佐藤秀峰の「自炊代行ドットコムに聞いてみた」

『第3回ネーム大賞』を絶賛開催中の電子書籍サイト『漫画onWeb』!! 漫画についてのあれこれをお届け致します!

今回は、漫画家・佐藤秀峰が自炊代行ドットコムさんにお邪魔した際のインタビューまとめ日記を公開です!! どうぞ~♪

* * * * *

少し前のお話になりますが、書籍のスキャン代行サービスを展開されている“自炊代行ドットコム”さんにお邪魔してきました。
現在、出版業界で話題沸騰、訴訟の真っ最中の自炊代行事業について「やっぱり、現場のお話を聞かなきゃね!」ということで行ってまいりました。

本日はそちらのインタビューをまとめましたのでご覧ください。
文章にまとめる時間がなかなか取れずに公開が遅くなってしまいましたが、当事者の立場から貴重なお話を伺うことができましたよ。

目から鱗(?)のインタビュー、さっそくどうぞ!
※自炊代行問題については何度か日記でも触れておりますので、ここでは割愛しますね。詳しくは過去の僕の日記をご覧ください。

自炊代行ドットコムさんインタビュー

グローブコム株式会社 中村 賢司さま
自炊代行ドットコム 大西 裕貴さま
聞き手 佐藤 秀峰

佐藤:本日はよろしくお願いします。まずは御社の行なっています自炊代行事業について、サービス開始までの経緯を教えていただけますか?

中村:こちらはサービス開始当時の事業者であった私から説明させていただきますね。
最初は、とある自炊代行サービスを行なっているサイトの運営者から「サイトを買いませんか?」というお話をいただきました。弊社(グローブコム株式会社)は元々ウェブ系のシステム会社なのですが、おもしろそうな話だったので、お会いして詳しく話を伺ったのが始まりです。

佐藤:具体的にはどのようなお話だったのですか?

中村:先方は既に自炊代行サービスを展開しており、そのためのサイトを持っていたのですが、諸事情で事業を取り止めることになったそうで、サイトだけが宙に浮いてしまっていたんですね。そこで、サイトの看板を付け替えて、自炊代行事業をやってみませんか、という提案をいただいたのです。結局、その話は上手くまとまりませんでしたが、自炊そのものには興味が湧いたので、会社の一角に裁断機とスキャナを設置して、自炊のための機械と場所の貸し出しを始めてみました。
会社はこの通り、駅前の便利な場所にありますし、お客様に本を持参していただいて、時間いくらで機械を貸し出し、お客様自身に自炊をしていただこうと。それが去年(2011年)の3月3日ですね。

佐藤:なるほど。最初は自炊代行サービスではなかったんですね。

中村:そうなります。

佐藤:お客さんの評判はいかがでしたか?

中村:良かったですよ。自炊を必要としている人がこれほど多くいるんだと思いました。同時に問い合わせも多く、中でも「他所のように代行はしてくれないのか?」という声は強かったですね。やっぱり、自炊といっても慣れていないと時間がかかりますし、裁断機というのは刃物ですので、気をつけないと怖いです。機械の使い方が分からなければ、その場で質問に答えていましたし、結局、お客様に付きっきりのような状態になってしまい、これは代行に切り替えた方がいいのではないかという結論にすぐに傾きました。採算が取れるかどうか分からないけど、とことんやってみようと思ったんです。

佐藤:それで代行に切り替えたということですか?

中村:いえ、3月11日に地震が起こって、すべてストップしてしまいました。どうしようかと思ったのですが、例えば、震災のとき、大量の本を持ち歩くことはできないでしょうし、それがディスク1枚だけ持っていればいいということになれば、自炊代行も人の役に立つサービスなのではないか、と考えました。実際、サービスを開始してからは東北のお客さんがすごく多かったですね。

佐藤:3月3日にサービスを開始して、わずか1週間程でストップしてしまったんですね。その1週間で評判になったというのもすごいですが、では、自炊代行サービスを開始したのはいつからですか?

中村:4月2日です。自炊代行サービスとしては後進になるので、いろいろなサービスを考えました。本は送料が高いので、ダンボールに詰め放題で何冊でも同じ値段でデータ化するパックサービスや、再スキャン保証、書籍の返却をしないというポリシーも作りましたね。裁断本が中古市場に流れると、1冊あれば何度でもデータ化できてしまうことになりかねないので、弊社では「スキャン後は廃棄します」というポリシーを掲げました。著作者側にも配慮した形です。本は複製するのではなく、電子データに置き換えるのだ、変換するのだ、という解釈で事業を展開しました。

佐藤:でも、「自分の本なんだから裁断後の本は返還してください」というお客さんはいませんでしたか?

中村:それは少なかったですね。と言うか、いなかったです。送り返すといっても送料はお客様の負担になりますし、実際、裁断本を転売したり、二次的な利用を想定しているお客様はほとんどいないじゃないでしょうか。

佐藤:ユーザーはどのような人が多いですか?

中村:まず大前提として、本を持っている人ですね。本を買う習慣が日常的にあって、大量に本を持っている人、そして、その置き場所に困っている人や、持ち運びたい人です。意外に思われるかもしれませんが……、そうでもないかな……? 作家や弁護士、医師、教師など、先生と呼ばれる人に顧客が多いです。

佐藤:確かに本をたくさん持っていそうな人たちですね。教養レベルの高い方のほうが本はいっぱい持っていそうな気がします。

中村:そうなんですよ。皆さん、本を必要としていたり、本の好きな人たちなんです。後は学生さんとか、専門性の高いお仕事をしていて分厚い技術書を持っている方や大学の研究室とか、大量に漫画を持っている方なども顧客に含まれます。皆さん、「データを誰かにあげるなんてとんでもない」と言いますね。

佐藤:なぜですか?

