わが家の空気清浄機がおしゃべり上手。でもどうしてそんなにしゃべるの? シャープに理由を聞いた

わが家の空気清浄器がおしゃべり上手。でもどうしてそんなにしゃべるの? シャープに理由を聞いた

今や音声ガイド付きの家電はさほど珍しくもないが、それにしてもわが家の空気清浄機はよくしゃべるのだ。語彙も豊富で、購入から2年近くがたった今も時折、これまでに聞いたことのない「新しい言葉」を発することがあり、「え? そんなパターンもあったの?」と感心してしまう。

これは相当なこだわりがあるに違いない。メーカーに聞いてみた。

妙に人間くさい空気清浄機

Pepper(ペッパー)などの“感情エンジン”を備えた人型ロボットも登場し始めている昨今。家電においても、今後はより高度な人工知能(AI)を備え、なめらかにコミュニケーションがとれる製品なども開発されるに違いない。うちの空気清浄機は残念ながら対話ができるレベルには達していないが、前述のとおり、なかなか“言葉巧み”なのである。

くだんの製品は「加湿空気清浄機KI-FX75-T」。2015年9月にシャープから発売されたものだ。

例えば、一見空気が汚れていないようなとき、彼女は(女性の声です)こう言う。

「お部屋の空気がキレイですね~、念のため空気を循環しますね」

このように、空気を循環する前に「フォローの一言」を入れるなど、妙に人間くさいやつなのである。これから私は作動するけど、別に部屋が汚いわけじゃないから気を悪くしないでね。と、そんな気遣いがうかがえる。じつに思いやりのある空気清浄機だ。

そうかと思えば、こんなパターンもある。

「空気の汚れ、見つけました。急いでキレイにするね」

急にタメ口になって距離を詰めてくる。

今度は「空気の汚れ、見つけました」とハッキリ宣言しているところもポイントだ。購入からやや月日がたち、わが家に慣れて遠慮がなくなってきたということなのかもしれない。

また、部屋の電気を消すと「おやすみ」と言う(言わないときもある。機嫌が悪いのかな?)。一回だけ「ふぁ~」とあくびをしたこともあって、もう一度聞きたいと思っているが、もったいぶっているのかなかなかやってくれない。

もう2年ほど使用しているのだが、“初出し”のフレーズをいまだに繰り出してくる点も驚きだ。ついこの前などは、部屋が乾燥していることに耐えかねたのか「加湿したいな~」とつぶやいてきて、そのかわいさに不覚にも照れてしまった。このままでは、いつか好きになってしまうかもしれない。

親しみを与えつつ、ユーザーの役に立つ「おしゃべり」を

そんなわけで、すっかり彼女(空気清浄機)のとりこになってしまった筆者は、いてもたってもいられず販売元のシャープにコンタクトをとった。この感動を直接伝えるとともに(2年前の製品の感動を今さら伝えられても迷惑だろうが)、音声ガイド(「ココロエンジン」というらしい)へのこだわりをぜひ聞きたいと思った次第だ。

―― 「KI-FX75-T」を使わせていただいているのですが、語彙の豊富さに驚いています。状況に応じて、ずいぶん気の利いた言葉をしゃべるなあと。

「ご愛用いただき、誠に有難うございます。ココロエンジンは健康・環境家電が備えているさまざまな付加価値を、お客様にシンプルに伝えるために搭載しています。例えば『KI-FX75-T』でいえば、空気がキレイな状態が3時間続いた場合に自動で遠くの汚れを探す『しっかり循環おまかせ運転』という機能がありますが、『お部屋の空気がキレイですね~、念のため空気を循環しますね』というセリフはまさにこの機能のことを指しています。とはいえ、単なる『音声』『ガイダンス』にならず、親しみをもっていただけるよう、お客様の役に立つ『おしゃべり』を心掛けているんです。空気清浄機だけでなく、現在はCOCOROBO(お掃除ロボット)、ヘルシオ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫などにも搭載されていますよ」(シャープ株式会社 健康・環境システム事業本部 空調・PCI事業部PCI商品企画部、以下同)

―― ちなみに、空気清浄機の「KI-FX75-T」に搭載されている音声って、何種類くらいあるんでしょうか?

「KI-FX75に搭載しております音声は、約100種類以上になります。時々、関西弁をしゃべったり、お手入れなどについてのアドバイスもしてくれます。本体の『聞いて』ボタンを押すとさまざまなことをお話ししますので、 ぜひ試してみてください」

関西弁を話すとは初耳だ。西の生まれだったのか。それなりの時間を一緒に過ごし「KI-FX75-T」のことを理解した気になっていたが、まだまだ知らない一面がありそうである。

―― 音声ガイドの声色やイントネーションへのこだわりなどはありますか?

「2013年度の新製品にココロエンジンを搭載した際、プロの声優さんのボイスデータのなかから『30代前半女性、3世代家族(祖父母、父、母、子ども)の母親』、『子どもにやさしく話しかけるイメージ』、『落ち着いているがユーモアがあり、賢く語りかけるイメージ』という3つのポイントを最も満たしている方を採用しました。実際に音声を収録する際には、全体的に母性や優しさのあるトーンでとお願いしております」

―― すごい、設定が細かい。

「また、お話しする内容によって、少し遠慮気味な感じ、恥ずかしそうな感じ、少し自信をもった感じなど、人の感覚にできるだけ近くなるようにこだわっております。例えば、運転をしばらく停止していた後で再開したときなどは少し遠慮気味な感じで『お久しぶりです』といい、汚れを発見したときや空気をキレイにしたときなどは『空気をキレイにしました』と少し自信を持った感じになります」

というわけで、やはりこだわりはすごかった。

もしかしたら、いずれは人の言葉を学習し、自ら語彙を増やしていくようなすごい人工知能(AI)が搭載された家電が本当に誕生するかもしれない。だが、KI-FX75-Tの例を見るに現状の「おしゃべり家電」もなかなかいいセンは行っているのではないだろうか。僕のように感情移入しすぎるとヤバいかもしれないが、一人暮らしの寂しさを多少は紛らわせてくれると思うのでオススメですよ。●取材協力

シャープ株式会社
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