「寒くても不便でもくつろぐためには、スキルが要る。だから何度も行きたくなる」―うしろシティ・阿諏訪泰義、男の“キャンプ”を語る

「寒くても不便でもくつろぐためには、スキルが要る。だから何度も行きたくなる」―うしろシティ・阿諏訪泰義、男の“キャンプ”を語る

人気バラエティ番組で、プロ級の料理の腕前を披露している阿諏訪(あすわ)さん。でも、プライベートではほかにもさまざまな趣味を持っています。とりわけ熱くハマっていることのひとつが、“キャンプ”。しかも、主に一人で行くことが多いのだそう! 一人キャンプの醍醐味や、シーズンインしたばかりの冬キャンプについて聞きました。

人間界を離れるため、野ざらしのキャンプ場へ……!

――まず、阿諏訪さんはなんでキャンプにハマったんですか?

23歳くらいの夏、友達と公園でBBQをしていたんです。火を囲んで汗だくになりながらビールを飲んで「あ、外でお酒飲むのってこんなに楽しいんだ」ってなったのが、そもそものきっかけ。もっと長く外にいたいと思って、次はみんなでキャンプに出かけるようになりました。

で、9月になり、10月になり、夏が終わってみんながキャンプしなくなってからも、僕はまだしたい。「あ、みんな行かないんなら一人で行ってみるか」って、奥多摩に出かけました。いまでこそ「紅葉キャンプ」みたいなものもメジャーだけれど、当時はまだキャンプといえば夏の遊びだったから、10月の平日なんてがらっがらに空いてました。それがまた快適で!

――そこで、一人キャンプに味を占めたわけですね。

でも、一人でがらがらのキャンプ場にいると、次は街灯や自動販売機、きれいに整備された炊事場、トイレなどに違和感をおぼえてくるんです。「これは果たして自然のなかなのか? いや、設備が整っていないだけでまだ人間界のうちだな……」って。それでもっと何もないところに行きたいと思い始めたのが、27〜28歳くらいのころでした。

いまはキャンプが流行っているから、おしゃれなグランピングスペースとか、Wi-Fiや電源まである高規格のキャンプ場がいっぱいあるでしょ。でも僕が行きたいのは真逆で、低規格のキャンプ場なんです。整備も行き届いていない、野ざらしみたいなところが最高(笑)。公式サイトとかもないから、電話帳とかから発掘するわけですよ。

で、いそいそ出かけてピンポン鳴らして、「ちゃんとキレイにして帰るから、一泊だけしてもいいですか?」って頼んでね。仲良くなったら、次は東京からお土産持って行くわけです。

前はレンタカーで行ってたけど、せっかく休みなのに車が確保できないときもあったから、3年前に中古でジムニー(スズキの軽四輪駆動車)を買いました。ほぼ、キャンプに行くための買い物です。

 

一人で行くキャンプは“究極の引きこもり”

▲昔は値の張るアウターなどを着込んでいたが、たき火で穴があいてしまうため、最近はもっぱらUNIQLO。充分に暖かい。

――人間界を離れて一人でするキャンプ、醍醐味は何なんでしょうか。

一人で行くキャンプって“究極の引きこもり”なんですよ。家に一人でいても、街の音とかで人の動きを感じるじゃないですか。でも、山奥に行ってしまえば、周りは鳥の鳴き声や草が揺れる音だけ。人の気配がまったくないんです。普段いちばんストレスになりやすい対人関係が、山ではゼロになる。お酒を飲んでも、寝ても、何やってもいいし、1mmも気を遣わなくていいわけです。まぁ、遠くから「ガサガサ!」とかって得体の知れない音が聞こえてくることはあるけど、それもある意味楽しいし(笑)。

出発する前夜はまず、家のベッドで「明日は山奥で寝るのかぁ~」という最初のワクワクを感じます。現場に着いて、自然を感じながらまたワクワク。周りを見て「ここは寝るところ、ここでくつろいで、川の近くでごはん食べて……」とか考えながら、もう“秘密基地”を作るような感覚ですよね。そのあとも火が無事におこせたら、達成感。ごはんやお酒がおいしくて楽しい。星がキレイでうれしい。そんなふうにずっとテンションが上がってるから、キャンプが終わるとぐったり疲れます(笑)。

――でも、寒い時期のキャンプはつらそうです……。

いやいや! 冬の雪中キャンプなんて、寒さが逆に楽しいですよ。たき火が最高に気持ちいいし、雪のおかげでいつもよりさらに静かになって、ひとりぼっちを満喫できます。風は冷たいけれど、ハンモックにダウン、タープで完全防備すれば案外平気。ランタンの小さな灯りだけで、周りがぱっと明るくなって……空気が澄んでいるから、星もめちゃくちゃキレイです。

