デキる人はなぜ「社内営業」が上手いのか?

「自分の意見が通りやすくなった」

「他の人より社内承認のスピードが速い」

「希望の部署に抜擢された」

同じ会社の、同じ部署で働き、ほぼ同じような年齢なのに、なぜか自分よりも企画や意見が通りやすい人がいるものです。そんな彼らが無意識で行っていることこそ「社内営業」。デキるビジネスパーソンはこの「社内営業」を意識的に行い、まわりの力を借りて、実力以上の結果を叩き出し、自分のパフォーマンスを最大化しています。

そこで今回は、誰も教えてくれない「社内営業テクニック」について、広告代理店の営業マンとして飛び込み営業成功率72.6%、累計30億円以上の案件を獲得、また3000人以上のVIPと交流した経験を持つ「気配り」のプロフェッショナル・後田良輔さんにお話を伺います。

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会社は貴重な人脈やノウハウの宝庫である

社内営業というと「偉い人のご機嫌取り」というイメージを持つ人が多いですが、それは大きな間違いです。なぜなら本当の社内営業とは、「ただの顔見知りを味方に変身させるポジティブ行為」だからです。そこには「ごますり」や「おべっか」というご機嫌取りの要素は一切ありません。

そもそも、あなたは社内の全員の名前と顔を覚えていますか? 部署や年齢が異なるほど、知らない人が増えていくのが一般的ではないでしょうか。だからこそ社内営業が必要なのです。同じ会社だからといって、わざわざよく知らない人を喜んで助ける人はいません。だからこそ積極的に社内営業を行い、「知らない人→顔見知り→味方」というステップで人脈を開拓し、「この人なら助けてあげよう」「力になりたい」と思ってもらう必要があるのです。

また、そもそも同じ会社ということは、あなたと同じような志望動機を持って働いている可能性が高いとも言えます。だからこそ社外セミナーや異業種交流会で未知数の人脈を探すよりも、あなたと相性の合う人と出会う確率は高いでしょう。会社は自分が考える以上に、貴重な人脈やノウハウが眠っているスキルの宝庫です。たとえ口下手な人でも、自分と似た人であれば話しやすいのでは。まずは最も身近な社内で「いざとなった際に協力してくれる味方」を増やすのが、デキるできるビジネスパーソンへの第一歩なのです。

社内の味方は「顔を見せるだけ」で増やせる

では、実際にどのようにすれば、社内の知らない人を味方にできるのでしょうか?

最も有効なのが「顔を見せる」ということです。先ほども述べたように、同じ会社で働いている時点で、あなたと同じような動機を持って働いている可能性大。だからこそ、社内の人間とはあえて仕事の話をする必要はないのです。それよりも「あなたに興味がある」「あなたの話が聞きたい」という態度で「顔を見せる」ことが重要です。

心理学の「ザイアンスの単純接触効果」の通り、人は興味がなかったものでも、何度も見たり、聞いたりすると、次第によい感情を抱くものです。「この人と仲良くなりたい」という人を見つけ、積極的に顔を見せ、仕事とは関係のない雑談を仕掛けましょう。

話題は「今、見ているドラマは何ですか?」など他愛のないものでOKです。ちょっとした雑談をしに顔を見せることこそ、実は最強の社内営業なのです。とはいえ、いきなり雑談をわざわざしに行くのも、「あいつ社内営業している感」がぷんぷんしてしまいますので、これから紹介する方法を交えて、自然に会話を仕掛けてみましょう。

■相手が上司の場合

上司は目の前の仕事に追われていることが多いので、意外と雑談が仕掛けにくい存在です。だからこそ仕事以外の会話がしやすい「ランチ」に誘うことが有効となります。

とはいえ、いきなり「ランチでも行きませんか?」と言うのはハードルが高い人もいるかもしれません。そこでおススメなのが、上司とのミーティングを「11時とか11時30分」にセッティングするという方法です。このような時間にミーティングをセッティングすれば、自然な流れで「ちょっと早いですがランチでもどうですか?」と無理なく誘うことができます。おいしい食事をしながらであれば話題もはずみ、自然と雑談ができます。ぜひ試してみてください。

