なぜ映画『オリエント急行殺人事件』は結末を知っていても楽しめるのか 監督兼ポアロ役のケネス・ブラナーに聞く

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KennethBranagh

「ミステリーの女王」として知られるアガサ・クリスティーの名作が超豪華キャストで映画化。映画『オリエント急行殺人事件』が12月8日(金)より全国ロードショーを迎えた。

近年は『マイティ・ソー』や『シンデレラ』の監督、さらにはシェイクスピア劇の舞台演出などを手掛けてきたケネス・ブラナーが監督を務め、時代を超えて愛される名探偵エルキュール・ポアロ役も兼任。来日中にインタビューに応じてくれた彼の言葉からは、人気原作を実写化するうえでの極意を感じ取ることができた。

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――もともとミステリーファンだそうですが、アガサ・クリスティー作品の中でも『オリエント急行殺人事件』の魅力は何だと思われますか?

ケネス・ブラナー(以下、ブラナー):もとの小説は驚くほどエモーショナルな作品です。殺人ミステリーというジャンルを超えて、復讐心を抱えた人間の複雑さを描いています。シェイクスピアは愛する人を失うことを「深い悲しみの毒」と表現しました。まさにその喪失感が描かれた作品だと思います。

――前作の『シンデレラ』も含め古典と呼ばれる作品は観客の多くが結末を知っています。特にミステリーとなれば事件の種明かしこそが肝だと思うのですが、どうやって観客の興味を引き付けようと考えましたか?

ブラナー:私はシェイクスピアなどクラシックの作品を多く手掛けてきました。もちろん、ほとんどの観客はストーリーを知っています。大切なのは“どのように演出するのか”という点です。今作においても創意を加えることが重要でした。殺人事件が起こって、ポアロは誰がどのように罪を犯したのか推理する。その後にサプライズを用意したんです。事件の真相が分かった後、「世の中には善と悪しかない」と語っていたポアロの選択こそが映画化の肝であり、観客が予期しない部分だと思います。

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――そんな世の中にある不完全な物事を決して良しとしないポアロですが、同様に映画監督という職業も完璧主義者でないと務まらないのでは?

ブラナー:そうですね。今まさに目の前のテーブルに置かれたレコーダー、コーヒーカップ、グラス……ごちゃごちゃした配置が気になって仕方ありません(笑)。ポアロにとっては悪夢です。今作においては、そんなポアロ的なマインドで制作に臨みました。ウィレム・デフォーに言われたのは、監督とポアロ役の兼任は同じ作業だという事です。ポアロは乗客に対して個別の取り調べを行い、事件を解決へと導きます。まさに監督が周囲の人物に指示を出すように。ポアロは相手に合わせて異なる取り調べのシチュエーションを整えます。ポアロだったらどう行動するかという思考は、そのまま演出家としての観点につながりました。

――その演出の面でひとつ聞きたいことが。日本版の予告映像でも公開されている、容疑者12人が長いテーブルに一列に並ぶシーンは『最後の晩餐』のモチーフですよね。すごく深い意味を持つシーンだと思いました。

ブラナー:レオナルド・ダ・ヴィンチのあの絵画は、“この中で裏切り者は誰なのか”というのがひとつのテーマです。しかし、今作ではそういうことではありません。私は2年前にミラノの教会で実際に絵画を鑑賞して、“審判の場”というイメージを強く持ちました。ポアロは多くの矛盾を抱えて最後の“審判の場”に臨みます。

――なるほど。そして、早くも続編の制作が決定しているそうですね。

ブラナー:この映画の最後に、次回作をほのめかすシーンが出てきますよ。ヒントは“ピラミッド”が関係します。そして次回作では列車ではなく、ボートに乗りますよ!

――楽しみにしています! 本日はありがとうございました!

KennethBranagh

映画『オリエント急行殺人事件』TVCM 悲しい真相編30秒(YouTube)
https://youtu.be/1jfg8PDkpTU

映画『オリエント急行殺人事件』公式サイト:
http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

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よしだたつき

よしだたつき

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

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