中村:自分がお金を払ってまでデータ化した大事な本を、誰かにあげたり、ネット上に流出させてもメリットがないそうです。我々もデータを流出させたり、流用しないという宣言を出し、代行の過程を写真で公開したり、クリアにやっていました。

佐藤:利用者も事業者もマナーを守れば、データが悪用される可能性は低そうですね。

中村:こちらも商売としてやってるので、データを流出させるわけがないんです。そんなことをしたら商売上がったりになってしまいますので。

佐藤:実際はどうなんでしょう? 利益は出ていらっしゃるんですか?

中村:それが全然利益にならないんです。食べていくのが精いっぱいというか、器材を置くための場所代や人件費を考えると、そんなにいい商売ではないですね。仕事を取るために広告費なども月に数十万円使っている時期がありましたし、お客様は喜んでくださるのですが、正直言って赤字でした。お客様はどんどん集まるのですが、こちらの能力に限界もあるので、新規の注文が怖かったですね。家内制手工業でやってますので。服は汚れるし、目は疲れるし……。注文を受ければ受けるほど赤字になっていくんです。代表者としてはやめたかったです。けど、せめてトントンくらいにはならないかと試行錯誤していました。

佐藤:そこまでして、続けた理由は何ですか?

中村:先ほども少し触れましたが、被災者で本だけ無事だったという方も結構いらっしゃるので、そういう方は残った本を持ち歩けないだろうということで、被災者向けに復興支援パックというサービスを始めたんです。実際にそういう利用者から感謝の言葉をもらうと、自分たちの活動にも意義を感じますし、もう少し頑張ってみようという感じでした。でもギリギリでしたね。そんな中、例の9月6日を迎えたんですよ。

佐藤:9月6日というと、出版社と作家の連名で自炊代行業者に一斉に質問状が送られた日ですね。

中村:「なぜだ?」という気持ちでしたよ。我々も利用者もデータを流出させた事実はなく、悪いことをしているとは思っていませんでしたから。

佐藤:でも、完全に悪者扱いでした。悪いことをしているつもりはないとおっしゃいましたが、法的に見てグレーゾーンに手を出しているという認識はありませんでしたか?

中村:まったく問題がないかと言えば、そうは思っていませんでした。自炊代行が私的複製権の範囲に含まれるかどうかについては、グレーだと認識していましたね。でも、いい意味でグレーだと思っていたんです。取り決めがないからグレーと言わざるを得ないけど、人の役に立つことだよね、ということでやってましたから、それが悪徳業者のように言われると心外でした。

※佐藤注 以下、質問書の全文です。

質問書 前略 別紙記載の差出人(以下「差出人」といいます)は、貴社が、受注による市販書籍のスキャン事業(以下、「スキャン事業」といいます)を行っていることを把握しております。

これに関し、貴社に以下のとおり質問します。

(質問1:)

スキャン事業を行っている多くの業者は、インターネッ ト上で公開されている注意事項において、「著作権者の許可を得た書籍のみ発注を受け付ける」「発注された書籍は著作権者の許可を得たものとみなす」などの 定めをおいています。

差出人作家は、自身の作品につき、貴社の事業及びその利用をいずれも許諾しておらず、権利者への正しい還元の仕組みができるまで は許諾を検討する予定もないことを、本書で通知します。

かかる通知にもかかわらず、貴社は今後、差出人作家の作品について、依頼があればスキャン事業を行うご予定でしょうか。

(1)貴社はスキャン事業の発注を受け付けるに際して、依頼者が実際に私的利用を目的としているか否かを、どのような方法で確認しておられるのでしょうか。

(2)貴社は、スキャン事業の、法人からの発注に応じていますか。ご多忙とは思いますが、以上の各質問に対し、2011年9月16日までに、本質問書に添付の回答 書により、下記の宛先までご回答下さい。

出版七社連絡会事務局

(別紙)差出人一覧 あいだ夏波 愛本みずほ  青木琴美 青山剛昌 赤川次郎 秋本治 浅田次郎 浅田弘幸 あさのあつこ 阿刀田高 荒木飛呂彦 安藤なつみ いくえみ綾 池野恋 池山田剛 石川雅之 石田衣良 石塚真一 石持浅海 伊集院静 一条ゆかり 五木寛之  内田康夫 浦沢直樹 江國香織 大暮維人 逢坂剛 大沢在昌 小川洋子 荻原浩 奥浩哉 奥泉光 甲斐谷忍 角田光代 桂正和 神尾葉子 上条明峰 川上弘美 かわぐちかいじ 岸本斉史 北方謙三 北川みゆき 北川タ夏 北見けんいち 樹林伸 京極夏彦 桐野夏生 くらもちふさこ 黒井千次 小池真理子 香月日輪 小山宙哉 さいとう・たかを 坂上弘 桜小路かのこ 里中満智子 猿渡哲也 椎名軽穂  重松清  篠田節子 白石一文  清野静流  宗田理 タアモ  高橋源一郎  ちばてつや 筒井康隆  津山ちなみ 冬目景 永井豪 西炯子 西村京太郎 楡周平 乃木坂太郎 馳星周 畑健二郎 葉月かなえ 林真理子 はやみねかおる 春田なな 東野圭吾 平岩弓枝 弘兼憲史 深見じゅん 福井晴敏 フクシマハルカ 藤子不二雄A 藤島康介 藤田宜永 武論尊 誉田哲也 槇村さとる 真島ヒロ 増田こうすけ 松本ひで吉 松本零士 三田紀房 道尾秀介 皆川亮二 水波風南 南勝久 宮城理子 宮城谷昌光 宮本輝 村山由佳 本宮ひろ志 森絵都 森川ジョージ 森田まさのり 森村誠一 森本梢子 やまさき十三 山原義人 山本一力 山本文緒 唯川恵 弓月光 夢枕獏 米沢りか 六花チヨ 若木民喜 渡辺淳一 角川書店 講談社 光文社 集英社 小学館 新潮社 文藝春秋
回答書 2011年9月5日付け質問書に対し、以下のとおり回答します。

