【WWDC2016】Appleの変わらないところ --「for the rest of us」

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「The computer for the rest of us」

この言葉、きっとご存知の方も多いと思います。
マッキントッシュが出た当時は、パソコンは専門家が使うもの「The computers for the specialist」でした。それに対抗する形でマッキントッシュの広告に出てきたのがこのフレーズ、「The computer for the rest of us」です。専門家のためではなくて、それ以外の普通の人のためのコンピューターだよってことですね。
この言葉、iPadが出たときもよく記事などに掲載されてました。この場合は「パソコンが苦手な人でもデジタルエンターテイメントを享受できるデバイスだよ」という感じの扱われ方ですね。僕はマッキントッシュが出たころはまだ鼻水垂らして幼稚園で遊んでたので、このフレーズはこれらのiPadの記事によって知りました。
この言葉を聞いたとき、「なるほど、Appleとはこういう会社なのか」と膝を打ったのを覚えています。

衝撃だったAppleのデバイス

iPhoneが出た頃、僕はPDAを使っていました。日本ヒューレットパッカードのh2210、遊べて仕事もできる素晴らしい端末でしたが、お世辞にも世間の人が使えるものとは言えませんでした。頻繁にWindowsと同期しなければいけないし、電池が切れたら中身もまっさらになってしまうし、使いやすくしようとしたら色々弄らなくてはならない、電池蓋は壊れやすい、必要なファイルはネットから見つけ出すか、見つからなければ自分で書かなくてはならない、典型的な「for the specialist」な端末です。でも僕はそれ自体楽しんでました、他の人には使えないものを使っている満足感もありました。
でもiPod touchを興味だけで買ったその日から、それはお蔵入りになってしまいました。
誰にでも使えるインターフェイス、薄くて軽いボディ、快適で軽快な動作、整理されたAppStore…。それはまさに「for the rest of us」な端末だったのです。衝撃でした。

マッキントッシュのときも、iPod touchのときも、iPhoneのときも、iPadのときも、やっぱりAppleは「for the rest of us」でした。
よく覚えているエピソードがあります。ある視覚障害を持つ方がiPhoneを買おうとしたとき、Apple Storeの店員さんに「タッチインターフェイスは視覚障害を持つ人には使えませんよ」と言われたそうです。でもAppleの理念を知っているこの方は、店員さんの前でボイスコントロールや読み上げ機能を「見つけ出し、披露して」店員さんを驚かせたそうです。
いまや一般の人は簡単にスマホやタブレットでエンターテイメントを楽しむことができるようになりました。でも、それができない人もいます。両手が不自由である、耳が聞こえない、目が見えない…新しい形での「the rest of us」が存在します。Appleはその人たちのために端末をより深く作りこむことを続けているのです。
これがAppleらしさのひとつだと、僕は思います。

WWDC2016もやっぱり「for the rest of us」だった

そう考えると、今回のWWDCもやっぱりAppleなんだなぁ、と感動さえしました。各OSの作り込みもそうですが、Apple Watchが車椅子対応したこと、siriやホームキットの強化はまさに「for the rest of us」ではありませんか?
Apple Watchほど、健常者であってもそうでなくても使えるヘルスケアデバイスはあったでしょうか。または、もう少し範囲を広げて、医療用のデジタルデバイスで、Apple Watchほど身近で分かりやすいものはあるのでしょうか。必要に応じてアプリを追加でき、場合によっては遠隔でモニタすることさえできる…。寡聞ながら、僕はそれを知りません。
ホームキットに関しては、残念ながら僕は対応した機器を持っていないのでなんとも言えない状況です。でもきっと、Appleは the rest of us に配慮したものを作り上げるでしょう。

きっと、今回のWWDCは新製品が発表されなかったこともあって、メディアでは微妙な反応をするところもあるでしょう。僕もいくつかの記事を読みましたが、やっぱり好印象ではなかった人もいたようです。
でも、毎回毎回、新しいデバイスを出すことが「Appleらしい」と言えるのでしょうか?僕はOSの作り込みや、デバイスの裏に読み取れる意思こそがAppleをAppleたらしめていると感じています。新しいデバイスや、目に見えて分かりやすい挑戦をしないからといってAppleが停滞しているとか、守りに入ってるとは思えないのです。
むしろ、不必要に手を広げるのではなく、目立たないところを作り込むのを止めない姿勢こそ、Appleが停滞していない証拠なのではないでしょうか。

※画像はApple公式のストリーミング放送のスクリーンショットから

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