上司や同僚が発達障害 どのように付き合うべきか?
問題になる「大人の発達障害」
近年、「発達障害」という言葉を耳にすることが増えました。この「発達障害」に対して、日本で「発達障害者支援法」が施行されたのが2005年のことであり、これは比較的新しい概念だと言えます。
それ故に、「発達障害」であっても子どもの頃に見逃され、適切なサポートを受けることが無いまま社会に出てしまい、本人も周囲の人達も戸惑い、トラブルになることもある「大人の発達障害」が問題になっています。
発達障害とは?
「発達障害」は、大きく以下の3つに分類されます。
「自閉症スペクトラム障害」(ASD)
以前は、アスペルガー症候群・高機能自閉症・カナー型自閉症など別々の診断であったものが、その症状の多様性と連続性から2013年より現在の名称に変更されました。主に対人コミュニケーションに問題があって、相手の気持ちを察したり、場の空気を読んだりすることができない・相手の言葉をそのまま受け取り冗談が通じない・こだわりが強く、決められた予定が変更されるとパニックになるなどの特徴があります。
「注意欠陥・多動性障害」(ADHD)
「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが大きな特徴です。具体的には、集中することが苦手・忘れ物が多い・自分の興味があることには異常に集中するが、切り替えができない・じっと座っていられない・公共の場でも静かにしていられない・場の状況に関係なく思いついたことを発言したり、急に行動したりする・急に怒り出すこともあるなど。その内「多動性」については年齢と共に軽減されることが多いようです。
学習障害(LD)
「読字障害」「書字障害」「算数障害」が特徴で、読む・書く・話す・聞く・計算し推論する力のうち、一つ又は複数の使用・習得に困難を持っている発達障害です。いわゆる知的発達の遅れは無いものとされています。
上司や同僚が発達障害だった場合に見られる光景
「大人の発達障害」が問題になるのは、主に仕事の場面になるでしょう。なぜなら、家族は子どもの頃から接しているので、この子は少し変わっているけどこういうタイプなのだと受け入れているケースが多いと思います。また友人も友人関係が続いているのであれば、その特徴を受け入れてくれているので問題は少ないはずです。
しかし、仕事となるとそうはいきません。
上司や同僚・部下の言葉や態度から思いを推し量り、時には駆け引きをしながら対処する、仕事の優先順位を決めて、突発的な仕事にはその都度対応する、退屈な会議も興味があるように振る舞うなどの対人スキルが必要になりますが、「大人の発達障害」の方は、これらが苦手というか困難です。
上司からの「上手くやっておいてくれ」などという抽象的な指示は理解できず仕事が遅れたり、時には「上手くとはどういうことか?」と上司に食って掛かったりします。また退屈な会議中は、周りに上司がいることも構わず、あくびをする・スマホをいじるなど平気で行うこともあります。これはふざけているわけではなく、そのような空気を読み取ることが困難なのです。
発達障害の個性や極端さ、得意・不得意を理解することが大切
このような特徴がある「発達障害」ですが、よく考えてみると先にあげた3つの分類にあるような特徴は、自分にも身の周りの人にも一つや二つ当てはまることがあるのではないでしょうか。
落ち着きが無くせっかちな人・忘れ物の多い人・必ず時間に遅れる人など、周りを見渡せば思い当たる人がたくさんいそうです。しかしだからと言って自分やその人が「発達障害」であるかといえばそうではありません。「発達障害」はそれらの特徴が突出して強く、それを改善することが困難な方たちなのです。そう考えれば、「発達障害」は極めて個性的で極端な性格の持ち主とも言えます。
「大人の発達障害」の方と関わっていくには、何よりもその方を理解することが大切です。何が苦手で何が得意なのか、どの表現であれば分かるのかを理解し、仕事を頼むときもこちらで優先順位を決めて、締め切り時間も何時までにと具体的に伝え、間に合わない時には報告をすることなど細かく指示を出す。できれば口頭でなくメモに書いて渡す。仕事に集中している時には声を掛けないなど。また得意なことに没頭できるポジションに配置することができれば、人並み以上のパフォーマンスを発揮するケースもあります。
ですが、自分の仕事を抱えながらこれを実践するのは大変な労力です。ましてや職場に複数の「大人の発達障害」の方がいたとしても、その特徴はそれぞれに異なります。しかし、「発達障害」は全体の6.3%に見られるという報告があり、40人ほどの職場なら2~3人の「大人の発達障害」の方と共に働く状況は普通のことなのです。
1人でできることは限界がありますが、職場全体でその方を理解し対応を考えて行くことで、その方の能力が発揮できれば双方にとって有益なことではないでしょうか。
(西尾 浩良/心理カウンセラー)
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