質問1(該当する記号を○で囲んでく ださい。)
ア.当社は今後、差出人作家の作品について、依頼があればスキャン事業を行う予定です。
イ.当社は今後、差出人作家の作品につ いて、依頼があっても、スキャン事業を行うことはありません。

質問2(該当する記号を○で囲んでください。)

(1)当社はスキャン事 業の発注を受け付けるに際して、依頼者が実際に私的使用を目的としているか否かを、
ア.特に確認していません。
イ.依頼者に私的使用目的であると申告させています。
ウ.上記以外の方法で確認しています。(質問者注:下欄にご記入ください。)

(2)
ア.当社は、スキャン事業の、法人からの発注に応じています。
イ.当社は、スキャン事業の、法人からの発注に応じていません。

佐藤:僕の立場を説明すると、自炊代行サービスについては、良いサービスだと思っているんです。実際に書籍データが流出して、書籍の売り上げが下がっているという調査結果もないですし、大筋でお客さんはマナーの良い人たちで、今、聞いたお話だとそれで大もうけしているということでもないじゃないですか。個人の利用の範囲で収まっているのであれば、問題にするほどのことではないように感じます。

中村:そうですね。お客様のことで言えば、ここまで本を大事にしてくれて、何十年も持っていた本を捨てられずに、データ化してまで持っていようとする人たちなんです。その本を本当に大切にしている人たちだったりもするんです。なぜそのような読者を閉め出そうとするのかよく分からないですよね。我々もこのサービスは大変だけど誇りを持ってやってきました。そのことは伝えたいと思いました。質問状の届いた9月6日は日付が変わるまで社内で会議しましたね。そして、「熱烈歓迎 質問状」と題した公開回答を自炊代行ドットコムサイトに公開しました。

※佐藤注 以下、公開された回答全文

熱烈歓迎! 質問状

私たち自炊代行ドットコムは、作家様、漫画家様、出版社様の質問上を歓迎しますと共に、作家様、漫画家様、出版社様が、書籍の電子化を強力に推進して頂ければ、自炊代行サービスは不要となり、より品質の良い電子書籍 が『格安』でお客様のお手元に届くようになるでしょう。
今回の質問状を通して、電子書籍の波が巻き起こり、『良書にふれる機会』が益々拡大される事を願って止みません。

2011年9月6日の午前、書留にて送られて参りました<質問状>に対して、当社の回答をさせて頂きます。
お客様におかれましては、お手数でも必ずお読み頂き、ご確認の上でご依頼を頂けます様、よろしくお願い申し上げます。

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当社の見解について
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本日送られて参りました質問状を確認をさせて頂き、当社の見解を以下に明記させて頂きます。

●自炊代行をご了承頂けない作家様、漫画家様、出版社様の書籍は2011年9月6日以降、一切お受け致しません

当社では、今回を契機に、【作家様・漫画家様ご本人や出版社の代表者様名で正式にご連絡頂いた】場合、関連の書籍は、一切スキャンを行わない・お受けしない事を宣言させて頂きます。(質問状が届くまでは、お客様への通知作業が出来ない為、2011年9月6日以降とさせて頂きました。ご了承下さい)
今回の件は、当社としては、<非常に良い事>であると考えます。
当社では、作家様や出版社様が、自ら電子化を推進し、お客様が<自炊代行サービス>などをご利用頂かなくても気軽に電子書籍が楽しめるようになればと思っておりました。
今回、作家様や出版社様が明確に表明された事で、電子書籍が広がりを見せて、ipadやiphone、スマートフォンなどで、いつでもどこでも気軽に書籍を楽しむ事が出来れば、これ以上の喜びはございません。
今回、ご表明された122名の作家様・漫画家様及び出版社様は、電子書籍の新しい道を開いて頂く<責任者>として表明頂いたものと確信しております。

●自炊代行は違法行為を助長させる為のものではありません。

自炊代行サービスは、あくまでも<書籍を愛する>お客様のためのサービスです。
書籍をスキャンして電子化するサービスは、
『今まで以上に書籍に親しむ事が出来る』
『今まで以上に多くの書物が読める』
『思い出のある書籍を読み返す事ができる』
そういった需要がある中、
『自分でやるには難しすぎる』
『装置が高くて購入できない』
『装置の置き場・作業場が無い』
『身体的理由で装置が使えない』
等、さまざまな理由があって<自炊>作業ができない方の<代理>を行うものとして運営しております。
従って、著作者等の方々の権利を侵害する目的は全くございません。かといって、ボランティアで出来るほど簡単な作業で無い事も事実です。この点は誤解の無いよう、ご確認をお願い申し上げます。

●当社は原本廃棄を必須としております。

自炊代行サービスにおいて、原本の書籍が残っていては、再流通や二次利用になりかねないとの判断から、2011年6月20日より原本の完全廃棄を運営ポリシーとしてサービスを行っております。
現在の出版業界は、読み切った本などは、古本屋に並んでしまい<再販>の利潤を得られない現状です。
電子化しても、原本の書籍を廃棄しなければ、どこかで販売されて、それこそ<闇自炊>されてネット上に公開されてしまいかねないと思います。
自炊代行ドットコムでは、作家様、出版社様の再販の権利を守る為、スキャンした書籍の完全廃棄を受注条件とさせて頂き、他の自炊代行業者のように、スキャンした書籍の返却は行っておりません。
この点もご理解を頂戴したいと思います。

●是非、電子書籍の推進を!

