“天才的”な記憶力が発揮できる!「単語カード」の上手な使い方とは?

『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)『英語を「続ける」技術』(かんき出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第12回目の今回は、「単語カードを使った上手な記憶方法」についてです。f:id:k_kushida:20171201104407j:plain

前回、記憶の仕組みについてお伝えしました。詳しくは前回の記事(リンク)をお読みいただけたらと思いますが、「覚えよう」と努力するのではなく、「思い出す」作業を繰り返すことが大切なのでしたね。

今回は、記憶するためのツールとして私が一番オススメする「単語カード(フラッシュカード)」の効果的な使い方について解説します。

本やノートを読み返して覚えようとしていませんか?

あなたは、英単語を覚えようとするとき(もしくは、過去に覚えようとしたとき)に、何を使っていますか? 別に英語に限らなくても、歴史の授業などを思い返していただいてもよいかもしれません。

ここで、例えば「教科書を何度も読み返した」という人も少なくないでしょう。「まとめたノートを読み返す」とか、「単語集のような本を繰り返し読んだ」という人もいるのではないでしょうか。

でもそれだと、前回お伝えしたように、記憶効率が良くありません。「覚えるために、脳は努力を必要としない」のですから、ただ本を読むのではダメ――。「何度も思い出そうとする」必要があるのです。

また、英語はコミュニケーションのツールですから、ただ意味が分かるだけではなく、自分で使えることが大切です。そのことも踏まえ、私は2つのツールをうまく使い分けることをオススメしています。

2つのツールを使い分けよう

使い分けると良いツールの1つ目が「ノート」です。特に、英語学習専用のノートを1冊用意することがオススメです。

ここには、学んだことなどを書いていきます。ノート術に関しては様々なやり方がありますので、具体的な書き方に関してはここでは触れません。ただし、ノートの使い方としては、記憶を「インプット」するために使うのが良いでしょう。

例えば、覚えたい単語や表現について、その意味や使い方、用例などを書いたとします。このノートを見返すことで、いつでも情報を確認し、覚え直すことができますよね。

例:go up(上がる)↗

The oil prices went up three times.(石油の値段が3倍に上がった)

そして、何度も思い出すための「アウトプット」用として、もう1つのツール、単語カード(フラッシュカード)を使うのがオススメなのです。

表に日本語、裏に英語を書こう

では、単語カードの書き方について説明します。基本的にはカードの表には日本語、裏には英語を書くのが良いでしょう。

なぜなら、表に英語、裏に日本語を書いてしまうと、英語を見て日本語訳を思い出す練習に偏りやすいからです。それでは、英語の意味が分かるようにはなっても、自分でしゃべれるようには、なかなかなりません。

ですから、表を日本語にすることで、「日本語⇒英語」で言えるようにするのがオススメです。もちろん、後ろからめくれば「英語⇒日本語」という、意味を理解する練習にも使えますよね。

単語カードには余計なことは書かない

なお、単語カードにいろんな情報を詰め込もうと考える人もいるかもしれません。例えば発音記号、例文やその他解説など、書き込もうと思ったら(スペースが許せば)書けてしまいます。

しかし、私のオススメは、単語カードには余計な情報は一切書かないことです。その理由は、単語カードをアウトプット用のツールとして特化させるためです。もし情報をインプットしたいのであれば、ノートを読み返した方が効率的です。単語カードは、あくまでも「そこに書いてある日本語を元にして、裏に書かれている英語が言えるようにする」というアウトプットのトレーニングのために使うのです。

なお、単語カードという名前の通り、単語やイディオム(連語)を書くことが基本です。しかし、もっと英語力を高めるためには、もう少し長くしたフレーズ(例:「ハシゴをのぼる」⇒「go up the ladder」)や、例文(例:「石油の値段が3倍に上がった」⇒「The oil prices went up three times.」)を書くのもGoodです。英会話力を高めるための非常に良いトレーニングになりますよ。

黙って練習してはダメ!

