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「馬鹿げたアイディア」から世界へ フィル・ナイトがつづったナイキの創業物語

「馬鹿げたアイディア」から世界へ フィル・ナイトがつづったナイキの創業物語

スポーツ用品メーカーとして世界的シェアを誇る「ナイキ(Nike)」

その成長と躍進には、どのようなドラマがあったかを知る人は少ないだろう。

『SHOE DOG(シュードッグ)』(フィル・ナイト著、 大田黒奉之訳、東洋経済新報社刊)は、ナイキの創始者フィル・ナイトが自らの半生とナイキの軌跡を語った一冊だ。

本書は、読書家でも知られるビル・ゲイツが、2016年に感銘を受けた5冊のうちの1冊にも挙げているが、ようやく日本語訳も出版されて話題となっている。

ナイキの組織論や経営について触れた書籍は数多くある。だが、フィル・ナイト本人の言葉を借りれば、それらは「事実を伝えても魂はこもっていない。あるいは魂はこもっていても事実と違っていたりする」という。

著者が魂をこめて事実を書き綴った本書からは、ナイキ本来の姿を通して、経営者にとって大切なことは何か、会社とは何か、仕事とは何か、働くとはどういうことかを深く考えるヒントが得られるだろう。

■ナイキのビジネスを躍進させた一意専心の「情熱」

本書では、フィル・ナイトがまだナイキを創業する前から、株式上場までの物語が語られている。

ナイトは、大学在学中に中距離走に情熱を傾け、卒業後は軍勤務を経て、スタンフォード大学大学院に進学。MBAを取得している。

そんな彼には大学在学中に思いついた「馬鹿げたアイディア」があった。それは、日本のシューズメーカーである「オニツカ」(現在のアシックス)の靴をアメリカで売ることだ。

戦後間もない時期に身一つで日本を訪れたナイトは、その「馬鹿げたアイディア」を売り込み、オニツカとのビジネスをスタートさせることに成功する。

驚くべきその行動力の源泉は、自分の思い描いたビジョンを信じることにあったのだろう。

24歳のナイトは、追い求める価値がある楽しい夢を見つけ、「アスリートのように一心にそれを追い求める」ことを決意している。

また、ナイキ創業前に百科事典の訪問販売や証券会社で働いていたことがある。そうした仕事について、彼は「夢も希望もなかった」と語っているが、シューズの販売は「それらと違ったのは、セールスではなかったからだ。私は走ることを信じていた」のだという。

そんな彼の思いは「シュードッグ」というタイトルにも表れている。

シュードッグとは、靴の製造、販売、購入、デザインなどすべてに身を捧げて、靴以外のことは何も考えず話さない人間のことだ。

熱中の域を遥かに越えた情熱。それがフィル・ナイトとナイキを支えている原動力なのだ。

■ナイキを救った日本企業との胸を熱くさせるエピソード

ナイキのビジネスは、株式上場をするまで安定という言葉とはかけ離れていた。

売上げが順調に伸びていっても現金保有率は常に低く、まさに自転車操業。製品や納品、顧客管理もトラブル続きで、幾度となく瀬戸際のピンチに直面してきた。

だが、ナイキはその厳しい局面を何度も乗り越えてきた。その背景にあったのは関わる人たちの強い絆だ。

その絆をもっとも強く感じさせるのは、ナイキのパートナーでもあった日本の大手総合商社「日商岩井」とのエピソードだ。

あるとき、ナイキは日商岩井への100万ドルの支払いを前にして、銀行から手を切られ、口座の資金凍結という事態に陥る。ナイキは日商岩井から財務状況についての監査を受けることになるが、当時、ナイキを担当していたトム・スメラギは、支払いに苦しむナイキを助けるためインボイス(請求書)の発行を意図的に遅らせていたことを告白する。

そんな行動に及んだ彼と、同じく監査に訪れていた上司との会話は胸を熱くさせる。

「ナイキは私にとって我が子のようなものです。我が子の成長を見るのはいつだって嬉しいものです」

「それでは君がインボイスを隠したのは……つまり……彼らのことが好きだからというわけか」

非常にバツが悪そうにスメラギは頭を下げた。「はい」と言った。「はい」と。(384ページより)

どんな人と縁を持てるかは、運に左右されるところが大きいだろう。しかし、「縁」を「絆」にまで昇華させることができるかどうかは、自分や組織の在り方によるところが大きい。

ナイキは、自分たち以外の「誰か」によって救われることが幾度となくあった。だが、それを「運が良かっただけ」だと考えるのは間違いだ。

ナイキ、そして、フィル・ナイトには人を惹きつけ、一緒に走りたいと思わせるものがある。

本書は、500ページを超えるボリュームだが、まるで映画を見ているように読み進めることができる。そこには説教じみた教えはない。しかし、汲み取れる教訓は多いはずだ。経営者から新卒の社会人まで、必読の一冊だと言えるだろう。

(ライター:大村 佑介)

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