当社は、電子書籍は、これからの活字文化を促進する為の重要事項であると考えております。
全学生にipadを配布し、すべての教科書を電子化して授業を行う大学が出てきて話題になりましたが、教育現場ではすでに電子化の波が非常に大きく押し寄せてきております。
しかし、残念ながら、一般書籍の電子化は、まだまだこれからの状態である事は否めない事実であるかと思います。
電子書籍は、何冊も何十冊もの書籍を気軽に持ち歩け、今まで以上に書籍に触れる機会が増えより多くの作者の書籍の購買が見込めます。
アメリカのアマゾン社の成功は皆様ご存知の通りで、電子書籍になると、紙の書籍より購買数が増えるといった結果もお聞きしております。
通勤・通学の電車やバスで、吊革につかまりながら、片手で簡単にページをめくれる電子書籍は、書籍離れの激しい現代の若者や子供たちにとっても<良書>に触れる機会を創出できる良いツールであると確信します。
もちろん、紙の書籍も電子書籍に無い、味わいのある形態であり、今後も無くなる事無く、<本の大好き>な皆様に愛されていく事と思います。
作家様、漫画家様、出版社様が、強力に電子書籍を推進し、<本の大好き>な皆様がより満足できるような次代の実現に向けて進んで行かれます事を切に祈っております。

●自炊代行拒否リストを作成します!

作家様、漫画家様、出版社様へ

自炊代行拒否リスト作成します!
今回ご表明された122名の作家様・漫画家様(合計122名)及び出版社(7社)を始めとして、自炊代行を拒否されることを表明された作家様、漫画家様、出版社様のリスト化を行って参ります。
また、当社のサービスをご利用いただくお客様に告知させて頂き、間違いの無い運営を行って参りたいと思います。
つきましては、当社宛に以下のような内容にて<正式なご連絡>を頂ければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

●正式なご連絡をお願い申し上げます

今回の質問状に列記された作家様・漫画家様及び出版社様のお名前等は頂戴しておりますが、署名や捺印等のご記載がございませんでした。
当社としても、今後ご依頼のお客様に対して<この作家様は正式に自炊代行を拒否されております>とご説明申し上げなければなりません。
お忙しい中で大変恐縮ですが、<ご本人及び会社代表者様からの正式なご連絡>をお願い申し上げます。
※中には、ご本人に成り済まして当社に連絡し、作家様等のイメージダウンを画策するなどのいやがらせなどがないとも限りませんので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
※ご本人からのご連絡がなくても、ホームページ上や公式ブログなどで正式表明されている等のご連絡を頂いた場合は、この限りではございません。
※自炊代行受託のご連絡もお受けしております。

●新しいご連絡もお受け致します

今回表明された作家様、漫画家様、出版社様以外でも、これから<自炊代行は拒否します>とご表明されたい場合は、ぜひご連絡をお願い申し上げます。
当社ホームページ上に掲載をさせて頂き、お客様がご確認頂く為のリスト化を進めて参ります。

■ 自炊代行サービス拒否リストのご登録について ■

自炊代行サービスを拒否される作家様・漫画家様、出版社様については、<作家様等への嫌がらせの為の偽物登録>や<成り済ましによる営業妨害>などを回避する為、当社宛にご連絡を頂戴したいと思います。(強制ではございません)
当サイトの連絡用メールアドレス<[email protected]>宛に、作家様・漫画家様及び会社代表者様の<本人確認>ができる書類を添付の上で、ご連絡を頂戴出来ますようお願い申し上げます。
※添付された書類は、当社で確認次第<完全廃棄>とさせていただきます。
※ご本人確認ができる書類が無い場合、お電話等にてご本人様等にご連絡をさせて頂く場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※今回ご表明頂いた作家様・漫画家様及び出版社様からのご連絡も是非お願い申し上げます。

●読者の声も聞いて下さい

読者を交えた意見交換を!

現在の自炊代行騒ぎは、代行業者と出版関係者だけの騒動のような気がしてなりません、何よりも大事な『読者』の存在を忘れてはいけないのでは無いでしょうか?
特に、お金を払って書籍を購入した以上、読者の権利と存在を無視した見解は如何なものでしょうか?
作家様、漫画家様、出版社様と『読者』の皆様が、正しく現状を認識して意見交換ができる場の設置を強く求めさせて頂きます。
その意見の結果、自炊代行サービスが読者や社会のお役に立たないものであるならば、私たちはすぐにでもこのサービスを中止・撤退する覚悟です。
私たちは、著作権を保有する方が、<自炊代行拒否>と言われるのであれば、それに従って、自炊代行を行う事はありません。
しかし、一方で書籍を購入された読者の権利もある事は事実ではないでしょうか?
作家様、漫画家様、出版社様が『読者』の意見を真摯にお聞き頂き、今後の書籍の電子化についての活発な討議が行われる事を祈っております。

●不正流出業者の取り締まりこそ大事では?

