ともするとギクシャクする「人への断り方」……逆手に取って距離を縮める極意とは?
コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第22回目は「ファンを増やす断り方」についてです。
うまく断る方法を身につけているかどうかは、できるビジネスマンの必須条件の一つです。お客様や取引先に、無茶な要望を言われたとき、はっきりと断らなければいけないときがあります。
そんなときにあなたは、どのような断り方をしていますか?
相手を不快にさせず、逆にファンにする断り方があります。
スマートな断り方のコツをお伝えしましょう。
1. 共感を示す
「いつも“ひいき”にしているんだから、もっと割引してくれよ」
「納品日を一週間早めてくれ」
このように、対応が難しい要求をお客様に言われたときに、一番やってはいけないことがあります。
それは即座に断ってしまうことです。
「すみません、割引は無理です」
「納品日をこれ以上早くすることはできません」
このように、瞬時に断り文句を言ってしまうと、強く拒絶されたという感情が残ります。
「無下にする」という言葉があります。
冷淡に、そっけなく拒むことをいいます。
相手の要望を無下にしてしまうと、今後の人間関係に大きなヒビがはいってしまうことさえあります。
では、どうしたらいいのでしょう?
一番にすべきことは、相手に共感を示すことです。
「そうですよね、おっしゃる通りです。〇〇様には本当にいつもごひいきにしていただいて、本当にありがたいです」
「納品日を一週間早くですか。お急ぎの事情はよくわかります」
このように相手の言葉を、一旦受け取ってオウム返しをします。
オウム返しをすることで、「あなたの事情はきちんとわかりましたよ」というサインを送ることになります。
相手が無茶な要求を言うときには、「無理だと思うけど、とりあえず頼むだけ頼んでみよう」という心理もあります。
まずは、相手の立場に共感をしたことを伝えます。
2. 上司に相談する
すぐにその場で「無理です」「できないです」と答えを出してしまうと、誠意が伝わりません。
あなたが、できることはがんばったという姿勢を見せる事が大事です。
すぐには答えを出さずに、
「わかりました。課長に相談してみますので、お返事は少しお待ちください」
など、一旦持ち帰ったり、間を空けたりして対応します。
3. 枕詞を入れる
共感を示した後は、いよいよ断り文句を伝えますが、次のような『枕詞』をつけるのを忘れずにしましょう。
「私個人としては、〇〇様の意見に大賛成なのですが、・・・」
「お役に立ちたいのは山々なんですが、・・・」
「私が社長だったら、〇〇様のご要望を絶対に叶えるところですが、・・・」
このように、「個人的には力になりたいという思いであふれています」という気持ちを伝えることです。
要望を受け入れてもらえないという相手の不満は、さらに軽減されます。
4. 力を尽くしたことを伝える
相手の要望を叶えるために、できるだけのことはがんばった。だけどダメだったことを伝えます。
「上司にお客様がすごく困っているので何とかしたい!と直談判したのですがダメでした。力及ばず申し訳ありません」
このように、ベストを尽くしたという姿勢を見せる事が大事です。
5. 具体的な理由を述べて断る
断るときは、具体的な理由を述べたほうが、説得力が高くなります。
「うちは配送料無料でがんばっていますので、これに加えてさらに割引となると運営が厳しくなりまして・・・ご期待に添えず申し訳ありません」
「ご注文に関しまして、この商品は人気が高くて生産が間に合わない状況になっており、最短でも納品できるのが10日かかってしまいます。他のお客様にもお待ちいただいている状態でして。申し訳ございません」
理由を述べるときの注意点があります。
こちらの事情をわかってもらおうとするのではなく、相手の立場に立って、「どういう理由なら納得しやすいか」を考えて伝えるのがポイントです。
6. 代案を示す
断った後は、代案を示します。
「その代わりといってはなんですが、いつもごひいきにしてくださっている〇〇様ですので、△△サービスを無料で1回おつけさせていただきます」
「一週間は難しいですが、1日早めて納品できるようにがんばらせていただきます。ただその場合、通常便では対応できないので、料金が〇〇円アップはしてしまうのですが、いかがでしょう」
もし、代案が思いつかなければ次の一言です。
「他の事でお力になれること、お役に立てることはありませんか?」
相手を尊重したいという気持ちが伝わるので、より好印象を与えることができます。
7. 経過報告をする
断ったあとは、アフターケアが必要です。
経過報告を行うのです。
意外とここが盲点で、要望やクレームを受けた後のアフターケアができる人は少ないです。ここで、できるビジネスマンと普通のビジネスマンの差が開きます。
「先日、おっしゃっていただいた割引の件ですが、上司にも伝えておきました。貴重なご意見をありがとうございました。もし、新しいサービスができたら、真っ先に○○様にお伝えいたします」
「納品の件ですが、前回はご要望におこたえできず申し訳ありませんでした。今後はできるだけ早く〇〇様にお届けできるように、弊社の在庫確保の方法を見直してまいりたいと思います」
このように経過報告をすることで、あなたの好感度はよりアップします。
断り方次第で関係が変わる
なにかを要求されて、断らなければならないときというのは、断る方もストレスがかかるもの。
「相手を不快にさせてしまうのではないか・・・」
「無能と思われるんじゃないか・・・」
などと思ってしまう方も多いでしょう。
しかし、断るのが嫌で、なんでもイエスで受けていたら、自分で自分の首を締めるようなものです。また、多くの人に迷惑がかかってしまうことにもなります。お互いストレスが少なく、長い付き合いをしていきたいなら、断ることもときに必要です。
断ったらお客様が離れていく、嫌われるというのは、思い込みです。
大切なのは、相手を思いやった断り方です。
誠実な態度を示せば、相手は断られて不快になるどころか、あなたの対応に感動し、ファンになってくれるでしょう。
あなたの誠実さが伝わる断り方で、相手との関係をより良いものにしていきましょう。
松橋良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家
1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。
約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。
著書
「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)
「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)
「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)
「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)
「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)
公式サイト http://nlp-oneness.com
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