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宇宙特集:デザイナー・TARO HORIUCHI Interview

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TARO HORIUCHI の服は不思議なバランスで成り立っている。日常の延長を謳う清潔感とフェミニンさをもちながら、つるりとした独特のシルエットと素材感は日常というにはくっきりと輪郭が立ちすぎて、心を動かすアートのようだ。そのTARO HORIUCHIのコレクションのテーマには、度々宇宙が登場する。NASAが発表した「TRAPPIST-1」に関しての記述などをテーマにした最新となる2017 AWコレクションのルックとともに、デザイナー堀内太郎へのインタビューを紹介する。

——TARO HORIUCHIのコレクションには宇宙をテーマとしたものが多い印象があります。

堀内「そうですね。元々フューチャリスティックなものが好きで、アントワープの卒業コレクションのテーマも“Ancient Plastric”という、過去と未来を融合させたものでした。アントワープでは自分のルーツを探り出すということが非常に重要視されていたんですが、僕の父親は古代美術をメインとした美術商でエジプトなどの作品を取り扱っていたんです。幼少期から父親の扱う古代美術に囲まれて育ったことに加え、同時に古代とは逆とも言える未来への興味がすごくあって、未来を純粋なもののように感じていた。そのふたつをミックスすることに新しさを感じて卒業コレクションを作り、いまでは永遠のテーマのようになっています。最新コレクションでもトム・サックスの作品とシャネルがインスピレーション源の一つになっていて、宇宙飛行服のようなシルエットや軽さをもちながらボンディング素材を使用したり、過去と未来を行き来しながらクラシックな雰囲気を持ちつつ未来的な感覚を感じる服を作ることにトライしています」

——なるほど、宇宙というテーマの大本は時の交わりから来ているんですね。

堀内「対局にあるもの同士は表裏一体だからどこかしらで交わっていくと思うんです。あり得ないような事柄でも、絶対的には否定できないから惹かれるのかもしれないです。古代エジプトに関しても、例えばピラミッドを作ったのは宇宙人だと言われても、僕たちはその時代に生きていないから完全には否定することは難しいし、歴史の考察はされているけれど僕たちには真実を計れないと思います。実際に古代のものをリサーチすると、エイリアンのような絵やSFで描かれているような未来的なものに繋がることも多々あって。古代美術と言われているものも、当時は芸術ではなく信仰のためのものだったので、よりピュアであり、削ぎ落とされた表現になっていて、地上絵なんかはフューチャリズムを非常に感じます。そのあたりも学生時代にリサーチソースとして色々見ていて、時代の対局を繋ぐものが好きでした。そうやって古代も未来も全て繋がっていると考えることがおもしろいんですよね」

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——古代的にも未来的にも振れる作品は、つまり時を超えるほどに完璧なものだとも言えます。

堀内「そう。普遍であり、完成されたものへの憧れなんです。ファッションが移り変わるものだからこそ、そういうものに憧れるし、強さを感じるんだと思います。ファッションの世界に長くいればいるほど、経年変化しないものへの憧れも強くなる」

——TARO HORIUCHIの服は身体にタイトフィットしないものが多いですよね。それも身体のラインを払拭し、経年変化しないものへ近づけているんでしょうか。

堀内「個人的に、フィットさせるよりも周りを覆ってカバーするシルエットが好きなんです。クリストバル・バレンシアガは僕が崇拝するデザイナーのひとりで、彼が50年代に作っていたシルエットが学生時代から好きで、僕のルーツのひとつにもなっています。彼はスペイン人で、同時期にクリスチャン・ディオールがいますが、全く違うデザインですね。動きにくいんだけどシルエットが出るように芯があったり、内部構造もおもしろい。その後にピエール・カルダンが出てきて、まるでSFのコスチュームのような服が流行りますが、その源流となった人です。クリストバルが作ったウェディングや帽子は究極的に美しく、全く古びない。揺るぎないデザインは可能なんだと思い知らされます」

——難しいのが、トレンドというだけでなく、時代によって未来像が変わるじゃないですか。例えば以前の未来像は機械だらけでしたが、いまは自然と共生しているイメージだったり。その中で揺るがないものを作るというのは並大抵のことではない。

堀内「確かに、振り子のように相反するものは必ず出てくる。機械化されるからこそ身体を鍛える肉体派のような人もいますし、アナログが見直されているのもその流れですよね。安価に自分にフィットする服が出回ったら、逆にフィットしていない服が流行りそうだし、軽量化もある程度まで進んだら逆に重さを競うトレンドも生まれかねない。定義されたくない、固定されたくないという意識がどんどん未来を変えていく。古代と同じく、未来像にも完璧な答えがないんですよね。古代に関しても未来に関しても、人間にわかっていることなんて本当にたがが知れているし、天動説と地動説のように当然だと思っていたこともいとも容易く逆転するのだから目の前の現実が本当かもわからない。だからこそ僕は、服を作ることによって実験をしているんだと思うんです。デザインすることは、未来像に対する自分の考え方をトライアウトして探す行為なんだろうなと」

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