不正流出業者こそ摘発すべき

書籍の電子化は、機器と知識があれば誰もが簡単に行うことができます。
自炊代行サービスにご依頼頂くお客様は、ご自身のお名前も住所も明かしてご依頼いただきます。しかもお金をお支払い頂きますので、カード情報も提示して頂いております。(カード情報は当社には保管してありません)
そういった<自ら全ての情報をさらけ出して依頼する>方々が、違法行為を行うのでしょうか?
私たちは、自炊代行業者に依頼した方々は、<むしろ安全な方々>と考えております。本当に摘発しなければならないのは、不正流出を行っている人間ではないのでしょうか?
私たちは、自炊代行サービスにご依頼頂くお客様を信頼しております。
決して不正な流出などされていないと。『それを証明しろ!』と言われると『出来ません』とお応えするしかありませんが・・・。
自炊そのものは、時代の流れであり、止められるものではないかと思います。
ipadやiphone、スマートフォン、ソニー社のリーダーやシャープ社のガラパゴスといった電子書籍を読める端末はすでに国内で数千万台出荷されております。
その最有力コンテンツは電子書籍である事はゆうまでもありません。
『読者』が『読みたい書籍』を電子化して、端末に取り込んで持ち歩く時代は、今や当たり前になってきており、大学や高校が全生徒・学生にipadを配布するなどで、教科書の電子化を行っていたりすれば、今後はますます加速する事でしょう。
さらにいえば、安価なスキャナーが出回っている限り、書籍の自炊(スキャン)はさけられないのではないでしょうか?
私たち自炊代行ドットコムでは、『問題なのは不正流出の取り締まり』と『違法コピーされない技術』ではないかと考えます。

●わたしたちは皆様の敵ですか?

自炊代行業者は皆様の敵ですか?

国内で締め付けを強くすれば、海外に流れる・・・。
これはどの産業でも同じである事は皆様すでのご承知の事と思います。
国内の自炊代行業者を大事にして損はないのではないでしょうか?
今、日本国内の自炊代行業者は、超薄利ビジネスである自炊代行サービスを懸命になって運営しています。
暴利をむさぼっている業者は皆無かと思います。
むしろ当社のように、安くやりすぎて悲鳴を上げている所の方が多いのではないでしょうか?
もし、国内で適正な自炊代行業者がいなくなると、闇の業者が現れるのが、今までのパターンです。
また、海外の業者が、著作権等を全く無視した形式で自炊代行を行い、データの二次・三次利用をして荒稼ぎする事は火を見るより明らかです。
海外の自炊代行業者が悪いと言っているのではありません。
国内の自炊代行サービスが海外に流出してしまい、今まで以上に違法データが出回る事を恐れているのです。
私たち自炊代行業者が、<適正>に代行サービスを行う事は、最終的に作家様、漫画家様、出版社様の権利を守る事になるのでは無いでしょうか?
私たちも、違法コピー、違法流出には絶対反対です!
是非、良識ある皆様の冷静な判断をお願い申し上げます。

●ご一緒に考えませんか?

ご一緒に考えませんか?

皆で一緒に電子書籍の未来を考えて見ませんか?
私たちも、違法コピー、違法流出には絶対反対です。
でも、自炊代行を求めておられるお客様が大勢おられる事も確かです。
敵味方の関係では無く、どうしたら良い方向に向くのかをご一緒に考えては頂けませんか?
作家様、漫画家様、出版社様、読者・お客様、そして私たち自炊代行業者が一緒のテーブルにつき、書籍の電子化の仕組みを考えて行きませんか?
敵・味方の関係では無く、どうしたら次代の書籍の電子化の仕組みを作り上げる事が出来るのか?をご一緒に考えてみませんか?
課金制度なり、利益配分なり、さまざまな形式があるかと思いますし、違法コピー追跡も可能かも知れません。
私たち自炊代行業者の技術も捨てたものではありません。
是非ご活用頂きたいのです。
新しい書籍の電子化は、すでに業界全体で動いておられる事でしょう。
しかし、すでに購入されている書籍の電子化は、一体だれがやれば良いのでしょうか?
電子化した本を読みたければ、もう1冊買いなさい!が必須なのでしょうか?
ご一緒に考えませんか?

佐藤:あれは話題になりました。自炊代行問題について知らない人から見れば、質問状は「近頃問題になっている自炊代行業者に対して、作家たちがついに動いた」というくらいの受け取り方でしょうから、業者から反論が出るとは思ってもいなかったのではないでしょうか。

中村:そうですね。反響は大きかったです。我々としてはデータさえ流出しなければ良い経済循環を作れると思っていましたから、コソコソする必要はないと思い、宣言を出したつもりです。サイトに公開回答をアップすると同時にアクセスが集中し、あっという間にサーバがダウンしてしまいました。もうどうにもできなかったですね。

佐藤:それはすごい。どのような反響がありましたか。

中村:9割が応援です。サービスを続けてくれ、という意見がほとんどでした。我々に否定的な意見はほとんどありませんでした。公開回答の掲載と同時にアンケートも実施したんですよ。そんなに自分たちは責められるようなことをしているのか、という思いのありましたので。

佐藤:結果はどうでしたか。

中村:こちらはアンケートに答えてくださった方は約7割がサービスの継続に賛成でした。こちらにアンケート結果があるのでご覧ください。

●自炊代行ドットコム緊急アンケート
実施:2011年9月12日~14日(実質2日半)
※有効回答数:212(途中回答は除外)

Q)自炊代行サービスは必要だと思いますか?
・必要:156
・不要:56
Q)自炊代行サービスを利用したいと思いますか?
・利用したい:136
・利用したくない:76
Q)関係者(作家、出版社、読者、自炊代行業者)の対話が必要だと思いますか?
・必要:150
・不要:62

※自由回答は別紙(注:以下に記載)

