オーストラリア住宅事情【前編】 陽気な国民性が家づくりにも!
テニスでは錦織選手たちが大活躍したオーストラリア。実は日本の住宅会社も続々と進出し、現地で活躍中なのだ。その現場を取材すべく、オーストラリアへ飛んだ。まずは、最大都市のシドニーを巡り、Aussie(オージー)の住まいを探訪してみた。
人口増が続く移民の国。カルチャー・ミックスは住宅デザインにも
空港からシドニー中心地に近づくと、建設中のクレーンがあちこちに見えてきた。
シドニー都市圏の人口は約460万人、この10年でシドニー市の人口は約30%も増えたという成長都市。今後もオーストラリア全体の人口2400万人が、年1~2%増え続ける予測。【画像1】入江を囲んで立つ高層ビル群、不動産バブルの勢いも感じる(写真撮影/藤井繁子)
英国からの移民に始まり、中国やベトナム・フィリピンなどアジア系、レバノン、インドやイタリア、韓国からの移住も多い。20011年時点で海外出生者の割合は約30%という多民族国家である。
シドニー市内の古い家並みでは……何様式??? 不思議なデザインの外観に、多様な文化を融合したオーストラリアらしさを実感。【画像2】都市部の敷地はオーストラリアでも小さめ。ワイルドな植栽が南半球っぽい(写真撮影/藤井繁子)
オーストラリアの住宅価格は、ここ3年高騰し続けシドニーでは住宅バブルの懸念も出ている。
とは言うものの、人口増加に伴う住宅ニーズは強く、シドニー市から50~60km離れた郊外に新興住宅地がドンドン開発中。1000~5000区画の大規模な宅地造成が次々に行われ、ファミリー向け新築住宅の分譲が続いている。40~50年前の日本、いわゆる“ニュータウン開発”と同じ光景だ。
郊外の新築分譲住宅では、敷地が約400~500m2に約300m2の建物で、計5000万円くらいのものが主流。
平屋も多いのがオーストラリアの特徴。どの家にも、車2台が並んで入るビルトイン・ガレージが道路側正面に付いていた。 【画像3】典型的な豪住宅デザイン。構造は、豪版2×4木造+レンガ積み(写真撮影/藤井繁子)【画像4】日本の住宅と似たシンプルモダン・デザインも見かけた(写真撮影/藤井繁子)
ディスプレイ・ホームで発見! オージー・ライフの必須アイテム
シドニー郊外で開発中の大規模住宅地には、ホームビルダー各社のディスプレイ・ホーム(日本で言うモデルハウス)が立ち並ぶ。最新の住宅デザインを見学してみた。 【画像5】ビルダー10社以上のディスプレイ・ホームが各社3~8棟と大規模! 展示後には分譲される(写真撮影/藤井繁子)【画像6】手前ダイニングエリアから奥リビングルーム、右手にキッチンと、LDKがワンルームなのは日本と似た間取りだが……(写真撮影/藤井繁子)
ディスプレイ・ハウスを何軒か見学して「これぞ、Aussieライフ!」と驚いたのが、裏庭に面したテラス。【画像7】左側のダイニングのようなエリア、彼らが【AL FRESCO(アルフレスコ) 】とイタリア語で呼ぶアウトドア・リビング(写真撮影/藤井繁子)
家の間取りによって、大小いろんな形状の【AL FRESCO】が見られた。 【画像8】裏庭(上)に面して、AL FRESCOはリビングルームやダイニングと一体化した半戸外の空間(写真撮影/藤井繁子)【画像9】裏庭から見たAL FRESCO、屋根有りとパーゴラの2段階バージョン(写真撮影/藤井繁子)
そして、何のためにAL FRESCOがあるかと言うと“BBQ”と決まっている!
家族の食事はもちろん、友人を呼んでBBQパーティーを催すのが、Aussieホームオーナーとしての憧れと言うこと。 【画像10】室内に大きなキッチンがあるのに、立派なアウトドア・キッチンがAL FRESCOにも備わっている(写真撮影/藤井繁子)【画像11】こんなロースターも!AL FRESCOはパパの居場所。もちろん、お肉はAussieビーフ(写真撮影/藤井繁子)
裏庭にプールを提案するプランも増えているようだ。
【画像12】米国のどデカイ、プール付き邸宅と言うより、日本庭園の池のようなWater Garden(写真撮影/藤井繁子)
道路からの家並みは「前庭が無くて、淋しい景観だなぁ」と感じていたが、この広い裏庭&テラス空間を見て納得。
外観の見栄えより、楽しみ=利用価値を取るオーストラリアの国民性が住宅にも現れていた。
子どものお迎えに定時の17時を待たず早々と帰宅するパパも多いらしく、働きすぎの日本人が見習いたい豊かな暮らし方だ。
自然を取り込むデザインがすてき、気密断熱は二の次
オーストラリアの住宅デザインを見てAL FRESCO以外にも、陽光や景色を室内に取り込む窓の使い方がうまいと感じた。 【画像13】キッチン前のワイドなFIX窓から、光が入り気持ち良い(写真撮影/藤井繁子)【画像14】隣家との目隠しには、アートっぽいフェンスを立てる工夫も(写真撮影/藤井繁子)
日本だと防火上できないかも……ガスコンロの奥は掃除も大変そうだけど明るく開放的。
リビングルームではFIX窓を上下に使ったデザインも。【画像15】TVの上と足元の壁がガラス窓、雨の日も面白い景色が見えそう!(写真撮影/藤井繁子)
ちなみに、オーストラリアの窓はほとんどシングル(単板)ガラス。日本の新築住宅はペア/トリプルと複層ガラスで省エネ性能を高めているが、断熱性能の規制はまだ厳しくないようだ。
耐震規制も日本とは違って緩いため、窓をあちこちに取り放題な設計。 【画像16】ランドリールームも大きなドアで明るい、アジア系の人は洗濯を外に干すのかも?(写真撮影/藤井繁子)【画像17】主寝室のバス洗面トイレはホテルライク。洗面の向こうはシャワーブース、右手の浴槽にも窓からの自然光(写真撮影/藤井繁子)
今回見学した住宅は、シドニーのビルダーWisdom Homes(ウィズダム ホームズ)社によるもの。ここでの注文住宅価格は、1700万円くらいの小ぶりなプランから、高品質な4000万円台のシリーズまでプラン化して販売していた。
実はこのWisdom Homes社、日本企業の住友林業グループ傘下に昨年仲間入りした。【画像18】ディスプレイ・ホーム前で、住友林業オーストラリアの角元社長とWisdom HomesのVitalone社長(写真撮影/藤井繁子)
今後も住宅市場が成長するオーストラリアには、住友林業はじめ日本の大手住宅メーカーが進出している。
[後編]では、そんな日本企業がオーストラリアでどのような事業を展開しているのか?シドニーとメルボルンでの現地レポートをお伝えします。
※1オーストラリアドル=85円で換算●取材協力
・住友林業●オーストラリア住宅事情 記事一覧
・オーストラリア住宅事情【前編】 陽気な国民性が家づくりにも!
・オーストラリア住宅事情【後編】 日本の住宅メーカーが続々進出!
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