全国的に増加傾向の空家問題 どのような対策が必要か?
全国的に増加傾向の空家問題について
全国的に空家等が増えて問題になっています。
放置された空家は、火災や犯罪の発生のおそれや衛生上の懸念もありますし、地域の生活環境の観点からも好ましくありません。
特に老朽化した家屋は、倒壊等により隣人や通行人の生命身体を害する危険もあります。手入れされていない空地についても、雑草等が生い茂って地域の生活環境を害すること等があります。
登記などで所有者の情報が分かれば、市町村や近隣の人などから所有者に対して善処を求めたり、場合によっては裁判によって実害の発生を防止したりすることになるでしょう。
所有者が不明の場合等は、費用の問題がありますが、不在者財産管理人や相続財産管理人の制度を利用して対応できるかもしれません。
現行の空家法について
空家等の問題については、平成26年に成立した「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)があります。
空家法は、地域住民の生命、身体、財産の保護や生活環境の保全、空家等の活用をするための法律です。
空家法では、市町村長に立入調査や著しく保安上の危険が認められる状態にある特定空家等に対する措置(助言・指導、勧告、命令、代執行)を認めています。
また、空家法は、空家や跡地の活用のための施策を市町村に努力義務として課しています。
しかし、空家法は、住民の生命等の保護というのを主な目的にしたもので、今回のニュースにある再開発を主目的とした法律ではありません。
空家対策に対する新法の動きについて
このたびニュースになっている立法の動きは、再開発という積極目的での空家や空地の活用を可能にしようというものです。
地方創成や災害復興などの名目は正当に見えても、具体的な内容がどう決まっていくのかについては注視していくべきでしょう。
財産権の保障は自由社会の基本となるものですから、所有者不明とされる空家等であっても、再開発ありきで進められるのではなく、所有者についての手続的保障が十分なされなければならないと考えます。
また、目先の景気や利便のために将来世代に負担となるような開発を促進するようなことになってもいけないと思います。
現行法の活用や改革もおこなうべき
新法によって空家等を活用する他に、現行制度の改革によって空家問題を解消することも検討されるべきです。
問題のある空家が生じるのは、利用価値がなく他に売却もできない建物・土地を承継してしまった人がいるというのも一因だと思います。
このような点については、相続の一部放棄や所有不動産の放棄を認めるとか、不要で処分困難な不動産を個人に押し付けたままにしない法整備も必要になるのではないでしょうか。
ただ、一方的な放棄を認めて不良不動産を国や自治体に押し付けるのも問題ですので、一定年数分の固定資産税相当額を支払って市町村に引き取ってもらう等の仕組みを検討すべきだと思います。
また、所有者不明の空家等が生じるのは、登記簿の情報が変更されないままになっているのも原因でしょう。
相続などで所有者が変更した際は、移転登記を放置しておくと金銭的負担が課されるとか、登記簿の情報の更新を促すような仕組みを考えるべきかと思います。
第三者が空家等を活用しやすくすることも空家問題の解決に有用だと思います。
第三者が所在者不明の空地や空家を買取・賃借したいと思っても、登記上の所有者から戸籍や住民票をたどって相続人を第三者が調査することは困難です。
土地や建物が社会にとっても有用な財産であることからすれば、その所有者の情報については、たとえば弁護士を通じて取得させるなど関係者のプライバシーに配慮する規制をしつつ、第三者が情報を取得できるようにすべきだと思います。
現に空家等で困っている住民や自治体はいるでしょうから、どのような内容でいつできるか分からない新法を待ってはいられないでしょう。
そういった住民や自治体は、権利関係や事実の整理・分析をして現行法での対応策を柔軟に検討してくれる弁護士に相談・依頼して早々に解決に向けて動いてみてはと思います。
(林 朋寛/弁護士)
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