いまどき、「デキない」とは言いづらい――英文メールの書き方(初級編)
『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『英語を「続ける」技術』(かんき出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第7回目の今回は、「英文メールの書き方(初級編)」についてです。
多くのビジネスパーソンにとっての鬼門と言える「英文メール」。“デキません”とは言いにくい場面もありますよね。英語が苦手な方であっても、伝わる形で&効率的になんとか書けるようになる翻訳ツールの上手な使い方を、前回に引き続きご紹介します。
前回は、英語は大の苦手なのに、仕事で英文メールを書かなければならなくなった方のために、超初級編「誰でもできる翻訳ツールの使い方」というテーマでお届けしました。以下の3つのポイントをお伝えしましたね。
・1文で一つのことしか言わない
・主語をはっきりさせる
・できる限り言葉を省略しない
翻訳ツールに“丸投げ”してしまうのではなく、日本語をちょっと工夫するだけで、比較的まともな英文が誰でも書けるようになります。今回は、翻訳ツールが通じる英語に訳してくれやすくなるための、さらに3つのポイントをお伝えします。
ポイント1:受け身は極力使わない
英語は、基本的には受動態(受け身)を避ける言語だと思ってください。例えば日本語だと「彼に叩かれた」などのように受け身を使う場面でも、英語では「I was hit by him.」とは言わず、「He hit me.」のように能動態で表現するのが普通です。
ですから、翻訳ツールを使う際には、「(私が)○○された」という日本語は、「△△が(私に)○○した」のように言い換えましょう。
私は、相手からメールを無視されます。
【結果A】I will ignore the mail from the other party.
【結果B】I ignore a mail from a partner.
↓
相手が私のメールを無視します。
【結果A】The other party ignores my mail.
【結果B】A partner ignores my mail.
上の例は、前回の記事で誤訳をされてしまったものですが、受動態ではなく能動態に言い換えることで、通じやすそうな英文になりました。
車でお客さんのところに連れていかれました。
【結果A】I brought him to the customer by car.
【結果B】You brought you there at the guest by car.
↓
彼は車で私をお客さんのところに連れて行きました。
【結果A】He took me to the customer by car.
【結果B】He brought me there at the guest by car.
さて、英語ではどういう場合に受動態を使うのでしょうか?
基本的には、行為者、つまり「誰がする/したか」を曖昧(あいまい)にしておきたい、もしくは行為者が分からない時だとお考えください。
ポイント2:日本的な言葉遣いに注意する
ビジネスでは「できない」という言葉が避けられる傾向があります。その代わりに使われるのが「難しい」「○○しかねる」といった表現です。
まず、英語で「it’s difficult……」と伝えても、難易度は高いが実現可能という意味に取られてしまいます。できないことは「できない」とはっきりと表現する必要があります。
その仕様を実現するのは難しいかと存じます。
【結果A】I think it is difficult to realize that specification.
【結果B】I think whether it’s difficult to achieve its specification.
↓
申し訳ありませんが、その仕様は実現できません。
【結果A】I am sorry, but that specification can not be realized.
【結果B】I’m sorry, but its specification can’t be achieved.
なお、ここで「can not be realized/achieved」のように受動態に(たまたま)なりましたが、主語をぼやかす形でうまく訳されましたね。
もう1つの「○○しかねる」という表現は、機械翻訳の精度が上がればきちんと訳されるでしょうが、「○○できない」と言い換えた方が安全でしょう。
1点、分かりかねるところがありました。
【結果A】There was one point I could not understand.
【結果B】There was a place 1 point can’t be understood.
↓
私が理解できないことが1点ありました。
【結果A】There was one thing I could not understand.
【結果B】There was 1 case that I can’t understand.
ポイント3:比喩や慣用句、擬音語を使わない
つい気づかずに使ってしまいがちなのが、比喩や慣用句です。これは大きな誤訳を生む原因になりやすいですからご注意ください。
首を長くして、お待ちしています。
【結果A】I am waiting for a long neck.
【結果B】I make the neck long and am waiting.
↓
私は結果を楽しみにお待ちしています。
【結果A】I am looking forward to the results.
【結果B】I’m waiting for a result pleasantly.
私は上司に相談しましたが、取りつく島もありませんでした。
【結果A】I consulted my boss, but there were no islands to catch.
【結果B】I consulted a boss, but there was no Shima who clings, too.
↓
私は上司に相談しましたが、彼女は私のことを相手にしてくれませんでした。
【結果A】I consulted my boss, but she did not take care of me.
【結果B】I consulted a boss, but she didn’t care for me.
また、日本語は「オノマトペ」と言われる擬音語、擬態語がよく使われる言語です。日本人相手であれば非常に便利なものですが、コンピュータ相手には避けた方が良いでしょう。
あの喫茶店はガヤガヤしています。
【結果A】That coffee shop gaya gaya.
【結果B】That coffee shop is being done noisily.
↓
あの喫茶店では、他人の会話がうるさいです。
【結果A】In that cafe, the conversation of others is noisy.
【結果B】Others’ conversation is noisy at that coffee shop.
パッと終わらせたいと思います。
【結果A】I’d like to bring to an end short.
【結果B】I’d like to close it.
↓
私はそれを30分以内に終わらせたいと思います。
【結果A】I would like to end it within 30 minutes.
【結果B】I’d like to bring that to an end within 30 minutes.
前回と今回でお伝えした6つのポイントを押さえておけば、翻訳ツールにとんでもない誤訳をされてしまう可能性がかなり減ることでしょう。コンピュータは万能ではありませんから、丸投げしてしまうのではなく、うまく使ってあげてくださいね。
なお、これらのポイントは、英語を話す時にも役立ちます。英語で会話をする際にも意識してみてはいかがでしょうか?
西澤ロイ(にしざわ・ろい)
イングリッシュ・ドクター
英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。
TOEIC満点(990点)、英検4級。
獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。
暗記の要らない英会話教材「Just In Case」、正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『英語を「続ける」技術』(かんき出版)他、著書多数。
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