【ここは法廷だゼ!】「傍聴人が法廷内をケータイで撮影」事件に見る報道と事実の食い違い
さいたま地裁で、1月23日に開かれたいわゆる〝婚活詐欺女〟と呼ばれる女性被告人(37)の裁判員裁判。ここでちょっとした事件が起きた。一般傍聴人が開廷中に廷内を撮影したのである。
裁判所のホームページにも探せば記載はあるが、裁判所は庁舎内、敷地内とも撮影は禁止されている。撮影が許されているのは基本的に裁判所の許可を得たものだけ。よくニュースで見かける、まるで静止画のような法廷内の映像は、裁判所から許可を得た報道機関が撮影したものである。また、ごくまれに裁判所内で裁判員制度のイベントなどが行われ、その際には法廷撮影が特別に許可されることもある。ただここ数年においては、そのようなイベントで撮影した法廷の写真も「ブログにアップしないで下さい」とお達しが出る。
とにかく裁判所は一般人が写真を撮る事についてはうるさく、ロビーで写メを撮ろうとしている若者に注意する職員さんを何度も見た事がある。庁舎内での撮影禁止については裁判所の庁舎管理規定に定められており、また法廷内の撮影については刑事訴訟規則で録音とともに禁止されている。
この事件が起きた法廷は、話題の裁判だからか、法廷警備員という裁判所の警備員が法廷内外に大勢はりついて傍聴人を監視していた。到底、事件など起こりようもない状況だったのであるが……。
「法廷警備員は、その傍聴人がケータイを取り出して撮影していたのを最初、ただケータイをいじってると勘違いしたみたいで、“しまってくださいね〜”と優しく言ってるだけでした。撮影に気づいてなかったみたいですね。その後誰かが裁判所に報告したのか、しばらくしてから裁判官が傍聴人全員に注意したんです。撮ったヤツは知らんぷりしてたけど、それ以外の傍聴人は真面目に傍聴してたのにヒドく怒られて、いい迷惑ですよ」(法廷にいた男性)
また報道によれば、撮影した傍聴人の携帯電話に画像は記録されていなかった、とあるが……。
「裁判所の説明はあいまいで、その傍聴人が画像を消すのを目の前で確認したのか、と聞いても、確認してない、とのことでした。本人が“消した”と言ったのを信じてるだけじゃないでしょうか」(同)
さらに報道によれば、「傍聴人の携帯電話は廷内に入る前に電源を切っているのを確認している」とあるが、これについても、
「そんなこと言ってますけど、当日は確認されなかったですよ」(同)
と、報道と実情はいくぶん異なっているようにも見える。ちなみに法廷警備員については、「廷内で、よく目を閉じている」「強面の男性にはめっぽう弱いのに女性には厳しい」など、その働きぶりについては常々ウワサにのぼる存在でもある。法廷警備員は本当にその傍聴人の撮影行為に気づいて注意したのか、疑問が残る。
いずれにしても、このようにひとりの傍聴人が問題を起こせば、その後のチェックが厳しくなる。コメントをくれた男性が言う通り、大多数の真面目な傍聴人からすれば、ただ迷惑でしかないのだ。
ただ一方、そもそもなぜ法廷内で撮影が禁止されているのか?という疑問は、誰もが持つものだろう。これについては裁判所のホームページに理由は記載されていない。そして撮影は禁止であるにもかかわらず、なぜ法廷イラストはオッケーなのか。これも気になるところだ。これらは近々、裁判所に問い合わせてみたい。
画像引用元:flickr from YAHOO
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
TwitterID: tk84yuki
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