・「どちらでもない」もなく、条件付きにも出来ない点で、恣意的な意図を含む微妙なアンケートだと思いました。私が考えるのは、「このまま出版社がまともに電子書籍化を行わないのであれば、自炊代行サービスは(ネットで無料配布を禁止する等の措置をした上で)必要」ただし、禁止措置が法的にも技術的にも不可能であれば、それはサービスとして「犯罪弊助」になりかねないので、行うべきではない。
出版業界がなくては成り立たないサービスなので、作者や出版社を殺す様なサービスをするのは自らの首を絞めていますよね。作者・出版社・読者にとって、
誰もがWINになる様な落としどころが必ずあるはずで、そういったサービスを展開できるようになってください。また「出版社がきっちり電子書籍化を行っていくのであれば、「自炊代行サービス」は不要です。なので私の票は「どちらでもない」にしておいてください。

・オフィシャルの電子書籍があれば不要だが、現状では必要。がんばれ!

・かつては漫画喫茶、ブックオフ等は作家や出版社の槍玉に挙げられていましたが、最近では自炊代行を攻撃するのが「トレンド」のようにです。この様に社会風潮に合わせて、攻撃出来るところから攻撃する、というあたりに、作家や出版社の卑しさを私は感じます。卑しいのでなければ、浅墓であるか、もしくは社会に対して無知の様にも思います。
一部のメディアアナリストが、自炊による電子データの流出を喧伝しているのでしょう。ですが言わせてもらえば、現在の情報コンプライアンス、SOHO管理の厳格化などを考えると、流出させる事自体が不可能なのです。誰が大事な電子データを人にくれてやるでしょうか。
筒井康隆なども名を連ねていました。彼の様な作家であっても、例えば「禁煙ファシズム」という本で「クビになってもみずから会議で煙草を吸ってやれ」などと言います。おおよそ、作家や出版社というのは、一般人の心理や行動というものを理解していないのだな、と改めて思いました。

・こうゆうことは出版社がやるべきだと思う。実物の本と交換に透かし・ロットNo.入りPDFを渡すとか、そうゆうことをやればいいのに、と考える。

・こうゆうことは漫画や雑誌文化の衰退につながるので、無い方がいいと思う。ただでさえ出版業界は不況と言われているのにマイナス方向には頑張って欲しくない。
本を買う(大量に)ユーザーほど(貢献している)自炊代行業者は必要。自炊で出来たスペースには新たな本が入る可能性があり、出版社側にもメリットはあると思われる。

どうしても本を持ち歩くと荷物がかさばり、なかなか読む機会がどんどんなくなります。紙の良さもあると思いますが、収納スペース、狭い我が家、勝手も捨てるか古本屋に持っていくか…。それをデータ化する事によって残す事の出来るサービスがあればもっと本を買います。置く場所がないのでこの頃は全然本を買いませんでした。でもこのサービスを知った時これは助かると思い、小説を買いました。そうゆう人たちも世の中にはたくさんいると思うんですが…。
とにかく、電子署名付きでも何でも、DRMなどによるデバイス縛り付けのない、必要なら検索も可能なPDFとして本が読めるなら何でも良いのです。出版社がそれをしないと言うのなら、自衛策として自炊する他ありませんし、数が多いなら媒体委託するしかないと思います。本が好きで、本を『資源ゴミ』として出す事に抵抗があり、だけど有限な空間の中ではそうするしかないという苦しみを和らげる一助としの自炊と、その代行は必須です。

・まず、自炊と違い自炊代行サービスの利用は利用者の責任で。まずは、ユーザーがしっかり管理出来ればいいんだけれども。またはPDF化した時に、IDか何かを埋め込んでおくなどはどうでしょうか?

・まだまだ手軽にとは言えない電子書籍サービス。刊行されていない名著や冊数の多いシリーズなどをデータで場所を気にせず読みたいというニーズに出版社は応えられていない。また、一度紙の本で買った本を電子書籍ストアでもう一度正規の値段で買うというのも甚だ疑問です。出版社、作家様方々にはk自分の様な読者へ納得いく回答を用意してから自炊代行業者へ意見をしてほしいと思います。自炊代行のニーズは決して少なくは無い。

・リーダーやベンダーに縛られるフォーマットの電子書籍では意味がない。ポータブルなフォーマットを望む。

・私自身は空いた時間に自分で本や雑誌をスキャンしていますが、とても面倒な作業でいちいちついて様子を見なければならず、割に合わない作業だと思っています。何かのきっかけで肩代わりしてくれる人が現れれば、なにがしか御礼を払ってしまうのではないかとも思います。それさえも面倒なのでやらないだけですが。そう思う人は多いと思うので、選択肢の一つとしてあって欲しいです。出版社の抗議を読むと、処理済み本(個人で作業しているとこれも頭の痛い問題です)の転売を懸念材料にしているようですが、きっちり対応する事を企業として確約できるのであれば、認めて欲しいと思っています。
以前ツイッターで言わせて頂きましたが、自炊したデータに関して「使用に支障のない範囲で」「必ず全ての画像に」半透明のマークを大きく入れるべきだと思います。作者・著者のOKが出たらそのマークを外してラインナップに加える、という感じ。現在の「NGと言われたらしない」というやり方では中々自炊の存在を知らない筆者の方も居るでしょうし、自炊業者が有利な気がします。「OKを貰ったら緩める」の方が相互地役を語る時に説得力があるのではないでしょうか?
違法コピーへの対策などがまず必要、最終的に出版社が潰れて面白い本が出なくなるのでは本末転倒。

