時間のムダを減らし、業務を効率化するために見直したい4つのポイント
女性活躍推進を背景に「ワーク・ライフバランス」の整備に取り組む企業が増えています。労働時間の削減も課題の一つ。人事評価の面でも「時間当たりの生産性」を重視する方向へと動いています。仕事を効率的に進めるスキルが、より必要とされるようになってきました。では、仕事を効率化するために、何から手をつければいいのでしょうか。
そこで、「働き方の見直しコンサルティング」を手がける株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタント、永田瑠奈氏に、個人で取り組める効率化の方法を教えていただきました。
見直すべきポイントは4つ。「時間の組み立て方」「スキマ時間の使い方」「オフィスでの動線」「職場コミュニケーション」です。
1.時間の組み立て方を見直す
まず朝の就業前に、1日の予定を組み立てます。「10:00~11:00 打合せ」「11:00~11:30 Aさんに資料作成のレクチャーを受ける」など、30分単位で時間とともに仕事を組み立て、それぞれの所要時間を朝のうちに予測しておきます。
そして、終業後、予測と比べてどうだったのかを振り返ります。長引いた場合は、なぜそうなったのかも検証。すると、「上司に相談して判断しなければならなかったが、席を外していたので待っていた」「問い合わせのメールが来たので手を止めて対応した」など、予定が乱れる要因をつかむことができます。
これを毎日繰り返すことで、自分が時間をどのように使っているかを客観的に分析、理解できるように。「上司に相談するならこのタイミングで」「この時間帯は電話が入りやすいので集中力が必要な仕事はしない」「この作業はこの時間帯のほうがはかどる」といったように、ムダなく仕事を組み立てられるようになるでしょう。
まずは、自分の傾向をつかむため、予定と結果を検証する作業を「筋トレ」のつもりで続けてみてください。
2.スキマ時間の使い方を見直す
勤務時間中、「打ち合わせが早く終わって次のアポイントまで少し時間がある」など、空き時間ができることがあります。こうした10分~30分程度の「スキマ時間」を有効活用することで、労働時間の短縮を図ることができます。
多くの人は、空き時間ができた段階で「じゃあ、何をしようか」と考えます。すると考えているうちに時間が過ぎ、せっかくの空き時間をムダにしてしまうことに。そこで、あらかじめ「スキマ時間ができたらやること」をリストアップしておくことをお勧めします。
例えば、スキマ時間にやることを、1つの作業につき1枚の付せんに記し、手帳の裏表紙などに並べて貼っておきます。スマホのメモ帳アプリに入力しておいてもOK。このとき、その作業にかかる所要時間も書き添えておくといいでしょう。そうすると、10分のスキマ時間ができたときにリストに目を通し、「10分あるからこれを片付けられる」と即座にとりかかることができます。
外出が多い人であれば、「歩きながらできること」をリストに加える手も。「○○社に電話する」「**のプランを考える」「プレゼンのシミュレーションをする」など、歩きながらできる仕事は結構あるものです。
3.オフィスでの動線を見直す
仕事中、「ムダに過ごしている時間」があるとすると、その多くは「探し物をしている時間」だと言われています。目当ての資料が見つからず、ファイルや引き出しのあちこちをゴソゴソ…で時間をムダにしてしまうというわけです。
そこで、紙の資料の場合は、一旦すべてを外に出して、「よく使うもの」「ときどき使うもの」「普段は使わないがいずれ使うかもしれないもの」「使わないもの」の4段階に分類します。そして、それを使用する場面での「動線」を想像し、置いておく場所を決めてください。例えば、よく使うものはデスク上のファイルボックス、たまに使うものは引き出しの手前、あまり使わないものは引き出しの奥、というように。
よく使うものについては、出して戻す際、ファイルボックスの「一番右」に差し込む習慣をつけるのもおススメ。再度使う際には、ファイルの右側を探ればすぐに手に取れます。使用頻度が低いものは次第に左側に集まるので、どこかのタイミングで引き出しに移すか処分するかの判断をしましょう。
