【上を向いて、口ポカーン】前向きになれない人のための『イヤなことをすぐに忘れる技術』

【上を向いて、口ポカーン】前向きになれない人のための『イヤなことをすぐに忘れる技術』

プレゼンで失敗した。上司に叱られた。パートナーと喧嘩した。早く気持ちを切り替えて残りの仕事を片付けなければならないのに、どうしてもイヤなことが頭から抜けない。イヤなことが常に頭を渦巻く現象は、誰にとってもイヤなもの。

世の中には、イヤなことがあったとしても、すぐに忘れられる人と、そうでない人がいる。考えてみれば、すぐに忘れてしまう記憶と、ずっと覚えている記憶があるのも不思議だ。イヤな記憶をすぐに忘れることができたなら、悩み事や気分に翻弄されることなく、仕事の生産性もあがるに違いない。

今回は、『イヤなことを忘れる技術』(石井貴士/きずな出版)より、忘却術をご紹介する。

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脳の中でイヤなことを繰り返さない

脳は繰り返されたものを重要だと認識し、記憶に定着させる特性がある。たとえば、何度も流れているテレビのCMや、何度も繰り返し言われる言葉というのは、なかなか忘れない。

と同様、多くの人がイヤなことを忘れられないのは、何度も頭の中でイヤなことをリフレインしてしまっているから。イヤなことを忘れるためには、「脳の中で繰り返さない」ことが重要になってくる。

イヤなことをイメージから押し出す

とはいえ「脳の中でリフレインしない」ことを実行するのは至難の業。まず、それを実行に移すためには、脳のメカニズムを知ることから始まる。脳の記憶には、下記の2つがある。

1.英単語や歴史モノなど、単純に反復しながら覚える「単純記憶」

2.歴史の年号や古文単語など、語呂合わせ等で刷り込む「イメージ記憶」

さらに、イメージ記憶には、エピソードがあるものとエピソードがないものがあり、多くのイヤな記憶は、「上司に怒られたシーン」「好きな人にフラれたシーン」といった、エピソードのあるイメージ記憶。それが定着して落ち込む要因となってしまう。

エピソードがあるイメージ記憶の中にも、自分が当事者であるものと、自分が当事者でないものがあり、自分が当事者であるもののほうが、より鮮明に脳裏に残る。つまるところ、「エピソードがあって」「自分が当事者である」「イメージ記憶」が、最も記憶に残りやすいのだ。たとえば、上司から怒られて、イヤな思いをしたという場合、当事者が自分になっていると、イヤな気持ちをズルズルと残してしまう。

イヤな気持ちを打ち消すためには、「自分が当事者である」エピソードを「自分が当事者でない」エピソードに上書き保存するとよい。たとえば、自分が上司に叱られているシーンを思い浮かべてしまう場合、両者とも動物に置き換え、動物同士の格闘をイメージする。その瞬間、イヤな気持ちは消える。自分を当事者から外し、違うエピソードに置き換え、違うイメージとして定着させ、「イヤな気持ち」を「どうでもいい気持ち」へ変換させるのだ。

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決めつけ癖をなくす

心理学の論理療法では、「ABC理論」が存在する。

A(affair) 事象、出来事

B(belief) 信念、受け止め方


C(consequence) 結果

人によって同じ出来事(A)が起きても、その後の結果(C)が変わってくるのは、信念(B)が違うからだ。たとえば離婚して、「自分はパートナーから捨てられた。ダメな人間だ」と思う人は、ひたすら落ち込む日々が待っている。しかし、「これから独身生活をおう歌するぞ!」と思う人は、さまざまな出会いの場を楽しむことができる。このように、結果(C)は、信念(B)によって変わってくる。

信念(B)には、2つあるといわれている。

1.ラショナル・ビリーフ(合理的な信念)

2.イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)

多くの人は、非合理的な信念があるから、落ち込んでしまう。たとえば「自分はダメな奴だ」「自分にはチャンスがない」などの決めつけがそれにあたる。人は「決めつけ」があるところに、「裏切られた」という気持ちが芽生えるため、決めつけを多くしていればいるほど、人生において落ち込む回数が増えていき、さらには時間を無駄にしてしまう。

落ち込むのをやめたいなら、まずは決めつけ癖をなおすこと。「財布は、落とさないものだ」と思っていたら、財布を落とした際に落ち込むが、「財布は落とすものだ」と思っていて、キャッシュカードやクレジットカードを別のところに入れておけば、落としたときのショックは緩和される。「そうかもしれないが、そうではないかもしれない」と考える習慣をつけると、落ち込み癖がなくなる。「常に~でなければならない」という完璧主義者の思考回路も、落ち込み癖とセットとなる「イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)」のため、合格ラインは65点、満点は78点くらいの気持ちでいよう

イヤなことを1分で忘れる方法

イヤなことを記憶に残さないためには、イヤなことがあったその瞬間に処置しておくのも効果的。ここではイヤなことが起きたとき、すぐに実践できる対処法を2つご紹介。

1.口を開けて上を向く

人は1日に「4万5千回」も「自分には無理だ。できない」と考えているといわれている。1日に4万5千回も考えては否定するというサイクルを繰り返しているのである。いったん何も考えない状態に戻すには、上を向いて、口をぽかんと開けるポーズを取ってみよう。うつ病の研究では、うつ病になる人の特徴は、いつも下を向いている人であることがわかっている。逆に言えば、いつも上を向いていたら、マイナス思考に陥りにくくなり、一瞬で思考をゼロベースに戻すことができる。この行動を条件反射でできるようになれば、落ち込み癖から解放され、イヤなことがあってもすぐに前向きになれる。

2.紙にイヤなことを書く

イヤなことがあったら、いまあった出来事を紙に書いて、丸めてゴミ箱に捨てる。紙に書くことは「思考の外部化」といわれる作業。自分の頭の中だけで考えていると、ぐるぐるとマイナス思考が回り続けるため、いったん自分の頭の外にイヤなことを出す。すると頭の中にあったモヤモヤが紙の上へと移るため、頭の中からイヤなことが消えるのだ。痛みに対して身体の中ではなく、外に出て行ってしまうというイメージをつくることができる。

多くの人は、イヤなことがあると、その場でマイナス思考のスパイラルにはまってしまう。負のスパイラルに入らないためにも、記憶のメカニズムを知り、瞬時にイヤな思考を頭の外に押し出す習慣を身につけよう。

文・写真 山葵夕子

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