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例えば単語カードの表には「上がる」、裏には「go up」と書いたとします。これを使って、英語を思い出す練習をするわけですが、ここで、英語を頭の中で思い出すだけで、黙って練習してしまう人が少なくありません。

大切なのは、単語やフレーズを頭の中で思い出すだけでなく、実際に口でも言うことです。英語は実際に口で言えることが重要ですから、口で言う経験を増やす必要があります。また、口を使い、発した音が自分の耳に入ることで、脳への刺激も増えるため、学習効果が高まるのです。

制限時間を設けよう

英単語の中には、パッと思い出せるものもあれば、しばらく「えーと……」と考えた末に出てくるものもあります。しかし、長くても2~3秒以内、できれば1秒以内に出てくるのが望ましいと言えます。

ですから、制限時間を設けましょう。最初は3秒くらいで始めてみてください。そして、3秒以内にもし思い出せなければ、それはもう「思い出せなかった」と考えて、答えを見てしまいましょう。「えーと……、なんだっけ……?」と悩むのは時間の無駄ですから。そして慣れてきたら、すべて1秒以内に思い出して言えることを目指しましょう。

単語カードは一度にまとめて作らない

さて、覚えたい単語が例えば100個あったとします。あなたは、どんなペースで単語カードを作りますか?

ここで、いきなり100枚まとめて書こうとしてしまう人は、挫折しやすいのでご注意ください。カードを100枚書く途中で嫌になってしまう人もいるでしょう。また、せっかく作ったのに使わない……というケースも少なくないからです。

ぜひ、無理なく続けられる形で作っていきましょう。私のオススメとしては、作る枚数を1日3~5枚程度、どんなに多くても10枚以内に抑えることです。例えば、1日5枚作るのであれば、大した負担にはならないでしょう。そして、初日は5枚、2日目は新しく5枚を加えた合計10枚……のように少しずつ増やしながら、思い出す練習をするのです。こうすれば、覚えなければいけない単語が一気に増えることもないですから、心理的な抵抗を感じずに、無理なく練習することができます。

放置しすぎるから忘れてしまう

もう1つ大切なことは、練習を行なう頻度です。例えば、10枚の単語カードがあったとします。それを使って、思い出す練習を1周やったとします。次は、いつやりますか?

まずは、1周だけで終わらせてはいけません。それだと、うまく思い出せないものがあった時に、答えを見て分かった気になったまま終わってしまうからです。「(同じ単語が)2回連続で正しく答えられる」ことを目安にすると良いでしょう。2回連続で答えられた単語は「クリア」だと考えて飛ばしていき、残った単語で3周目、4周目……と続け、すべての単語が2回連続で答えられるまで続けてください。

以上を練習の1セットだと考えてください。さて、次の練習をいつやりますか?

ここで、時間を空けすぎてしまう人が多いのです。覚えられない、という人は放置しすぎてしまっているだけなのです。翌日になってからやる……というのでは忘れてしまいますよ!

最初は、どんなに長くても1~2時間以内に繰り返すようにしてください。そこで2セット目をやった後、また1~2時間後に再挑戦してみましょう。なお、記憶力に自信のない方や、英語力が弱いという方は、1時間は既に長すぎかもしれません。まずは10~20分以内に再びやってみてください。短時間のうちに結構忘れてしまうことに気づけるでしょう。

ちなみに、自分がどれだけ放置したら忘れてしまうか(逆に言えば、どれだけやれば覚えられるか)を知っておくのはとても大切なことです。ですから最初は意識して、あまり時間を空けずに何度もやってみてください。バッチリ覚えられているようだったら、3~4時間や半日、1日と空けていけば良いだけです。まずは時間を空けすぎずに試してみてください。

カードのシャッフルを忘れない

最後に1つ、注意しておきたいことがあります。カードを時々シャッフルして、順番を並べかえるようにすることを忘れないようにしてください。

つい私たちは、「この単語の次はこれ……」という風に順番で覚えてしまいがちです。無意識のうちにそうなってしまわないように、時々シャッフルすることを忘れないでくださいね。

本質をつかみ、応用していきましょう

以上のノウハウを生かしていただくことで、英単語を覚えることは圧倒的に効率が良くなります。これは実際に試していただかないとその効果が分かりませんから、ぜひやってみてくださいね。

前回と今回でお伝えした記憶術は、英語に限らず、資格試験を受けたりするなど様々な学習にも応用が利きます。記憶の仕組みが理解できてしまえば、どんな場面でも素晴らしい記憶力を発揮できるようになります。英語学習を通じての学びを、ぜひそれ以外の場面でもご活用ください。

西澤ロイ(にしざわ・ろい)

イングリッシュ・ドクター

英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。

TOEIC満点(990点)、英検4級。

獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。

暗記の要らない英会話教材「Just In Case」、正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『英語を「続ける」技術』(かんき出版)他、著書多数。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度

UP」が好評を博している。

「頑張らない英単語記憶法」

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