質に、喫煙者より10年以上の長期にわたりさらされて終末を迎える。」という構造が浮かび上がってきます。
タバコ税とタバコに関する医療費については、一概に税額のほうが高いとは言えない
日本人の平均寿命の長さは、一つの貢献要因だけでは説明できないでしょうが、予防と治療の両面で我が国の医療技術が貢献していることに異を唱える方はいないと思います。
タバコに関係する医療費について、厚生労働者は、受動喫煙を含めた医療費(平成26年度)は、14,900億円で国民医療費の3.7%を占めたと発表しています。(産経ニュース社記事参照)
これに対して、平成26年度のタバコ税は、21,700億円です。これだけをみると喫煙者が「我が意を得たり」となるんですが、医療費だけでなく、喫煙によって社会が負担する喫煙室の設置などのコストがありますので、タバコ産業の貢献分を差し引いても社会的コストはタバコの経済的メリットの2倍に上るというデータもあります。
タバコを巡るこんな議論は、愛煙家、嫌煙家両者の意見の交わりは見出されそうにありません。厚生労働省は、膨張し続ける医療費の抑制は喫緊どころか、絶対解決すべき課題ですので、オリンピックでもパラリンピックでも、誰も反対できない正論の力を借りて医療費抑制の道筋をつけたいところでしょう。
公共の場所や子どもの受動喫煙被害を守ることは重要
ところで、注目を集めた飲食店の方といえば、新聞報道によると半分以上が、規制の対象外となる見込みだとか。
結局、大山鳴動してねずみ一匹的な結論ですが、ともあれ、そもそも、飲食店の問題は受動喫煙対策の本質的な問題ではありませんし、公的な場所や子供達を守るという大きな目的は達成できる方向になったことは良いことと言えるでしょう。
そして、肩身の狭くなったタバコ喫いのおじさんたちを慰めてくれるスナックのママさんも残してくれたということも良いことなのかもしれません。
折り合いをつけて生きることはできるのか
こうなると、タバコの社会的コストとメリットについての交わることのない議論はあるにしても、アンパンマンにはバイキンマンが必要なように、世の中には、ワルの存在も欠かせないと、折り合いをつけて行くことが大人の対応といえるのではないでしょうか。
たまには、タバコ部屋の会話に耳をかたむけることも良いかもしれません。タバコの起源は、コロンブスに送られた友好の贈り物なのですから。
(岡部 眞明/経営コンサルタント)
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