昔、マイナス14℃の湖畔で、友達とキャンプをしたことがあるんですよね。テントで寝てたけれど、寒くて何回も目が覚めて。2リットルのペットボトルが全部凍ってて、アイスボックスに入れてあった飲み物だけが唯一凍ってない、という異常事態でした。さすがに僕らも凍えて、もうこりごりだってなったけれど……数ヶ月後には、来年のリベンジを誓ってました(笑)。

キャンプで快適に過ごすためには、スキルが要るんですよね。不便な場所でくつろげたもん勝ち。だから、真冬の湖畔でも快適に過ごせなかった、自分たちのレベルの低さが悔しかったんです。そういうチャレンジ感は、もしかしたら山登りとかにも通じるものがあるのかもしれません。

▲もちろん、設営も全部一人でやらなければならない。「慣れてきたら簡単」と、さくさくハンモックを張る。

▲テントは地面の温度で体が冷えてしまうため、睡眠はハンモックで。「吹きさらしになるけど、それでもこっちのほうがあったかいんです」と阿諏訪さん。ハンモックを椅子代わりに、料理をしたりも。

 

好みのキャンプスタイルによって、場所やアイテムを選ぶ

――お話を伺っているうちに、どんどん興味がわいてきました。とくに、硬派な男の趣味にはぴったりな気がします! 初心者でもおすすめのキャンプ場などはありますか?

山梨県にある道志村(どうしむら)は“キャンプ場の原宿”と呼ばれています。山道沿いにたくさんのキャンプ場があって、高規格・低規格・林・森・川沿いなどとジャンルもさまざま。歩き回りながら、自分好みのフィールドを見つけるのがおすすめです。キャンパーもたくさんいるから、困ったときは周りに頼ることもできると思います。

それで、僕みたいに人間界を出たいとか、一人キャンプをしてみたいと思ったら、もっと山奥へ。自分にとってどんな場所が快適なのかは、やっぱり実際に数をこなさなきゃ見えてこないんですよね。アイテムもそうで、自分に合うものは、いろいろ試して見つけるしかありません。

▲真鍮製のランタンに、簡単な調理をするためのミニフライパン、小鍋、木皿。奥に見えるスパイスケースやポーチは、レザークラフトで自作したという。

――なるほど。アイテムは、たとえばどんな基準で選んでいくものなんでしょうか。

キャンプにも、いろんなスタイルがあるんです。ファミリーキャンプ、ツーリングキャンプ、グランピング、登山……一人で行くキャンプも「ソロキャンプ」と呼ばれています。

僕はソロキャンパーでもあるけれど、基本のスタイルは「ブッシュクラフトキャンプ」。なるべく現地の枝や石などを使って、くつろげる空間を工作するのを理想としています。だから、そこまでの重装備は要らない。どんなキャンプを楽しみたいかによって、必要なアイテムが変わってくるんですよね。

ところが困ったことに、「俺はこのスタイルで行く」と決めてどばっと道具を揃えたとしても、その気持ちが1年後には変わっちゃう(笑)。アイテムだって最初は軽量化を追求していたのに、「やっぱり多少重くてもこだわりの物を持って行こう」と思い始めたり「いや、何も持たずに不便を楽しむのがいいのかも」って考えたり……。何度も足を運ぶうちに、キャンプに対する価値観が少しずつ変わってくるわけです。

――まったく困ったことに、キャンプは奥が深いということですね。

そうなんです。でも僕は、だからこそキャンプが好きだと感じています。
もともと飽き性で凝り性だから、わかりやすいものはすぐに熱が冷めちゃう。だけどキャンプはしょっちゅう行けるわけでもないから、まずは「行きたい行きたい……やっと行けた!」っていうループを長く楽しめます。そして、回数を重ねるうちに嗜好が変わってきて、アイテムと内容が変わる。いつも、新しい楽しみ方を知ることができるんです。


阿諏訪泰義(うしろシティ)

1983年、神奈川県生まれ。2009年にコンビ結成。「ウチのガヤがすみません」(日本テレビ)、「あのニュースで得する人損する人」(日本テレビ)準レギュラー、「うしろシティ星のギガボディ」(TBSラジオ)などにレギュラー出演中。松竹芸能所属。

Twitter

撮影:池田博美

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 「寒くても不便でもくつろぐためには、スキルが要る。だから何度も行きたくなる」―うしろシティ・阿諏訪泰義、男の“キャンプ”を語る
Pacoma

Pacoma

「Pacoma」はホームセンター系のフリーペーパーに出自を持つ、「暮らしの冒険」がテーマのライフスタイル系Webマガジン。ノウハウ記事からタレントの取材記事まで「暮らしを楽しむためのアイデア」をテーマに日々発信しています。

ウェブサイト: http://pacoma.jp/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。