「グチばかり」言う人と一緒に働くことになったら?
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、「ビジネスパーソンの仕事への向き合い方」についてお話しいただくこのコーナー。第16回の今回は、「やる気のない人と組まされた時に、目標を達成する方法」についてです。
こんにちは。俣野成敏です。
現代社会では、仕事は誰かと共にプロジェクトを遂行するのが一般的です。そんな時に万一、組織の中にやる気のない人が混ざっていたりすると、どうでしょうか?
一緒に仕事をしている人がマイナス思考だった場合、職場全体によくない影響をもたらすかもしれません。
「グチばかり言う人と一緒になった」ときはどうしたらいいのか?
以前、私が社会人向けのセミナーを開いた際に、以下のような質問を受けたことがあります。
「職場でグチばかり言う人がいて辟易しています。
『つまらない』『やる気が出ない』といったことを口にするので、『こう考えてみたらどう?』とアドバイスをするのですが聞く耳を持ちません。
やるべきこともやらずに文句ばかり言っている様子にウンザリしますが、会社が決めた配属なので、自分ではどうすることもできません。仕方がないので適当に合わせ、何とか仕事をやってもらおうと努力しています。こういう人たちを変えられる方法はありませんか?」
このような悩みは、特に仕事に前向きな方に多いのではないかと思います。プロジェクトの達成には多くの場合、他人の手を必要としますが、たいていは思うようには動いてくれません。部下を持つ上司、先輩と後輩、同僚など。職場の至るところで、やる気のない人を動かそうと、四苦八苦している様が見受けられます。
せっかく高い志をお持ちの方が、周りに影響されて自分まで空回りをしてしまい、本領を発揮できずにいるのはとても惜しいことだと考えます。
「相手を変えようとしない」
「自分でチームのメンバーを選べたら……」と思う人は多いでしょうが、会社内でそれができることはあまりありません。もし、この問題を現実的に解決したいと思うのであれば、まずは「相手が変わってくれる」のを期待せず、「会社が自分の状況を理解して善処してくれる」といった幻想を捨てたほうがいいでしょう。
だったらどうすればいいのかと言うと、一番手っ取り早いのは「あなた自身が変わる」ことです。
世界的な大ベストセラー『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー博士著)の中に、このようなたとえ話が書かれています。
ある日、視力が落ちたあなたは眼科へ行ったとします。すると話を聞いた医者は自分がかけていた眼鏡を外し、「この眼鏡は本当によく見えますから、あなたに差し上げます。かけてご覧なさい」と言いました。医者の言うことなので、あなたはそれに従いますが、当然見えるわけもありません。
あなたが「見えません」と言うと、医者は「そんなはずはありません。その眼鏡が良いことは、私が知っています。もっと頑張って、前向きな気持ちでかけてみてください」と言います。「前向きになっても、見えないものは見えません」と返答すると、「何という人だ!せっかく、あなたの力になりたいと思ったのに」と逆ギレされてしまいました。
実際に、こんな医者がいたとしたら困りものですが、これと同じことをしている人が、実は意外に多いのです。
他人を動かす3つの方法とは?
このたとえ話でお伝えしたいのは、「他人は自分とは違う考え方で動いている」ということです。自分の理想で他人を測ることには意味がありません。それは、自分用につくられた眼鏡を相手にもかけるように強要するようなものです。
こうした現実を踏まえた上で、どうしたら他人に動いてもらうことができるでしょうか?
『7つの習慣』には第5の習慣として「まず理解に徹し、そして理解される」とあります。
自分を理解してもらうためには、先に自分から相手を理解しようとすることが大切、ということです。
ですから、もしあなたが相手に動いてもらいたいと思うのであれば、まずは相手を受け入れなければいけません。これをベースに、私が考えている「他人を動かす方法」を3つご紹介しましょう。
(1)「あなたのようになりたい」と思われる存在になる
(2)相手にメリットのある話をして、その気にさせる
(3)コンセプトで人を集める
(1)は、自分自身が「憧れの存在になる」ことです。要はピンポイントで他人の尊敬を集められる人になる、ということです。もともと、人は誰も他人の話など聞きたいとは思っていません。けれど話す相手が、自分が憧れている人なのであれば話は別でしょう。自分がそうなることを目指すのです。
(2)は、人はたとえ他人の話は聞きたくなくても、自分にとって「メリットがある」ことであれば、嫌でも聞く気になる、ということです。
(3)は、あるコンセプトを発信し、キーワードに共感した人を集めるという発想です。これができれば、当然ながら意思疎通は格段に楽になります。社内プロジェクトチームはもちろん、独立起業の際にはとても有効です。
大事なのは「目的に向かって進むこと」
他人を動かす3つの方法の中で、比較的誰にでも取り組めて、しかも即効性の高いのは(2)の「相手にメリットのある話をする」ことでしょう。
大多数の人にとっては、会社がより良くなることよりも、自分の生活のほうが差し迫った問題です。それがいけないのではなくて、それが普通なのです。ですから、そういう彼らの力を借りたいと思うのであれば、彼らの立場を理解し、かつ「この仕事をすることが自分たちの利益になる」ということを理解してもらうことです。
あなたが自分の目的を達成するためには、最初から彼らに仕事の意義を理解してもらわなくてはいけない、ということではありません。彼らが「自分たちの利益になると思ってやっていたら、気づかないうちに会社に貢献していた」という形でもいいのです。
他人を変えることができなくても、あなたが変化することによって、相手に影響を与え、より良い方向へ導くことは十分に可能です。
組織には、いろいろな考え方の人がいて当然です。
大切なのは、一人ひとりのどこにスポットライトをあて、それらをどう組み合わせて目指す目的地に近づいていくかです。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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