プログラミング教室活況 でも小学生に必修化は必要?

プログラミング教室活況 でも小学生に必修化は必要?

2020年小学校でプログラミングの授業が必修化に

2020年より日本でも小学校でプログラミングの授業が必修化される見通しとなりました。
これに伴って、コンピューターのプログラミングを子どもが楽しみながら学べるという民間の教室が増えているようですが、これからは小学生がプログラミングを必ず身につけなければならない時代になっていくのでしょうか?

プログラミングが必修化される背景としては、国際的な流れだということと、さらに、将来的にIT人材が不足するという予測に対して、早い段階からIT人材を育てて対応していこうという意図があるようです。
AIやIoTに代表されるようなIT化がこれからも拡大していくなかで、総務省は2025年までにIT人材を新たに100万人育成する、という計画を立てていますので、そのための政策の一環とも言えるでしょう。

今後世界的にIT人材が大幅に不足することが予測される

他国の例を見ていくと、特に先進国では「将来に向けてIT人材が大幅に不足する」という状況はどこも似ているようです。
既にアメリカやイギリス、シンガポールなどでは小学校からプログラミングが必修になっているところも多く、日本もその流れに追いつこうとしているとも言えます。
現にイギリスでは、11歳と12歳の子どもたち全員に「micro:bit」という小型で非常に単純なコンピューターユニットが無料で配布され、自由にプログラムを組んだりいろいろな実験をしたりできるような環境が用意されています。

小学生からプログラミングを必修化する意味はあるのか?

これからも、AIやIoTはより進化し、発展を遂げていくと予想されますが、小学生からプログラミングを必修化するメリットはどこにあるのでしょう?
そもそもプログラムというのは、コンピューターに何か仕事をさせるときに使う命令の手順書のようなものです。
プログラムで使われる言語は様々な形式がありますが、全てのコンピューターはこのプログラムによって動いており、その動作の基礎となるものです。
プログラムは基本的に時系列に処理されていくので、それを学ぶことによって論理的かつ順序だったものの考え方が身につくと言われることもありますが、それはプログラミングでなくても身につけられるのではないでしょうか。

私も長い間IT業界を見ていますが、実際の現場で必要なのはプログラミングのスキルだけではありません。
システムを作る過程においても、まずはお客様に対して現状の課題や実現したいことのヒアリング・分析をして、それを元に充分に設計を行わないとよいシステムはできません。
よくシステム開発は建築に例えられますが、その場合プログラミングを行うプログラマーは大工の役割と言えるでしょう。
設計士が施主の希望を聞き、それを元に適切に設計したものをスキルを持った大工が施工して初めてよい家が完成するのと同じで、設計が不十分なものはいくら優秀なプログラマーが手がけてもよいシステムはできません。
社会にはいろいろな役割があり、いろいろな職業があります。
子どもたちの将来の選択肢の一つとしてプログラミングを経験させるのはよいことだと思いますが、必修化して全員に学ばせるというのは少々違和感が残ります。

2025年に向けた目標やIT化のさらなる発展、人口の減少などを考えるとプログラマーを含めたIT人材の育成が必要であることは理解できます。
しかしながらこれから英語の必修化も始まりますし、子どもたちは学ぶことがいっぱいです。
ここにプログラミングの授業も入ってきたら、結果的に何か他の授業を減らすことになるでしょうし、そもそも全ての子どもたちがプログラミングに興味を持つとも思いません。
さらに教える側の教員のスキルをどのようにつけていくかという課題も残ります。
そのため、小学生のうちはもっと基礎的な学力やコミュニケーション力を習得させることに専念し、プログラミングは興味を持った子に対して選択制で提供すればよいのではないかと個人的には思います。

(目代 純平/ITコンサルティング、ITコンシェルジュ)

関連記事リンク(外部サイト)

プログラミングが育む創造力と期待される成果について
小学生の人気職業上位に入る最近話題のユーチューバーとは?

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. プログラミング教室活況 でも小学生に必修化は必要?
JIJICO

JIJICO

最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。

ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。