人は、手に持ったものをどこにしまえばいいかわからないと、とりあえずそのあたりに置いてしまうもの。結果、必要になったときに探す時間をムダにしてしまいます。どこに置くかを決め、そこに置くことを習慣づけておけば、探す・出す・戻すの「動線」を最短化することができます。
なお、デスク上に積んであった書類のうち、使用頻度が低いものを処分したりしまったりしたところ、隣や向かいの人と会話や相談がしやすくなり、それも効率化につながった…という事例もあります。
4.職場コミュニケーションを見直す
仕事の効率化を図ろうとするとき、時間の使い方やツールの使い方に目が行きがち。しかし、それ以上に大切なのは、一緒に働く人たちとのコミュニケーションです。
ある会社でこんな事例がありました。女性メンバーが重要なプレゼンを終え、「うまく伝えられなかったのでは」と落ち込んでいたとき、彼女の上司の男性は元気づけようとして「○○って言ってたけど、何だよあれ」と明るく笑い飛ばしました。女性メンバーは「やっぱり私はダメなんだ」とショックを受けて心を閉ざしてしまったそうです。そうして、会話も相談もろくにしないまま1週間。その後、話し合いの場を持ったことで、女性は上司が本当は出来栄えを評価していたこと、ふざけて笑いに変えることで気分を晴らしてあげようとしていたのだと理解しました。
ちょっとしたコミュニケーションのミスによって、女性は「悩む」という時間のムダ遣いをし、仕事の効率を落としてしまったわけです。
一緒に働くメンバー同士、あるいは上司と部下同士がお互いのキャラクターや考え方などを理解し合えていない状態、つまり心に距離がある状態だと、相手が何気なく発した一言にも「どういう意図だろう」「何か裏があるのかな」などと勘繰ったりします。相談したり協力してほしいことがあっても、「嫌がるかな」「どう頼めばいいだろう」と悩んだりもします。相手を説得するために本来必要ない説得材料を用意するなど、本来の目的に対して遠回りになるような行動をとることも。そうした時間はまったくのムダです。
お互いに心地よいコミュニケーションを取れる関係を築ければ、ムダな時間の発生は抑えられます。相手を変えることは難しいですが、自分を変えることは簡単。古くからの友人との会話では、少し話せば全てを感じとってくれたという経験は誰にでもあると思いますが、相手が心を開いて、何でも話してもらえる関係になれれば、たくさんの言葉を並べて伝えなくても、少しの言葉で伝えたいことを伝えられるようになっていきます。日頃から相手を思いやる言葉がけをするだけで、相手との距離は確実に縮まっていきます。
とはいえ、目の前の仕事に追われていると、業務に必要なこと以外のコミュニケーションを積極的にとれないもの。そこで「スキマ時間」を活用してください。例えば、オフィスで空き時間ができたら「何か手伝うことある?」「あの案件どうなった?」と声をかけてみる。外出先で電車を待っている間、スマホやモバイルから「プレゼンどうだった?」とメッセージを送ってみるなど。
「こう言ったら、相手はどう感じるだろう」を想像しながら、相手のモチベーションが上がるような言葉がけをしてみてください。コミュニケーションが円滑になり、お互いのモチベーションが高まれば、確実に仕事の効率は高まります。
永田瑠奈氏/ワーク・ライフバランス コンサルタント
大学卒業後、福利厚生代行サービス会社に入社し、営業部に配属。同年入社の新入社員の中で最速受注、最高額受注、最高達成率の実績を挙げる。大手~中小企業に対するワークライフバランスの推進に取り組む一方、自社に対しても業務効率化に関する仕組みを提案し、残業削減に寄与する。
女性がいきいきと働く職場環境づくりの必要性を感じ、2012年、株式会社ワーク・ライフバランスに参画。若い女性たちのキャリア支援セミナーから管理職向けのマネジメント研修まで幅広く担当。きめ細やかな対応やプロジェクトマネジメントスキル、相手に合わせたコミュニケーションやフィードバックスキルに定評があり、講演・コンサルティングともにリピート率が高い。
EDIT&WRITING:青木典子
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