白金触媒式カイロって何?

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そろそろ寒い季節の到来と言う事で、今回は冬のアウトドア必須のアイテムである白金触媒式カイロを紹介します。どう~ですか~? この懐かしいというかレトロというか一周して可愛いアイテム。
まず懐炉(カイロ)と言えば“使い捨てカイロ”が昨今の主流ですが、それまでは白金触媒式カイロが主流でした。
すでに白金触媒式カイロを知らない世代も多いと思うので、ここで軽くカイロの歴史をつづってみましょう。

カイロの歴史

古くは温石と呼ばれる物が江戸時代からあったらしいのですが、これは温めた石を布で包むだけの簡易な物で発熱は持続しません。カイロと呼ぶにはほど遠い代物です。
その後、江戸時代後期には灰式カイロと呼ばれるカイロの原型が登場します。これは金属製の容器に木炭末と灰を詰めた物で、ある程度の時間は暖かさを持続できる物でした。現在も特殊な用途で使用されており、例えば“真冬の天体観測”等でレンズの結露防止のために使われることがあります。

そして1923年に矢満登商会(後のハクキンカイロ株式会社)より『ハクキンカイロ』が発売されます。これはベンジンをプラチナ触媒で“触媒燃焼”させることにより、短時間で燃料が尽きてしまうこともなく24時間ほどの燃焼時間を確保することに成功した画期的な発明でした。
というわけで『ハクキンカイロ』によって白金触媒式カイロの登場となるわけですが、初期の頃はベンジンが入手しづらく高価なこともあり、あまり一般的ではなかったようです。主な納入先は時代的な背景もあり“軍隊”だったりします。しかし戦後になると、ハクキンカイロ株式会社以外のメーカーも数社立ち上がり、ベンジンも多少は入手しやすくなって一般庶民にも普及し始めます。

そして使い捨てカイロが全盛の現在でも白金触媒式カイロは南極などの極地で使われたり、登山やアウトドアなどでは確固たる地位を築いています。なんと言っても圧倒的な熱量(暖かさ)と持続時間、シンプルゆえに故障知らずと言った理由で支持されているようです。
筆者も冬はコレなしで真冬のアウトドアをエンジョイする気にはなりません。寒さで凍えながらレジャーを楽しめるのは一瞬だけで、寒いと感じ始めると楽しさなぞ吹き飛んでしまい、後はひたすら我慢の世界になってしまいます……。

白金触媒式カイロの使い方

そんな白金触媒式カイロの基本的な使い方も紹介しておきましょう。コツと言うほどではありませんが、使い方を間違えると白金触媒式カイロの良さを100%引き出せません。

まず白金触媒式カイロに使う燃料ですが基本的には“メーカー純正のベンジン”を使ってください。燃料用として売られているベンジンならばどれでも使えるのですが、カタログ通りの性能を発揮するためにはメーカー純正のベンジンを使ったほうが無難です。安いベンジンを使うと“使用時間が短くなったり発熱量(暖かさ)が少ないことがある”ということを知っておきましょう。

もっとも“ベンジン自体が意外とそこら辺に売ってない罠”と思われるかもしれませんが、ドンキホーテなどの量販店や大きなドラッグストアに行くと売っていることが多いです。ちなみにシーズン商品なので冬に買い求めるのがベターです。
ベンジンは室内の涼しい場所で保存しておけば、大抵の場合は翌年も普通に使えるので、春になって余ったベンジンを捨てる必要はありません。
他にも“ホワイトガソリン”を燃料として使うことができます。ホワイトガソリンは『ジッポー』などのオイルライターで使われる燃料です。そして『ジッポー』のホワイトガソリンが入っている小さな容器は“白金触媒式カイロの予備燃料を持ち歩くのに最適なアイテムである”とも言っておきましょう。
言うまでもないことですが“ホワイトガソリン”と自動車やバイクの燃料で使う“ガソリン”は別物なので気をつけましょう。ホワイトガソリンと違い自動車などで使うガソリンはエンジンの摩耗を防ぐために“添加剤”が入っているので、白金触媒式カイロの触媒を傷めたり使用時に“有毒なガス”が出る危険性があります。
白金触媒式カイロで使える燃料は“ベンジンとホワイトガソリンだけ”と覚えておきましょう。

白金触媒式カイロへの注油方法は、付属の専用ジョウゴを使い本体に注油します。この時にベンジンを入れすぎたり、前回のベンジンが残っていると本体からベンジンがあふれることがあるので注意してください。もっともベンジン自体が揮発性のある液体なので、前回の燃料の残りに神経質になる必要はありません。満タンにベンジンを入れたけどほとんど使わなかった時などはあふれないように注意しましょう。

白金触媒式カイロへの点火方法ですが、ライターやマッチで点火します。この時に大事なのは“触媒を直接炎であぶってはだめ!”ということです。何も知らずにライターで火を点けるというと炎の上に触媒を持ってきそうになりますが、コレをやってしまうと触媒が傷みます。下手をすれば触媒がだめになってしまうので要注意です。

