【集中力up】そもそも脳はマルチタスクに非対応なのです
「睡眠と脳」の関係を解明し、よりよいビジネスライフを送るためのヒントを探る連載の3回目です。
今回は、ビジネスパーソンなら誰もが気になる記憶力、集中力を高める方法。そして、連休ボケ、時差ボケの解消法など、今すぐ使える情報をご紹介します。
聞き手:大野恭希(healthy living)
識者:作業療法士 菅原洋平氏 (ユークロニア株式会社)
就寝1時間前を有効に使う記憶術
——ビジネスが加速していく環境の中、短期間で新しい情報を収集して使えるように記憶力を高めるためのアクションにはどんなものがあるでしょうか?
菅原:人間は深い睡眠状態の時に出るデルタ波で記憶の定着が行なわれています。
ノンレム睡眠時(ぐっすりと深い眠りの状態)の脳波に見られる、紡錘波(ぼうすいは)という脳波があるんですが、その脳波を出す時に、記憶を一時的に貯めた海馬と側頭葉というところを連続して接続しています。データをUSBからクラウド上に保存していくみたいな役割をしているのです。
つまり、この「海馬と側頭葉を連続して接続する状態」をたくさん作れば、記憶定着には良いということです。
シンプルな情報として覚えたい場合は、眠る直前に覚えた情報が一番クリアに記憶することが可能です。理由は明快で、「あとは寝るだけ」の状態は、起床までに他に入ってくる情報が無いからです。
ですので、就寝前の1時間で「これは覚えておきたいこと」を、ちょっとだけ見て、寝る、みたいな感じにすると良いでしょう。
では、深い睡眠状態をどう作るか?という話ですが、オススメなのは「入眠1時間前のお風呂」です。入浴して体温を上げて、その後、頭から足先まで放熱し、体温を急激に下げると、深い睡眠をとりやすくなります。私が受験生に指導しているのは、お風呂から出た後の1時間で学習して、すぐに寝るという方法です。
他には「12時間の原則」というのがあります。一度情報を脳に記憶させてから、一定の時間があいたところでもう一度同じ情報が記憶されると、脳はその情報が自分にとって必要なものだと認識するのです。
記憶は、電線に電気が走るのと似ています。脳では、電気が走らない電線は淘汰されていくので、一度電気を走らせてもう一度電気を通らせれば、これは必要な情報だと認識されるのです。
夜覚えたことを朝にもう一度ちょっとだけ見る。午前中学習したことを夜寝る前にちょっとだけ見る……それだけで記憶の「線」がぐっと強くなるのです。
集中するためには脳をシングルタスクに
——一番シンプルに、脳の効率を良くする、集中力をあげるにはどうしたらいいのでしょうか?
菅原:「意図しないものを見せない」ことが一番簡単ですね。いわゆるシングルタスクです。
作業しているときに、次の仕事の付箋が目に入ると、受験勉強している人に次の教科を見せているようなものです。それってすごく気を散らせることですよね。
目から入った情報が脳に伝わることで、目の前の作業効率は下がります。脳は視界に入るもの全てをキャッチして分析を始めるので「見せない」っていう環境を意図的につくることが重要です。
机に上にスマホも置かない。マルチディスプレイ環境であればモニターを切ってしまう。とにかく「見える」っていう状況を作らないで、1個済ませたら、次のもの、次のものへと進めて行く方が、効率は上がります。
——マルチタスクは効率重視には向かないということなんですね。
菅原:複数の画面で、メールをチェックしながら作業すれば、連絡がきたらすぐレスポンスできる……という発想だったと思うんですよ。
しかし、そのメールレスポンスってすぐに対応したところで成果があるのかって考えると、そうでもないものも多いですよね。
効率を上げるという観点からすると、仕事を1つ終わらせて次に移る。つまり、シングルタスク化してどんどん進めた方が成果が見込めます。
マルチタスクができる人の方が優秀、みたいな変な先入観があるんですけど、そもそも脳はマルチタスクに非対応なのです。
連休ボケ・時差ボケを最小限に抑える方法
——時間の修正方法で悩まれてる方も多いと思います。例えば、連休中に平日との睡眠時間がズレてしまう、いわゆる「休みボケ」を修正する場合にはどうしたら良いでしょうか?
菅原:食事のリズムをコントロールすることで、連休明けの休みボケを修正する方法があります。休日最終日の夕食をものすごく早く終らせて、そこから絶食し、月曜日の朝食をしっかり食べると、朝からハイパフォーマンスになりやすいです。絶食から起床までを10時間以上空けるのが理想ですね。
——それは、海外に行くことによる時差ボケでも有効ですか?
菅原:はい、時差ボケ解消法にも有効です。
海外出張の場合、例えば現地時間の夜に着いて、それから現地スタッフと飲み会がある時は、その食事はパスして、翌日の朝食にガツっと食べると、リズムが修正されます。
こういった絶食を活用する考え方を持っていただくと楽になると思いますね。
——以前ヨーロッパへ行ったんですが、帰国後1週間ぐらい時差ボケで悩んでいました。
菅原:ヨーロッパからアジア、あるいはアジアからアメリカ方面など東向きの飛行だと時間の流れに逆行するのでリズムを作るのが難しくなります。
他に時差を修正する方法としては、「アンカーミール」という「現地時間と同じ時間に食事をとる」方法も有効です。
アンカーとは「錨」の意味です。渡航先の朝、昼、夜に当てはめて錨を下ろすように食事をとるわけです。そうすると体内のインシュリン準備状態が固定できるので、時差の影響を最小限にできます。
あとがき
菅原洋平さんの睡眠・食事を意識した脳の活用方法は、少し意識をするだけで今からできることばかり。特に記憶力と集中力の高め方は、早速実践しようと思います。すぐやるって大事ですよね。
こういったより良い人生を送るための情報をhealthy livingでは定期的に発信しています。よろしければご覧下さい。
それではまた次回!
<識者プロフィール>
【菅原洋平】作業療法士。病気になる前に役に立ちたい!働く人たちの脳を活性化して病気を予防するビジネスプランを考案。2012年4月にユークロニア株式会社を設立。
取材・文・撮影:大野恭希(healthy living)
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