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9月1日は防災の日。六本木ヒルズの帰宅困難者受け入れ体制がスゴイ!

9月1日は防災の日。六本木ヒルズの帰宅困難者受け入れ態勢がスゴイ!

2011年3月11日、東日本大震災の影響で首都圏において約515万人の帰宅困難者が発生し混乱を招いた。その経験を踏まえ、東京都と国は帰宅困難者対策に取り組んできたが、民間企業でも積極的な対策を検討し取り組む動きがある。今回は、東日本大震災発生時に帰宅困難者を即座に受け入れ宿泊場所を提供し話題になった、六本木ヒルズなどを管理・運営する森ビルに、帰宅困難者の受け入れに対して、実際にどのような準備をしているのか、話を聞いた。

「逃げ込める街」をテーマに多方面から安全の基盤を整備

六本木ヒルズをはじめとする都市開発、大規模複合型再開発などに取り組む森ビル。1995年に発生した阪神・淡路大震災の経験から「(災害時に)逃げ出す街から逃げ込める街へ」をコンセプトに、建物の耐震性能はもちろん、道路、交通インフラなど都市インフラも含め、災害に強い街づくりを目指している。また、万が一の災害時に迅速に対応し被害を最小限にするために安全の基盤を整備している。

多数の震災訓練の実施と防災要員の育成がそのひとつだ。「森ビルでは、有事の際、帰宅困難者の受け入れ体制を整備するとともに、すみやかに震災対策組織体制に移行し、迅速な復旧活動が行えるよう定期的な訓練を行っております。森ビルの全社員約1300人が参加して行う訓練として、年2回の『総合震災訓練』、年3回の『安否確認訓練』があります。また、年1回、毎年3月11日には、六本木ヒルズの自治会との共催で行う『震災訓練』、毎月11日には、管理部門社員を対象にした『防災の日訓練』があります」と話すのは、森ビル株式会社広報室兼震災対策室事務局の山下佳美(やましたよしみ)さん。【画像1】森ビル株式会社広報室兼震災対策室事務局の山下佳美さん(写真提供/森ビル)

【画像1】森ビル株式会社広報室兼震災対策室事務局の山下佳美さん(写真提供/森ビル)

自治会は、六本木ヒルズの居住者約800世帯とテナントなどを中心に形成されたコミュニティで、3月11日の震災訓練は、六本木ヒルズ周辺の町内会、商店会、学校、地元の消防団なども交えた街全体の訓練で、毎年約1000人が参加するという。【画像2】2016年の森ビル総合防災訓練の様子。全社員が参加して炊き出し、応急手当なども本番さながらに行った(写真提供/森ビル)

【画像2】2016年の森ビル総合防災訓練の様子。全社員が参加して炊き出し、応急手当なども本番さながらに行った(写真提供/森ビル)

社員を対象とした防災訓練だけでも年25回実施。また、3年に1度、救命講習・AED講習を受講して、全社員が救命技能認定を取得することが義務づけられているなど、全員が防災に前向きに関わる姿勢の現れだ。

また、帰宅困難者の誘導、情報提供、備蓄品の運搬、仮設トイレの設置などの対応訓練も行っている。

初動対応のために社員のみならず近隣も巻き込んでの防災組織体制

「災害は、夜間、休日など、いつ起きるか分かりません。社員はオフィスを離れていることも多く、万が一のとき、すぐ現場に駆けつけられるとは限りませんが、災害時の初動対応は非常に重要です。森ビルでは、近隣2.5km圏内に防災要員社宅や管理社宅を配置しています。防災要員社宅に住む防災要員は、震災などの有事の際、速やかに指定されたビルへ出動し、初動対応をおこなう社員約100名です。管理社宅は、管理部の社員で、有事に限らず、日常の建物運営管理を行う上で発生したトラブル等を速やかに対応する社員が住む社宅です。

いずれも、災害時の初動活動やいざという時に対応できるよう、訓練への参加を条件に募集した人員で、有事の際に迅速な初動活動が行える体制を構築しています。防災要員社宅居住者の方は、2ヵ月に1回、一般社員より高い頻度で定期的な特別震災訓練を実施しています。自助、共助、公助の、自助はもちろん『共助』という意識を持って取り組んでいます」(山下さん、以下同)。

『自助』とは自分で自分を助け、救助される人にならないことだ。『共助』は、近隣、企業、地域のコミュニティなどで互いに助け合うこと。そして『公助』は行政による救助や支援のことをいう。

防災要員には、会社からヘルメットや防災服、安全靴などを貸与し、いざというときに動ける体制を整えている。そして、東京23区内で震度5強以上の地震が発生した場合、予め決められた震災対策組織に自動的に移行する。開発区域のみならず、周辺地域にも貢献できる防災拠点を目指し、周囲を巻き込む防災体制を築いているのだ。

また、森ビルでは全社員で、年1回、交通機関を使わずに会社から自宅まで歩いて帰る「徒歩出退社訓練」を行う。自宅が遠い場合は、5kmずつ区切って実施する。訓練では、社員に支給している六本木ヒルズ30km圏内の「震災時帰宅支援マップ」を見ながら、実際に自分の足で歩いて、帰宅支援ステーションや、危険な箇所はないかを確かめている。

帰宅困難者受け入れに向けて3日分の非常食などを準備

森ビルは震災時の帰宅困難者の受け入れについて港区と協定を結んでおり、一時的な避難場所の提供、備蓄食料、水の提供、誘導などについて協力を行うことを約束している。具体的には、帰宅困難者の一時的な避難場所として、六本木ヒルズでは約5000人、森ビルが管理・運営する大規模複合施設全体で約1万人を受け入れられる体制を整えている。滞在スペースは、商業フロアの共用廊下などで、そこにエアーマットを敷いて休めるようにする。

