モバイル向け『Flash Player』は次期版の11.1で今後の開発を終了 アドビが正式発表
昨日、米『ZDNet』がリーク情報として報じていた「アドビ システムズがモバイル用に提供している『Flash Player』の開発を終了する」というニュースについて、アドビは自社ブログ『Adobe Featured Blogs』のエントリーで正式に開発終了を発表しました。
エントリーのタイトルは「Flash to Focus on PC Browsing and Mobile Apps; Adobe to More Aggressively Contribute to HTML5」というもので、Flashは今後モバイル向けには『AIR』により書き出したアプリを動作させることに注力し、モバイルのブラウザで動作するコンテンツにはHTML5が最適と考え投資していくという内容。同社副社長でInteractive DevelopmentのゼネラルマネージャーであるDanny Winokur氏が執筆しています。
Flash to Focus on PC Browsing and Mobile Apps; Adobe to More Aggressively Contribute to HTML5(Adobe Featured Blogs)
http://blogs.adobe.com/conversations/2011/11/flash-focus.html[リンク]
モバイルブラウザ用にAndroidとBlackBerry Playbookで提供する『Flash Player』は、次期版の『Flash Player 11.1』を最後にリリースして、以降登場するチップセットやブラウザ、OSのバージョンに向けた開発はしないとあります。『Flash Player』が動作する既存の端末でのバグ対応やセキュリティのアップデートは継続していくとのこと。アドビがソースコードをライセンスして、第三者が『Flash Player』の機能を開発する可能性にも言及しています。
Flashプラットフォームは今後、パソコン(PC)のブラウザで動作するウェブアプリケーション向けにハードウェアアクセラレーションを利用した3Dゲーム、コンテンツ保護機能を持たせたHDビデオなどHTML5に先行した機能を強化。モバイルではアプリの形態でiPhone、Android、BlackBerry Playbook上で動作するというすみわけをしていくことになります。
HTML5分野では、FlashからHTML5形式で書き出す機能を提供するほか、HTML5でFlash同様の機能が実装されるように、ウェブ標準化団体のW3Cやブラウザエンジンの『Webkit』と協業していくとのこと。
この背景として、モバイル端末上のブラウザでFlashコンテンツを動作させるには、PC用のコンテンツをそのまま提供するのではなく、モバイル用にカスタマイズが必要になること、ブラウザ上での動作はアプリと比べてパフォーマンスが出ないことがあるようです。Winokur氏の発表後、FlashランタイムのシニアプロダクトマネージャーのThibault Imbert氏、ゲームデベロッパーエバンジェリストのLee Brimelow氏らがブログでこれら要因について触れています。
Focusing(Adobe AIR and Adobe Flash Player Team Blog)
http://blogs.adobe.com/conversations/2011/11/flash-focus.html[リンク]
Flash to Focus on Apps for Mobile(Leebrimelow.com)
http://blogs.adobe.com/conversations/2011/11/flash-focus.html[リンク]
Brimelow氏は8月のガジェット通信のインタビューで、モバイルのゲーム分野でのウェブアプリケーションとネイティブアプリケーションの違いについてこう語っています。
モバイルでウェブベースのゲームを作るのは難しいです。パフォーマンスがあまりよくないですからね。これはFlashでもHTMLでも言えることです。モバイルデバイスでブラウザを見るのは、アプリと比べて再生スピードが遅くなります。
開発者は、アプリの方がより優れたユーザー体験を作ることができます。パフォーマンスがよいですし、ユーザー体験を100%開発者がコントロールすることができます。
「HTML5 vs Flash の抗争にすればページビューが稼げるんでしょう」 アドビのFlashプラットフォーム担当者が“HTML5”と“ゲーム”を語る
https://getnews.jp/archives/140401
この先HTML5が進化しても、ゲームのようにリアルタイムにインタラクティブ性が求められるコンテンツはモバイルのウェブアプリケーションには向かないのかもしれません。アドビの寄与でHTML5にどのような進化がもたらされるのか、また『AIR』がどのように進化していくのか、今後が注目されます。
宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
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