・規制してもらって食いつなごうなんで乞食根性は捨ててもらいたい。
現時点では法的リスクが高い事業であるが皆さんはそこへあえて踏み込んでいるものと理解しています。おそらく権利者から訴える事も現実的には難しかろうと思います。ただ、このような「違法」性の高い事業を続けられることには私としてはあまり賛成ではありません。むしろ出版社側との話し合いをオープンに行い、絶版本のスキャンだ以降が認められる様著作権法を改正させるべく社会論を巻き起こして行くべきです。ただし、その際には補償金の支払いを覚悟する必要はあるでしょう。ぜひレコードレンタルのような闘い方を研究してください。

・個人的には紙の本はまだまだ手放しがたく、消滅する事はないと思っておりますが、その重さ、崇ゆえに取り扱いに困る事は事実…
しかし多少の道具を揃える/サービスをを利用する事で、手軽にデジタル化が進められる時代が来た事は喜ばしくかんじでいます。(実際、思い入れのない報告書の類いは少しずつデジタル化を進めております…ちなみにしがない一研究者です。)ただでさえ狭い日本の国土、そして一般家庭の住居スペース…いずれは御社のようなサービス(あるいは自炊という行為自体)が発展的解決かもしれませんが、それまでにノウハウを積み重ねられて新しいビジネスに進出される等ご発展をお祈りしています。

※一部を抜粋してご掲載させて頂きました。ご了承ください。

佐藤:なるほど、興味深い結果ですね。この後はどうなりましたか。やはりこの結果を受けて、「よしがんばろう!」という方向にスイッチが入ったのではないですか。

中村:いえ、それが疲れてしまい、サービスを停止することになったんですよ。

佐藤:え、サービス停止ですか。

中村:はい、公開回答の反響が大きすぎて、“自炊問題”=“出版社VS自炊代行ドットコム”のような雰囲気になってしまったところがありまして。テレビや新聞や各メディアからの取材が殺到しました。テレビはNHKを始め民放各社、新聞も3~4社から取材の依頼がありましたかね。他にも雑誌やネット系の企業や、お問い合わせの対応で仕事にならなくなってしまったんです。こちらは家内制手工業のような規模でやってますから、業界の代名詞のように扱われても、手が回らなくなってしまいました。疲れきってしまいましてね。これは一度リセットしようと社内で話し合い、サービスを停止することにしました。

佐藤:せっかく利用者の声援も受けられたというのに残念ですね。僕でしたら、騒ぎに乗じて事業を拡張しようという方向に動いたかもしれません。

中村:苦渋の決断ですが、そうするしかない状況になってしまいました。電話を取らないわけにもいきませんし、ほかの仕事もしないわけにもいきませんから。事務所にいられないというか、本当にすごかったんですよ。み○もん○さんの番組とか、○○とか○○とか……。新規の受注は9月中旬でストップして、実際に代行作業をしたのは10月12日頃までだったでしょうか。その後、10月25日にはパソコンに保存していたデータも消去し、一時、完全に事業から撤退しました。

佐藤:なるほど。でも、現在は再開されていますよね。こちらは予定どおりなんですか。

中村:クールダウンしてから再開したいとの思いはありました。でも、それ以上に電話やネットからのサービス再開を望むお問い合わせが多かったですね。予定どおりといえば予定どおりの再開ですが、お客様の後押しも大きかったです。
ある意味、あの質問状はふるいの役目をしたところがあって、あの質問状を境に完全撤退した業者はもしかしたら怪しい業者だったのかも知れませんね。我々は真面目にやってましたから、応援していただけました。
それと、質問状の一件を通して、業界のオピニオンリーダー的な立場になってしまった部分もあり、我々が掲げたルールが業界のスタンダードルールになり始めていたというのもあります。

佐藤:サービス再開はいつからですか。

中村:11月18日です。

佐藤:そこでオーナーチェンジをされたんですね。

中村:そうですね。仕切り直しということで。

大西:そこからは私がオーナーになりました。元々は中村の会社に勤めていたのですが、退職して新たに事業を引き継いだ形ですね。

佐藤:元々は同僚でいらっしゃったんですね。やっとつながりました。その後はいかがですか。サービスを再開されて、何か大きく変わった点などありましたら教えてください。

大西:大きくは変わりません。元通りというか、順調にお客様にご依頼をいただいて、忙しくさせていただいています。ありがたいです。お待たせしているお客様には申し訳ないです。

佐藤:それはすごいことですね。普通は一度休業するとお客様が離れてしまうもののような気がするのですが。

中村:やっぱりきちんとやることが大事なんでしょうね。今は、ライツガードといって、著作権保護サービスを導入しようとプログラムを作成中です。まずウォーターマークと呼ばれる薄いマークをスキャンデータに埋め込むんですね。書籍データを読んでいる分には認識できないくらいの薄いマークなのですが、ある方法でデータを顧客データベースに照らし合わせると、個人データが分かるようになっているんです。つまり、データを故意に流出させると、個人データも流出するような仕組みを作っています。これも、データ流出の歯止めになるのではないかな、と思っています。

佐藤:そこまで考えるものですか。

中村:こちらは後ろめたいことをしていませんから、お客様の同意を得たうえでそこまでできたら、著作権者の皆さんの理解も得られるのかな、と。
9月6日の質問状でも、ちょっとした裏話がありまして、あの質問状は我々業者に送られたものとマスコミ各社に送られたものでは実は中身が違うんです。我々に送付されたのはネット上で公開されているもの(※佐藤注 上記質問状)と同じです。ですが、メディアに送られたものには、「違法業者に質問状を送ったので、あなたたちからも業者に取材してほしい」との趣旨が書かれていたそうです。違法業者と断定されていじめられてきましたから。

