持ち家の方でも知って得する省エネ住宅への大きな流れ

持ち家の方でも知って得する省エネ住宅への大きな流れ

省エネ住宅で補助金や税優遇制度が受けられる?

最近「エコリフォームはお得で快適」「ZEH(ゼッチ)でエネルギー収支改善」など省エネ性能をうたった住宅広告を見る機会が増えました。
耳慣れないタイトルですが「長期優良化リフォーム推進事業」「住宅ストック循環支援事業」「ZEH普及加速事業費補助金」など、省エネ住宅化への政策が進められ、住宅取得を考えている方にとって興味をそそる補助金、税優遇制度が盛り込まれています。
今回のコラムでは、それら政策の背景、方向性をひも解いてみましょう。

省エネ住宅を推進する背景

まず背景として、「空き家820万戸問題(空き家率13.5%)」「低調の既存住宅流通問題(既存住宅割合15%)」などがあります。
住宅ストックの有効利用が進んでおらず、平成28年3月閣議決定の新住生活基本計画においても「新たな住宅循環システムの構築」「質の高い住宅ストックへの更新」「コンパクトシティ化」などが目標として掲げられました。

さらに平成28年11月に批准しましたパリ協定約束草案では、2030年に家庭部門CO²削減39%(2013年比)を目標とし、住宅の省エネ化が新築・既存も含め、今後の課題となりました。
この39%削減は、オイルショック後に産業界が達成した省エネ化と同じような削減量に等しく、かなりドラスティックな転換が必要となります。

建築においては省エネ後進国の日本

低い既存住宅流通量の原因の一つとして、基本性能の低さがあると思われます。
特に断熱省エネ性能は低く、次世代省エネ基準(平成11年基準)を満たした住宅ストックは6%、新築住宅の現行省エネ基準達成率も50%程です。
自動車、家電の省エネ性能は世界をリードする日本ですが、建築物省エネ基準は、冬季に暖房が必要な先進国のなかで唯一義務化されていません。
建築においては省エネ後進国です。

ヒートショック対策を備えた省エネ住宅

徒然草第五十五段「住まいは夏を旨にすべし」のように、日本の住まいは夏の蒸し暑さ対策として、風通しの良さを大切にし、冬の寒さ対策は二の次でした。
しかし、低い室温は健康面に問題がでます。
厚労省研究班による「住宅内での年間ヒートショック関連死は19,000人」という報告もあり、室温管理は身近な社会問題となりうる状況です。
平成28年、29年と2年連続して、消費者庁から冬季の高齢者入浴事故に対する注意喚起も出されています。

イギリス保健省では冬季室内推奨温度は21℃とされ、16℃未満は健康障害リスクを抱えるという指針があり、性能の劣る住宅には改善命令が出されます。
日本では、オフィスなどの室温規制は17~28℃ですが、住宅は何ら規制が無く、部分間欠暖房という習慣が身についています。
「我慢で省エネ」ではヒートショック対策にはなりません。
皆さんは冬場の廊下や洗面室の室温を把握されているでしょうか?

省エネ住宅の重要性は今後高まることが予測される

省エネ性能改善策の一つとして、欧米で先行しています「性能の見える化」が日本でも進められ、平成28年4月より住宅もBELS(建築物省エネラベリング制度)が任意制度として始まりました。
家電製品と同じように住まいの燃費性能が★の数で表示されます。
燃費性能の良い住宅は、さほど料金を気にせず室温管理ができ、「新たな住まいの評価軸」となる可能性を秘めています。
さらに、平成29年4月から2,000㎡以上の非住宅建築物から省エネ適判義務化がスタートし、平成32年には住宅も義務化予定です。

国交省では既存住宅のイメージを向上させるため、平成29年夏を目安に、新耐震基準・インスペクション・瑕疵保険加入などの条件を満たした物件を「安心R住宅」(通称)とし、一定の性能を「見える化」する一歩前進した認定制度を計画中です。
しかし、既存住宅において新耐震基準・省エネ基準・バリアフリー基準の3条件を満たした物件割合はマンションで6%、戸建で3%しかありません。
長期優良住宅のように、メンテナンスを前提とし、長期利用を目標にした設計となっていない物件が大半です。

日本の建築基準は建築時の基準順守を定めており、基準改正後の性能適合を求めていません。
既存住宅を選択する場合、リフレッシュ工事の他に基本性能向上が必要となるケースも多くあります。
性能向上を後押しする補助金、税優遇だけでなく、「住まい方のマッチング」「ライフサイクルコスト」で新築と既存を比較することも重要です。

さらに、省エネ性能を満たす住宅にするには、業者選定が重要となります。
性能表示取得以外に気密、結露に対する設計配慮・部材標準化・施工品質管理など、目に見えにくい技術蓄積の見極めもポイントなり、専門家のアドバイスが必要となるかもしれません。

将来的に省エネ基準は高度化する可能性があります。
設備機器に比べ更新機会が少ない断熱性能は、基準より半歩先のスペックを求めていくことも賢い選択ではないでしょうか。

(屋形 武史/住宅コンサルタント)

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