■相手が同僚の場合

相手が同僚の場合は、話しかけやすいというメリットはあるものの、他人と差別化がしにくいというデメリットも存在しています。そこでおススメなのが「お菓子の新商品のおすそ分け」です。コンビニなどでお菓子の新商品が出た場合、「どんな味がするのだろう?」と思いながらも、ついつい定番のお菓子を買うのが人間の性。そんな気持ちを先読みしてあなたが新商品を買い、「新しいお菓子を一緒に食べてみない?」と雑談を仕掛けたい同僚にお菓子を配るのです。これにより「ちょっと嬉しい気分をプレゼントしてくれる味方」という立ち位置で自然と会話ができるようになります。

■相手が後輩の場合

現代の若者の特徴を書いた著書「つくし世代~新しい若者の価値観を読む」(藤本耕平著/光文社新書)によれば、今どきの若者の理想のリーダー像は、松岡修造さんとのこと。対等な目線で「やろう!」と語りかけ、みんなを引っ張っていこうとする姿勢に、若者は好感を持つそうです。

後輩に接する際は、後輩がコピーや書類をプリントアウトしている際に近づき「何か困ったことはない?」などと言いながら、軽く雑談するのが有効です。後輩だからと言って上から目線にならず、「よい兄貴・姉御」の立ち位置で積極的に話しかけていきましょう。

■相手が年の離れた偉い人の場合

自分の親くらい年の離れた人の場合、会社のキーマンである可能性が高いものです。そんな彼らと交流するには、就業時間の1時間前に出社して「今度、〇〇(相手が得意なスポーツや本・映画などの趣味の情報)を教えてください」と声掛けすることが有効です。偉い人ほど、早い時間に出社し、誰もいない朝の時間を有効活用しています。

そんな誰もいない時間に自分も行き、挨拶がてら相手に教えを請うだけで「こいつは朝も早く来てしっかりした人物だ」とポジティブに評価してくれるようになります。

私が接してきた3000人のVIPたちの多くも、早い時間に出社し、朝だからこそつなげられる人脈を構築していました。仕事がデキる事実も大切ですが、早い時間に偉い人に挨拶することも重要です。挨拶の時間を変えるだけで高評価が得られるので、使わない手はありませんよね。

――個人のスキルを磨くことは大切ですが、人の力を借り、もっと大きな仕事に、みんなで取り組むのはもっと大切で楽しいものです。ぜひ社内営業を積極的に仕掛け、自分だけの人脈を会社の中に構築してください。たったそれだけで、いろいろなことが好転しはじめ、人生が劇的に変化していきます。

後田良輔氏/ビジネス書作家・コラムニスト

後田良輔氏/ビジネス書作家・コラムニスト

1972年生まれ。大手3大広告代理店に勤務し、「誰でも使える気配り術」を駆使する気配りのプロフェッショナル。これまで応対したVIPは、東証一部上場社長、世界企業のCEO、政治家、医者、弁護士、大学教授、大物俳優・女優、ミリオンセラー作家、世界No.1クリエイターなど総勢3000名を超える。この特別丁寧に接しなければならない顧客との交流で磨かれたスキルと「東京・名古屋・大阪」の現場勤務で身につけたリアルな経験を組み合わせた、独自の「誰でも使える気配り術」に定評がある。

著書に、『気配りの正解』(ダイヤモンド社)『<落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!>ぶっちぎり理論38』(ダイヤモンド社)、『逆境を活かす! 就活面接「エモロジカル理論」2015年度版』(実務教育出版)『1秒内定面接術」』(インプレス)など。これらの実績を買われ全国の大学や企業から講演・研修依頼が殺到。新聞・雑誌などメディア露出は50回以上。「世界からキャリアの悩みをなくすこと」をミッションとする。

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