4DX専用“びしょ濡れ”映画『雨女』清水崇監督インタビュー「大切なのは緩急のバランス」[ホラー通信]

清水崇監督

『呪怨』等で世界中で人気のJホラーの名手・清水崇監督が、徹底的に4DXシステムを研究。「清水崇が4DXを使って恐怖を描いたら?」と誰もが想像してしまう“恐怖”をも遥かに超える、五感を刺激する体験型エンターテイメント『雨女』が現在公開中です。

女優の清野菜名さんを主演に迎え、清水監督が2年ぶりに仕掛ける劇場用ホラー『雨女』。「劇場に雨が降る」をモットーに、“水”のエフェクトを存分に使用した本作は、ガタガタ動いて脅かすだけでは無い新たな4DXの可能性を感じさせてくれます。今回ホラー通信では清水崇監督にインタビュー。映画について、4DX専用ムービーとして工夫した点などを伺ってきました。

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―本作、とても楽しく、恐く、拝見しました。清水監督のJホラーを4DXでやるというのは意外だったのですが、元々ご興味はあったのでしょうか?

清水監督:全然無いです(笑)。最初はあんまり乗り気じゃなかったんですよね。3D映画の時も同じだったのですが、アナログ人間なので。でも、ホラー映画が代表作だと、新しい刺激的なシステムを扱いやすいと思われるのか、何かと「ホラーで3D映画撮ったらアジアでは監督が先駆者ですよ」等とオファーをいただく事が多い。でも「先駆者とか興味ないので…」と返事しているのですが。

映画ってそもそも映像と音で香りとか風を感じてもらう物かなと思っているのですが、今や映画って「DVDとかスマホやタブレットで観ればいいや」と思っている人も多い中、映画館に足を運んでいただくきっかけになれば良いなと引き受けました。性分がアナログなので、こういった機会に″映画や技術の進化″にも対応していかねば…という想いもあります。

―では本作の制作をきっかけに、他の4DX作品もご覧になりましたか?

清水監督:『ジュラシック・ワールド』や『ミッション・イン・ポッシブル/ローグネーション』、『96時間』などを観たのですが。これらの作品はどれも4DX用に作られた映画ではないので、長所、短所含めてバランスが大事だなと思ったんですね。そしてバランスが一番良いと感じたのは『ジュラシック・ワールド』なのですが、試写会で2Dで、映画館では3Dで、4DXでは3回目だったのに「おっ」と感激させられる所もあって。アクションでは敵と味方の両方共にエフェクトが付いていると主観がブレてしまうし。

4DXというとアクションで動きが派手な作品がほとんどだと思うのですが、じっとりとした日本映画で心理的な動きを4DXでいかせる短編を作れないかなあと構想を始めました。

―4DXのエフェクトのバランスはどの様に考えましたか?

清水監督:映像を作り、その後の4DX効果は、韓国の4DX社にまずはお任せしたところ、ものすごくたくさんの動きがつけられていて、てんこ盛りになって戻ってきました。主役の心情がブレてしまうなと思ったので、そこから引き算しつつ、別のエフェクトを足していったりして完成させていきました。

―35分の中に緩急がしっかりとあって、静かなシーンと恐いシーンのコントラストが最高でした。

清水監督:そうしないとエフェクトに慣れちゃうんですよね。ずっと観てると、動きとか水・風に慣れてしまう。デジタル3D映画でも、印象として最初のロゴ・マークに最も立体視を感じやすい。やはり大切なのは緩急のバランスなんです。

―全体的に“濡れる”というエフェクトが中心となっていて、とはいえビックリ飛び上がってしまう様な演出もありました。

清水監督:久しぶりにああいう事やりました。“scary”では無くて“surprise”な演出ってズルいじゃないですか、大きな音で「わっ」とされればそりゃ驚くよ(笑)、と表現として個人的には恥ずかしいので、普段はやらないのですが、今回は久しぶりに。

―そもそもの『雨女』というモチーフのアイデアはどの様に産まれたのですか?

清水監督:『雨女』という題材は僕がデビューしたばかりの頃に一度長編映画として企画をたてた事があって、その時は実現しなかったのですが、雨で水を使えるなと思い、今回、全く物語や構成を変えて、一からもう一度やってみようと思いました。

―「雨」や「水」の扱い方がキレイですが、すごく不気味ですよね。

清水監督:ホラーの恐い要素もファンタジーの一つだと思っていて、『魔女の宅急便』とかもそうなのですが、雨のしとしと振っている美しさも好きだし、じとじとして肌にまとわりつく感じとかも、色々な見方が出来ると思うんですね。人には「雨の日って素敵だな」と思える気持ちもあるはずだし、こうした両極面を持った題材が好きなんでしょうね。子供の頃は台風で荒れている外に出るのが好きだった、誰もいない場所にいるワクワク感というか。絶対皆にあると思うんですよね。

―本作でも子供が印象的に登場します。『呪怨』の俊雄君もそうですが、監督は子供に恐怖を感じる事があるのですか?

清水監督:どうしても子供に引っ張られてしまうんですね。意識していなくても、僕の作品には全て子供が関わっている。老人とか子供とか、「身近にいる存在なのに時おり何を考えているか分からない」感覚が好きなんですね。

―そういう意味では、4DXというギミックを使っていながら、“清水崇監督らしさ”を感じる事の出来る作品ですよね。

清水監督:今回は映画館でしか観られない短篇として4DXのエフェクトを使っていますが、どんな作品でもなるべく映画館で映画を観る楽しさを視聴ではなく体験として味わって欲しいんですよね。35分と短い映画なので、デートやショッピングの隙間時間に観て欲しいです。

ホラー好きじゃなくても誘われて観に行って、意外とハマったりしてくれたら良いですね。他のジャンルの映画は家にお土産があればあるほど良いのに、ホラーだけは「二度と観たくない」という褒め言葉があるので(笑)、『雨女』もそうなると嬉しいなと思っています。

―今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!

『雨女』ストーリー
雨の日の夜、理佳(清野菜名)は必ずと言っていいほど、同じ夢を見た。大雨の中、踏切で電車が行くのを待つ幼い少女。その前に突如現れ、踏切の中に入る黒い服を着たビショ濡れの女。女は男の子を大事に抱き寄せながら、少女の目の前で電車に轢かれてしまう。そんな夢を毎回見続け、さらには彼氏である隆(栁俊太郎)との煮え切らない関係に憂鬱な気持ちを抱えていた理佳は、母の命日に地元に帰省することにするのだが……。
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(C)2016「雨女」製作委員会

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

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