実際に、東日本大震災のときは、オフィスの帰宅困難者に対して1500人分の飲料水および非常食と550人分の毛布を提供した。また、六本木ヒルズでは港区より依頼された、約200人の帰宅困難者の受け入れ要請にもスピーディーに応えた。お年寄りや、親子休憩室を利用していた乳児を連れたお客さまについては、宿泊施設に案内した。【画像3】森ビルウェストウォークの共用部分。非常時でも電気が使えるため、帰宅困難者を受け入れるスペースになる(写真提供/森ビル)

【画像3】森ビルウェストウォークの共用部分。非常時でも電気が使えるため、帰宅困難者を受け入れるスペースになる(写真提供/森ビル)

六本木ヒルズでは、備蓄倉庫に、帰宅困難者、住居居住者、オフィス・商業テナント、社員、協力会社、近隣の分を含め、3日間の期間を想定した防災備蓄品として、非常食、水、毛布、アルミブランケット、エアーマット、医薬品、生理用品、簡易トイレ、乳児向けのミルクやおむつ、ポータブル発電機などを用意している。帰宅困難者受入施設の衛生環境の維持も重要なことから、風邪やインフルエンザ、ノロウィルス、夏場の臭気対策用の備品も揃えている。

「アルミブランケットは、東日本大震災の経験を受けて採り入れたものです。薄く軽くて扱いやすいのに保温性があります」。ほかに、東日本大震災で自転車が移動手段として重宝されたことから、防災用自転車としてマウンテンバイクを購入した。経験を踏まえて常に有事を想定し、地震直後建物被災度推測システムの開発、独自のエネルギープラントによる安定的な電力供給、自家発電・発熱エネルギーシステムの活用など、ライフライン面にも着目し改良、進化が行われている。【画像4】六本木ヒルズにある備蓄倉庫には非常食など防災備蓄品がギッシリ。段ボール箱が倒れないよう荷重制限などのルールもある(写真提供/森ビル) 【画像4】六本木ヒルズにある備蓄倉庫には非常食など防災備蓄品がギッシリ。段ボール箱が倒れないよう荷重制限などのルールもある(写真提供/森ビル)【画像5】備蓄倉庫内にある防災備蓄品のうち、医薬品など。但し、住宅居住者には1週間の在宅避難に備えたエマージェンシーキットを配布している(写真提供/森ビル)

【画像5】備蓄倉庫内にある防災備蓄品のうち、医薬品など。但し、住宅居住者には1週間の在宅避難に備えたエマージェンシーキットを配布している(写真提供/森ビル)

なお、非常食は、森ビル全体で27万食を準備しているが、帰宅困難者用に、約1万人分あり、1人当たり1日3食3日分、プラス予備を加えた10万食を保管している。「お子さま用や高齢者用の食料、食べ物アレルギーの方向けの食料も準備しています。非常食というと、乾パンをイメージするかと思いますが、乾パンは喉が乾くので、3日間あきずに食べられるように考えて、さまざまな種類のマジックライスやレトルト食品などを用意しています」【画像6】袋に水やお湯を注ぐだけで炊きたてご飯ができるマジックライス。炊き込みご飯など種類も豊富だ(写真提供/森ビル)

【画像6】袋に水やお湯を注ぐだけで炊きたてご飯ができるマジックライス。炊き込みご飯など種類も豊富だ(写真提供/森ビル)

震災時に、帰宅困難者を受け入れる場合の条件やルールはあるのだろうか。「人数制限はありますが、条件はなく、どなたでも受け入れています。混乱を招かないようスタッフの案内に従っていただくことはもちろんですが、帰宅困難なお客さまであっても、災害時は『自助』『共助』が大切です。何かあれば医療従事者にお手伝いいただくこともありますし、東日本大震災時は備蓄品の運搬や配布なども動ける方には動いて手伝っていただくようお願いしました」。

東日本大震災の経験から、『公助』には限界や制約があり『自助』『共助』の重要性があらためてクローズアップされてきた。私自身も仙台市で東日本大震災を経験して、帰宅困難者の列で、例えば松葉杖で歩く人に寄り添ったり、食料を求めて並ぶ商業施設前の行列で子供連れの方に声をかけるなど、他人と支え合う姿を目の当たりにした。そして今回お話を伺い、普段からの防災に対する高い意識と準備、『自助』『共助』という意識がいかに大切かをあらためて痛感した。

帰宅困難者を受け入れられる施設としては、他にも大型商業施設のほか、マンションなどがあり「逃げ込める建物」は、今後増えていくと思われるが、森ビルが行っている「徒歩出退社訓練」のように、実際に会社から家まで歩いて、途中にどんな建物があるか、いざという時に避難できる施設や危険なところなどを確認しておくと、新たな発見があるはずだ。

東京都の帰宅困難者対策条例では、帰宅困難者が多く出ることで、官の救助・救援活動に支障がでたり、帰宅途中に二次災害に遭うことがないよう、災害時にむやみに移動を開始しないよう指示を出している。いざというときを想定してハード面、ソフト面の両面でできることを行いつつ、普段から会社内や街、近隣とつながりをもってコミュニティを形成したい。また、家族とも打ち合わせをしておきたい。そして、実際に帰宅困難者になった場合は、『自助』『共助』を念頭に置いて周りを見ながら行動することが重要だ。●取材協力

森ビル株式会社
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