佐藤:なるほど。実は今日のお話の冒頭から自炊代行サービスの社会的意義や、震災被災者の役にも立つというようなお話があって、ずいぶんそこを強調されるんだな、と感じていました。別に「もうけたいからがんばってるんだ」でもいいと思うんです。でも、今おっしゃられたように、利己的な違法業者だと思われたくないという思いがあるんですかね。

中村:逆に襟は正しておきたいですね。

佐藤:しかし、12月20日には、ついに作家が原告となり、自炊代行業者を訴えるという事態になってしまいました。

中村:あの訴訟は原告もよく分かっていないですよね。原告は記者会見で「裁断本が再流出してる、問題だ」と主張していますが、代理人弁護士の福井健策さんは別のインタビューで「裁断本が再流出すること自体は違法ではない」と発言しているんです。大きな矛盾だと思います。

佐藤:確かに、原告は「本を裁断したり自炊自体が許せない」という雰囲気で、再流出も容認しない姿勢ですが、訴訟自体は「自炊代行は違法である」という主張なはずで、自炊自体や再流出を問題にはしていないんですよね。訴訟の趣旨すらも理解できていないことを考えると、原告は自ら自炊代行事業に問題を感じて訴訟を起こしたとは考えにくいです。普通に考えると出版社が裏で動いてるでしょうね。福井さんも小学館の顧問弁護士ですし。

中村:事実、我々の元には応援のメッセージが多く届きました。大変なことになってるみたいだけど、応援しているよ、と。弊社が訴えられているわけじゃないので、大変ではなかったんですけど。経営者の方からの応援も多かったです。ご自分が事業をなされている方からは大きなご声援をいただきました。巨大企業にいじめられても負けるな、と。

佐藤:実際に訴訟の影響はありましたか。

大西:ないですね。むしろ、代行事業に注目が集まり、注文が増えました。弊社は訴訟の結果、自炊代行はダメだよ、という判断が出たら、それに従うつもりなんです。お客様にもそう伝えてあります。ただ現在、復興支援パックというサービスをやってまして、被災地からの注文は安く受けられるようにしているんです。先ほど、被災者向けのサービスを強調しているというお話がありましたけれども、実際に注文の3分の1は東北からのものなんですね。必要とされているから存在するサービスではあるんです。このまま国内で自炊代行が禁止になったら、海外から来るよ、と思っています。他のアジアの国々に取って替わられるだけじゃないかという気もします。むしろ、書店や出版社がこのサービスを展開してくれればいいと思います。

佐藤:そういう話は出版社としたことはあるんですか。

中村:何度も話し合いの場を持てないかと提案してきましたが、すべて断られています。先の質問状が来たときに我々が公開した回答についても、講談社の広報から「詭弁です」との意見があったみたいですね。ニュースにもなりました(※)。こちらは話し合う姿勢を持っているのですが、ことごとく断られてしまうんですよ。
本はどうしても置き場所がとられますからデータ化してその分本棚が空けば、新たな本を買うことができますし、出版社にもメリットがあると思うのですが。大学などの教育機関でもiPadに教科書を入れるところが出てきています。書店で流通しなくなった本でも電子なら目につきやすかったり、作家さんもチャンスが増える部分もあるはずです。私も自宅には数千冊の本を所有していますし、本は大好きです。最初は本を切るのに抵抗があったし、でも電子化を進めたい。
子どもがいるのですが、子どもは「本は本だもん」と言って、紙の本を読んでいます。それも否定しません。電子と紙でそれぞれに良さがあって、本を読む→買うのサイクルがうまく回ればいいと思っています。私たちは、自炊代行サービスは、本当に良い経済循環を生み出すと思っています。私たちの自炊代行のビジネスモデルのケースであれば、スキャンされた書籍は完全廃棄します。従って、裁断本の再流通はなくなります。また、データの使いまわしや裁断本の使いまわしも絶対に行いません。すでに購入された書籍の電子化は、古本屋に再流通されずにすみ、同じ書籍を購入したいと思えば、新しい本を購入するしかない為、作家、出版社、書店、読者そして、出版関連サービスの企業全てが新しい利益を享受できる仕組みになるのですから。
それでいて、読者の皆様は、所有者の権利を行使しつつ、大事な書籍を価値を下げずに保管できるし、捨てなくて良い。素晴らしい経済循環活動であると行きついたのです。

※「「原本廃棄するので複製ではない」 自炊代行業者回答に出版社側反論」2011年09月09日『JCASTニュース』
http://www.j-cast.com/2011/09/09106865.html?p=all

佐藤:本日はありがとうございました。

* * * * *

さて、インタビューは以上です。
“会ってお話を聞く”基本はこれですね。疑問に思ってたことがよく分かりましたよ。
親切でとっても感じの良い方たちでした。自炊代行ドットコムさん、本当にありがとうございました!!
さて、今回伺ったお話は1つのケースに過ぎないかもしれません。もしかしたら、悪い業者もいるんじゃないかというご意見もあるでしょう。実は先日、業界最大手の“BOOKSCAN”さんにもお邪魔してきましたので、そちらも近日中にレポートいたしますね。
法律の条文をいじくり回してるだけの出版社には分からない、現場の姿をお伝えしたいと思っています。

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書籍版、オンラインブック版とも当サイトでご購入いただけますので、ぜひご購入ご検討くださいませ。オンラインブック版は試し読みが90ページ程ありますので、まずこちらだけでもお読みいただければ……。

以上、転載元・佐藤秀峰日記
http://mangaonweb.com/creatorDiary.do?cn=1&p=1

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