「仕事がつまらない」と言う人に欠けている“視点”とはーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

「仕事がつまらない」と言う人に欠けている“視点”とはーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第4回目です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「陰で日本を操れる!僕が日本を支配できる!」(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第1巻 キャリア4より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を排出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが・・・。

「日本支配計画」って何?

10年勤めた龍山高校を退職した井野は、転職エージェント会社に勤める海老沢のもとで、キャリアパートナーとして働き始めます。ところが出社してみると、海老沢の変人ぶりが明らかになります。

山積みの本に囲まれた海老沢の仕事とは、本人曰く「日本支配計画の実現」。唖然とする井野に対して、「日本のある部分のたった4%を抑えるだけで、それができる」と語る海老沢。4%という数字は、正社員が転職する割合のことでした。

「転職者数約130万人の中から、有能な人材を優先的に将来性のある事業に送り込めれば、産業構造を劇的に変えることができる」と力説する海老沢。「それをシステム化できれば、転職しない96%の人たちに対しても大きな影響を与えることができる」と言います。困惑する井野に対して、海老沢は一方的に「今日から君も日本支配計画の一員だ」と告げるのでした。

どのビジネスを選ぶかで、顧客はある程度決まってくる

物語の中で、海老沢は4%の数字が小さくない根拠として、ある世界的な自動車メーカーの従業員数と比べています。2006年のT社の社員数は、関連企業を含めて約28万人だったのに対して、正社員の転職者数130万人はその約5倍の規模です。4%と聞くと少ないように感じられるかもしれませんが、もともとの総数(分母)が大きいため、数%でもかなりの規模になる、ということです。

この話は、数もさることながら、「自社のビジネスモデルの対象顧客はある程度、決まっている」ということを言いたいのだと思います。このことを知らずにいると、「転職市場とは約6000万人いる会社員がサービス対象者だ」と勘違いしがちです。

たとえば書籍の対象顧客で考えた場合、同じ本屋でも、店の中はビジネス書、小説、参考書、料理本、マンガ、写真集等々、それぞれコーナーに分かれていて、客層も違います。私も著者ですが、本屋に入る人すべてが私の対象読者ではありません。これは当たり前のことのようでいて、意外に「自分の顧客は誰なのか?」ということをしっかり把握していると、出版も書棚から逆算していくという発想になっていきます。

適材適所を極めれば、日本が変わる

上記で海老沢が言っていた「日本支配計画」については、「いかにもマンガらしい展開だ」と思われた方も多いでしょう。ですが、そこまで現実離れした話ではありません。

もともと海老沢たちの仕事とは、人と企業のマッチングが主な業務です。適材適所という言葉が示すように、もし、有望な人と有望な会社を引き合わせることができれば、その会社の業績アップに貢献できます。

なぜなら、「80:20の法則」という有名な言葉もあるように、20%の人材が80%を動かしているというのが、企業活動の実態だからです。

転職市場にいる優秀な人材のマッチングを自社でコントロールすることができれば、やがては、日本全体を変える大きな原動力となりえます。これが、海老沢の言う「労働力の再配分システム」であり、「日本を支配する」の本当の意味なのです。

仕事にやりがいを持てるコツとは「自分のミッションを見つけること」

今回の話は、私たちが自分の仕事に対する姿勢を見直す際に、大きな示唆を与えてくれるものです。人は意識しないとつい、目先の業務だけに捉われやすくなります。こうした「木を見て森を見ず」という状態に陥ってしまうと、「自分の仕事がつまらない」「仕事をしても他人の役に立っている気がしない」と悩むことが多くなるのではないでしょうか。

たとえ同じ仕事であっても、それをただ単に「自分は転職希望者と求人募集をしている会社の橋渡し役に過ぎない」と捉えるのか、それとも「自分が転職希望者のさらなる活躍の場を見出すことで、日本企業の労働力を最適化している」と捉えるのかで、仕事に対する取り組み姿勢も大きく違ってきます。これは、自分の「使命(ミッション)」とも呼べるものです。

もし、これをお読みの方で、万一「自分の仕事に意義を感じられない」という方がいたら、ぜひ「20%だけをコントロールすることで、大きなインパクトを与えられることはないか?」と考えてみてください。

ここでの最大のコツは、自分の部門や会社だけの範疇で考えないこと。Think Bigですよ。海老沢のような大きなスケール感で妄想を思い描いてみましょう。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が12刷となっている。著作累計は35万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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