偽ニュースに対する自己防衛

偽ニュースに対する自己防衛

偽ニュースが政治を左右する時代

昨年実施された米大統領選におけるトランプ氏の勝因について様々な意見がありますが、ネット上で拡散した偽ニュースもその一つの要因とされています。
今回の大統領選が非常に僅差だったこともあり、偽ニュースが選挙結果を左右したという意見もあります。
また、国内でもWELQなど様々なキュレーションサイトで盗用された記事や根拠不明で信頼性に欠く記事を次々と作成して掲載し続けた結果、サイトの閉鎖に追い込まれました。
昨今の偽ニュースの特徴は、GoogleやYahooなどの検索結果で上位に表示され、FacebookやTwitterなどのSNSで急速に拡散されることです。

ネット収入のための偽ニュース

事実と異なる内容がニュースとなることは以前からありました。
古くは、特殊な政治形態等に基づくプロパガンダ的な報道があります。
端的に言えば「大本営発表」の様なものです。
つまり、自国の状況に問題を良く見せるために事実を歪め、捏造したニュースです。
デマ情報も偽ニュースの一つです。
インターネットが普及して個人がブログやSNSで情報発信できるようになると、デマ情報も無視できない存在となったことは福島原発事故や熊本地震などの状況を見れば解ると思います。

しかし、昨今の偽ニュースは政治的なプロパガンダや、愉快犯的なデマ情報とは異なる特徴があります。
それは、経済的な理由で行われていることです。
つまり、偽ニュースを発信し、掲載することでWebサイトのページビューを稼ぎ、その結果当該Webサイトにおける広告収入やアフィリエイト収入を獲得することが目的なのです。
とにかくセンセーショナルな見出しを掲げ、検索エンジン最適化(SEO)手法を適用して文字数を増やし、検索頻度の高いキーワードをちりばめた記事をひたすら作成し続けます。
記事内容の正確性は関係ありません。
必要なのはGoogleなどの検索エンジンの評価を上げることです。
そのため、誰もが目にする場所に注目されるタイトルの偽ニュースが頻繁に表れるのです。

偽ニュースが信じられる理由

偽ニュースは何故信じられるのでしょうか。
それは偽ニュースが全くの虚偽ではないからです。
偽ニュースはページビューを稼ぐSEO対策が行われているため、実際に流行しているキーワードや話題が多数含まれています。
しかし、それらをつなげると事実と異なる、時には相反する内容となります。
こうした偽ニュースが「こういうニュースが読みたい」という心情の読者に受け入れられてSNSで拡散されてしまうことで、より多くの人々に事実と認識されてしまいます。以前は当事者や有識者が事実確認の結果を公表すれば鎮静化できましたが、昨今のSNSの拡散速度はその余裕を与えてくれません。
逆に偽ニュースが拡散した後での事実確認は、偽ニュースの信頼性を高める効果もあるようです。

疑わしいニュースには「裏を取る」

それでは、こうした偽ニュースに惑わされないためにはどうすればいいでしょうか。
偽ニュースを拡散させたと批判されている米Facebookは、怪しいニュースに対するレポート機能を追加する等の対策を検討しています。
しかし、行き過ぎた対策は検閲にもなりかねないため、注意が必要です。
私たちにできることは自らが検証を行うことです。
内容にもよりますが、疑わしい記事には別の情報ソースを使って相違ないか確認することが重要です。
検証と言っても、キーワードをネットで検索し、対象ニュースと関連性の無いサイトなどを確認する程度で十分です。
最近、報道やビジネス活動で「裏を取る」ことがおろそかになっているように感じます。こうした活動を習慣化することで「裏を取る」癖がつき、さらに自分の視野が広がる効果があると考えます。

(金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント)

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