イクメンの理想と現実~そのギャップを埋めるためには~
社会に定着しつつある「イクメン」のイメージとは?
わが国では、「男は仕事、女は家庭」という性別分業意識が強く、男女雇用機会均等法施行から30年以上がたった今でも、それは根強く残っています。しかし、近年では子育てに積極的に参加し、仕事も頑張る「イクメン」という言葉も誕生し、その存在はすっかり定着しているように感じます。
私も含め、世間一般のイメージとしての「イクメン」は、「育児休業を取ったり、保育園や幼稚園の送り迎えその他子育て全般に積極的で、仕事もバリバリこなす素敵なお父さん」といった好意的なものが多いのではないでしょうか。(「母親が育児をしても『イクウーメン』などと言われないのに、父親だけを特別視するのはおかしい」という議論は、ここでは置いておきます。)
イクメン当事者の感じる違和感や複雑な思い
しかし、当の「イクメン」たちは、「親として当たり前のことをしているのに、イクメンと賞賛されるのには違和感がある」「労働時間の長短で評価が決まる現状で、定時退社はマイナスになる」など、複雑な思いを抱いているようです。
なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか。それは、男性の育児参加は当然だ、という意識は高まっているのに、育児と仕事を両立させるための職場環境が整っていないところに原因があると考えられます。
そもそも、定時退社が後ろめたいのは「残業して当たり前」「残業するのができる社員」といった考え方が未だ根強いことに加え、残業しなくては終わらない量の仕事がある(または残業を前提としたやり方で仕事をしている)、ということでしょう。
これらは、一個人が努力してどうにかなるというものではありません。職場全体が、育児中の社員の働き方に理解を示すとともに、無駄な仕事はないか、非効率な進め方をしていないかなど、働き方そのものを見直していく必要があります。
「イクボス」に期待される役割・働き方
とはいえ、イクメン自らがそれを提案するには、かなりの勇気が要るでしょう。そこで期待されるのが「イクボス」です。
「イクボス」とは、育児と仕事の両立に理解を示し、部下を応援する経営者や管理職のこと。一定の権限および決定権を持った彼らが中心となって働き方を見直すことで、初めて「イクメン」が働きやすい環境を整えることができるのです。
NPO法人Fathering Japan では、イクボスとしての基礎知識や心構えを問う「イクボス検定」の実施や、積極的にワークライフバランスを推進している企業が加盟できる「イクボス同盟企業」「イクボス同盟中小企業」を公表するなどして、育児と仕事を両立しやすい職場環境づくりに取り組んでいます。
また、厚生労働省も「日本総イクボス宣言プロジェクト」を立ち上げ、日本全国のイクボスからの動画を募集・発表する企画「ひろがれイクボスの輪」などで、イクメンに優しい企業を応援しています。
まだ十分に浸透しているとはいえないこれらの活動ですが、少しずつでもこうした取り組みを行う企業が増えてくれば、イクメンが感じている理想と現実とのギャップも解消するのではないでしょうか。
(五井 淳子/社会保険労務士)
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