口ベタな人ほどうまくいく!?相手に伝わる「話し方」の技術
NHKのアナウンサーとして、『英語でしゃべらナイト』『NHKのど自慢』など人気番組の司会、そして『紅白歌合戦』の総合司会を務めた経験もある、松本和也さん。昨年NHKを退職し、現在はスピーチコンサルタント、ナレーターとして活躍されています。
松本さんは仕事柄、口ベタの人から「アナウンサーみたいにうまく話すにはどうしたらいいですか?」と相談されることが多いそうですが、そのたびに「うまく話すこと」がいいのか、違和感を覚えていたのだとか。
「うまく話す=朗々と響く美声で流暢に堂々と話す」ことは、度がすぎると「自分がどれだけかっこよく見えるか・聞こえるか」を追求することになりはしないか。つっかえながらでも、中身のある話を工夫しながら一生懸命伝える人のほうが、魅力的ではないかと。つまり、口ベタな人ほど、相手の心に届く話し方ができる素地がある…と松本さんはおっしゃいます。
そんな思いを広く伝えるべく、先ごろ「聞いている人にとっての心地よさを第一に考える話し方」をまとめた著書、『心に届く話し方65のルール』(ダイヤモンド社)を出版されました。今回はその中から一部を抜粋し、ご紹介します。
自分ではなく「聞いている人」を第一に考えた話し方をしよう
松本さんが考える「聞いている人にとって心地いい話し方」とは、次の3点とのこと。
●「聞いていて理解しやすい」こと
●「聞いていてストレスなく耳に入ってくる」こと
●「聞いている人が話している人との距離を近く感じる」こと
「自分が気持ちいい」話し方が、必ずしも「聞き手が気持ちいい」とは限りません。それに、「聞いている人が心地いい話し方」は「うまく聞こえる話し方」よりも、努力が比較的早く結果に結びつきやすいというメリットがあるから、だそうです。
確かに、「うまく聞こえる話し方」に必要な声の鍛錬や滑舌練習は、地道な練習が必要であり、上達しているかどうか実感しにくいために途中で挫折しがち。しかし「聞いている人が心地いい」話し方は、頭の中で工夫ができ、すぐに結果が出るものが多いのだとか。
本書では、「わかりやすい話し言葉の作り方のルール」や、「聞きやすい声の出し方、話し方のルール」、「相手との距離を縮める会話のルール」、「急なスピーチを乗り切るためのルール」などを具体的に紹介していますが、次項では、ビジネスシーンで役立つ「心を動かすプレゼンテーションのルール」の一部をご紹介します。
プレゼンテーションがうまくいく「PREP法」とは?
競合する他社に差をつけて案件を獲得したい、自社の商品・サービスの利点をお客様にアピールしたいなどといった場合、限られた時間で相手をきちんと納得させる表現=プレゼンテーションスキルが求められます。そして、このプレゼンテーションをうまく行うためには、「PREP法」と呼ばれる話し方が適しています。
「PREP」とは、話す内容の頭文字を表しており、この順番で話すと説得力のある説明ができると言われています。
●プレゼンテーションの説明の基本「PREP法」
(1) Point(結論)
最初にざっくり結論を言う
(2) Reason(根拠)
そのあと、しっかり根拠から説明をする
(3) Example(具体例)
さらに説得力を強めるため、そこまでの話を裏付ける具体例を言う
(4) Point(まとめの結論)
そして、最後に改めてまとめる
注目すべきは、(1)Point(結論)のあと、すぐ(2)Reason(根拠)を言うところ。普段の会話では、自分の言ったことに対してその都度根拠を付け加えたりはしないでしょうが、プレゼンテーションの場では、聞き手を説得すること、納得してもらうことが目的なので、理由・根拠をすぐに言うことで聞き手に疑問を残さないようにするのです。
本書では、「大学生の就職面接の自己PR例」を用いて、PREP法に則った話の組み立て方を説明しています。
(1) Point(結論)はざっくりと!
「私は日の当たらないところでも地道に人のために貢献できる人間です」
↓
(2) Reason(根拠)はしっかり!
「(そう言える理由は)大学の野球部で4年間、マネージャーとしてデータ収集だけでなく、合宿や試合の段取り、各方面との折衝、マネージャーグループのシフト作りまですべてを担当し、卒業までチームを支えてきたからです」
↓
(3) Example(具体例)でReason(根拠)の補足を!
「実は選手として入部しましたが、入部2週間目でけがをしてしまいました。辞めようかとも思いましたが、ある時先輩が『お前のおかげでこの前の試合に勝てた』と感謝の言葉をくれたのです。これをきっかけに、裏で支える仕事の喜び、楽しさに気づきました」
↓
(4) Point(まとめの結論)で説得力UP!
「今では裏方の仕事にやりがいを持って取り組めることが、自分の強みだと思えるようになりました」
上記の例でわかるように、PREP法は、聞き手がいらいらしないように結論を早めに言い、根拠を提示した後も聞き手に疑問を残さないように具体的な話をする…という、聞き手の気持ちにしっかりと寄り添った表現の順番になっています。
普段の会話の中でも、相手に何か説明するときにこの順番を意識すれば、相手の心に届く話し方のトレーニングになります。
松本さんお勧めのトレーニング方法は、P、R、E、Pに当たる日本語を、次のように文の始めに言うクセをつけるというもの。
P:「結論から言うと~」
R:「その理由(根拠)は~」
E:「具体的には~(もう少し詳しく言いますと~)」
P:「というわけで…~です」
話の最初にこういう言葉を言っておくと、その後に続く文章は自然と結論や理由、具体例などにならざるを得なくなります。プレゼンテーションに苦手意識を持っている人は、職場の同僚や友人などを相手にトレーニングしてみてはいかがでしょうか?
なお、ビジネスの現場でのプレゼンは、PREPの「R」と「E」を複数の支店で伝えて強調し、その主張をする理由・根拠と、具体例に厚みを出すと説得力が増します。
65のルールの中から、すぐにできそうなものを真似してみよう
本書では、こうした「聞き手に伝わる話し方のルール」をさまざまな角度から65個、紹介しています。例えば、「話は『食べやすいよう一口サイズにしてあげる』」、「まず結論からざっくり話す。細かい説明はあとまわし」、「プレゼンでは5分に1回は質問を投げかけて巻き込む」など。どれも実例を挙げながら解説あれているので納得感があり、すんなり真似できそうです。
口ベタな人は、まずは一通り目を通したうえで、すぐにできそうなものからチャレンジしてみてはいかがでしょう?楽しみながら少しずつ自分に取り入れていけば、ビジネスの場で、プライベートで、いつの間にか相手の心をつかめるようになっているかもしれませんよ。
▲参考書籍:『心に届く話し方65のルール』/松本和也/ダイヤモンド社
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