白金触媒式カイロへの正しい点火方法は“ライターなどの炎に対して斜め下から触媒を近づける”です。触媒に火を点ける必要はなく、あくまでも“触媒の温度を上昇させて触媒反応を促す”のが白金触媒式カイロの点火なのです。慣れないうちは一発で点火できないこともありますが、触媒をだめにしてしまうよりは慎重にやった方が無難です。

「どうやって点火が成功したか見極めるの?」という謎ですが、これは点火したであろうと思われる白金触媒式カイロを付属の巾着袋に入れてしばらく待ちます。暖かくなれば点火成功、3分経っても暖かくならなければ失敗です。火を点けると言っても触媒に化学反応させて発熱するので、触媒から炎が出たり火が見えることは絶対にありません。とにかく“ライターの炎の根元に斜め下から触媒を接近させるイメージ”でやりましょう。文章で書くと面倒そうですが、慣れればタバコに火を点けるのと手間は変わりません。

ちなみに白金触媒式カイロの消火の方法ですが、基本的には消火できません。この潔さが構造のシンプルさに繋がり、結果として信頼性の高い道具になるわけです。まあ応用的に頑張れば密閉した容器に入れるとかカイロ本体を超冷やすとかありますが、面倒なので諦めましょう。素直に「燃料を使い切って自然消火」という方法を選択した方が無難です。なので3時間とか半日しか使わない時は、最初に入れるベンジンの量を少なくしておくと良いです。

そして次に大事なことは“白金触媒式カイロを使う時は付属の巾着袋に入れて使う”ことです。白金触媒式カイロは燃料を気化させて発熱するのでカイロ本体が冷えると火が消えてしまいます。こうなると再び点火しなければなりません。
例えば巾着袋に入れずにズボンのポケットに入れたままだと消えたり、気温が氷点下の外で手を温めようとずっとニギニギしてると消えてしまうこともあります。そのような事態を避けるために付いている巾着袋なので、使う時は必ず付属の巾着袋に入れましょう。

次に白金触媒式カイロの持ち歩き方です。基本は付属の巾着袋に入れて服の内ポケットなどに入れておけば良いのですが。超絶に寒い時などは白金触媒式カイロ専用のベルトに入れて腹部(内臓)や背中(背骨周辺の血管)を温めると効果絶大です。もっとも専用のベルトは売ってる店も少ないので腹巻きを二つ折りにしてハクキンカイロを入れるという技の方が一般的かもしれませんね。そして“分かっていらっしゃる人たち”はハクキンカイロは常に2個使うのが普通です。
とにかく肝としては服のポケットなどに入れるよりも体に密着の方が温かいです。ただし白金触媒式カイロは結構熱くなるので“低温やけど”を防ぐために必ず付属の巾着袋に入れて腹巻きなどでホールドするという使い方を守ってください。
他にも真冬のキャンプなどで「寝袋に入ったものの寒くて寝れない……」という場合などは巾着袋に入れた白金触媒式カイロを2個ほど寝袋の中に入れれば快適。普段の通勤などで“チョイ寒い”という程度ならば、ポケットに入れておくだけでも十分です。
とにかく“巾着袋に入れないで放置”とか極端なことをやらなければ、そうそう火が消えることもないので気軽に使えます。

白金触媒式カイロのマイナス点

白金触媒式カイロの唯一の弱点というかマイナス点は“ベンジンの臭い”が挙げられます。燃料を気化させて触媒で反応させているので多少の臭いは仕方ないのですが。言うほどにキツくはないのですが“石油系が燃える臭い”が苦手な人はちょっと気になるらしいです。
そんな人にオススメな技は付属の巾着袋にアロマオイルを垂らすという方法があります。香水だとにおいがきつすぎてエラい事態になるので“ほのかに香る”程度のアロマオイルがオススメです。当たり前ですが燃料であるベンジンにアロマオイルを混ぜたり触媒にアロマオイルを垂らすと触媒が傷む可能性もあるので止めましょう。

まとめ

以上が白金触媒式カイロを使う上での注意点と言うかコツですが、サクッと使えるアイテムなので難しく考える必要はありません。使い捨てカイロと違い繰り返し使えるし、消耗品である“触媒や本体内部の綿”はスペアパーツとして入手する事が可能ですので末永く使えます。
筆者は“エコ”という言葉を安易に使うのが嫌いです。
しかし白金触媒式カイロの場合は繰り返し使えるので「ランニングコストが安い、ゴミが出ない、地球とか環境に負荷をかけない」とかグダグダ言う前に「俺の財布に優しい」という、地味な要素だけど個人的には超重要な利点を備えているのは素晴らしいです。
そして長く愛用出来るので“モノとして愛着がわく”という意味でもオススメしたいですね。

そんなわけでちょっと使い捨てカイロより高価ですが、毎年必ず冬が訪れると思えば早めに買ったほうが幸せになれることは間違いない冬の必須アイテム。この機会にぜひともハクキンカイロの暖かさを実感して下さい。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「YELLOW」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
酒と料理に無駄な情熱を燃やす「駄文系」ライター
「究極の肉」を手に入れる為に「第一種狩猟免許」を取得した
業界としてはニッチな「マタギ系ライター」を目指すが、あまりにマニアック過ぎる為に需要があるかは謎である

特技は料理とカクテルとバイク事故で骨折する事

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