「小1の壁」と在宅勤務 ―― 仕事を「子どもが過ごす場所」に近づける

長男が小学校に上がった2015年から1年間、リモートワークの制度を活用して在宅勤務をしました。今回は、過去に書いてきた「小1の壁」シリーズの続編として、その効果をご報告したいと思います。

実際にはその前から在宅勤務を少しずつ利用しはじめていたのですが、いわゆる「小1の壁」を前にして在宅勤務を継続的に利用させてほしいと、あらためて会社に頼んだのでした。
小1の壁とは 子どもが小学校に入ることによって育児と仕事の両立が難しくなり、退職するワーキングマザーが増えるという問題を指す。放課後の預かり時間が短くなる(保育園から学童に変わることで)、宿題や持ち物の準備など家庭でのフォロータスクが増える、子どもの成長に伴い人間関係が複雑化するため心理的ケアの必要性が増える、等などの環境変化が発生することが要因。詳しくは記事末にある過去記事のリンクを参照。

前提として、私の仕事はPCがあればできる作業が多いことと、会社としてもリモートワークを推進したいという思惑があり、組織的な協力が得られたことを述べておきます。

具体的には、ミーティングなどで週に2回程度出勤するほかは、自宅で朝の9時か10時ごろから夕方17時ごろにかけて、PCで作業します。コミュニケーションには、Skypeもときどき活用しました。

家からSkypeするとき、化粧するか否か……悩むのって私だけ……?(イラスト)

在宅勤務でこんなときに助かった!

保護者会・個人面談・PTAの集まり・授業参観などの学校行事

→仕事を「一時中断」して柔軟に対応できる

在宅勤務の効果で一番よかったことが、コレでした。

保育園では、行事が基本的に土曜日開催だったり、保護者懇談会も夕方から開催だったりと、都合をつけやすく設定されていました。小学校では保育園のころより学校に赴く用事が増えますし、それが日中に設定されていることがほとんどです。

1つ1つは1〜2時間で終わるのですが、会社に出勤する場合は、往復の通勤時間も含めて最低でも半日はかかってしまうと思います。いわゆる「半休」を取らないといけない方もいますよね。

在宅勤務ならば「2時間だけ中抜け」のような形で対応できるので、仕事の調整がしやすいなと思いました。「中抜け」で済むなら、有休の残り日数を気にしなくて良いというメリットもあるかもしれません。

子どもを送り出す朝

→時間に余裕がある。お弁当づくりにも

小学校に入ると、これまで親の送り迎えが当たり前だった子どもが、自分で学校に通いはじめます。この大きな変化が、「壁」となってしまうケースがあります。

保育園は7時台から開いていますが、小学校の校門は8時ごろにならないと開かないので、通学時間より前に親が自宅を出なければならない、というものです。これが原因で仕事を辞めたお母さんを知っています。

とくに4月は初めての通学で、待ち合わせで泣き出しちゃったり、「行きたくない」と言って校門から中に入ろうとしない、などのケースも聞きました。

これは在宅勤務ではなくフレックス勤務でもできることですが、通学に慣れるまで、少しついて行ってあげたり、見送ったりできたのはよかったです。

さらに、小学校に入ると、保育園時代には必要のなかった休日の「お弁当づくり」が発生します。夏休みはかなり大変です。親はまったくの平日なのに、子どもは8月いっぱいお休みなので、学童に持たせるお弁当を毎日つくらなければいけません。

私は会社が遠いこともあり、通勤時間がない分だけ、朝の時間に余裕があったのは助かりました。

夏休みや振替休日のお弁当づくりは大変(写真)夏休みや振替休日のお弁当づくりは大変

子どもの病気による欠席や早退、学級閉鎖

→通院や看病の合間に仕事を進めることができる、子どもを自宅待機させられる

今年の冬は(今年も?)インフルエンザが流行しましたよね。我が家は上の子も下の子も、予防接種をしていたにもかかわらず罹患(りかん)してしまいました。

「学級閉鎖」はご存じでしょうか。クラスの何割かの児童がインフルエンザなど流行性の病気にかかると、それ以上の感染を防ぐためにクラス(ときには学年や全校)がお休みになるのです。インフルエンザの場合は、解熱してからもしばらく自宅待機になります。

学級閉鎖は、自分の家の子が病気でなくても学校がお休み、行きたくても行けないのです(学童には通えるところと通えないところがあるようです)。冬になると、どうしてもウィルス性の病気が流行してしまい、子どもを通院させたり、自宅待機させなければなりません。そういうときに、少しずつでも仕事を進めることができるのはありがたいです。

子どもがまだ乳幼児のころは、看病といっても「寝かせておけばOK」というものではなく、抱っこがずっと必要だったり、何かと気ぜわしいものでした。小1くらいになると、それがちょっと見守る感じになってくるのは確かです。

とはいえ、看病のために自宅にいるわけで、仕事を「平時と同じようにできる」と考えてはいけません。このあたりは注意が必要です。

台風・大雪などの悪天候

→無理して会社に行かなくても仕事ができる

今年の1月、東京でも大雪が降った日がありました。主要な交通機関がほぼ全部止まってしまい、会社に行けなくなった人もたくさんいました。

それで休めるならならいいのですが、いつもなら自転車で10分の保育園まで、大雪でまったく進めない、地面が凍って危ない! そんななか子どもを送って出勤した親御さんも多かったのではないでしょうか。ああいう日って「だれか……会社に来なくていいと言ってください……」と思っちゃいますよね。

小学校では悪天候の場合、危ないので「登校させないで」と、ときにお達しがあります。そういうときに、ふだんは在宅勤務を使ってない人でも、在宅に切り替えられたら助かりますね。

子ども同士のトラブル

→物理的にそばにいる時間が長いので、変化に気付きやすいこともある

1年間のうちに一度だけでしたが、いつも「学校どうだった?」と聞いても「いつもとおなじー」くらいしか答えない長男が、ソワソワして「学校すごくつまらなかった」と言った日がありました。その日は学童からも少し早めに帰ってきていました。

私はちょっと仕事の手を止めて、詳しく話を聞きました。クラスの同じ班のお友達に、自分の意見を聞いてもらえなくて辛かったと。そういうことが、何度か繰り返されていると。彼はそんなようなことを言いました。

このとき「早く気付いて、その時に話を聞けて良かった」と思ったのは確かです。その後、担任の先生にも相談して、解決しました。

外で働いていても帰宅後にキチンと話を聞けばいいだけです。在宅勤務のメリットに入れるかどうか迷うような内容ですが、「自宅で一緒に過ごす時間が長い」と子どもの変化に気付きやすくなるということは、多少あるかもしれないと思いました。

在宅勤務をしてみてどうだったか

上司とのコミュニケーションなど、組織から見て

リモートワークをしていて、上司や同僚とのコミュニケーションに難しさを感じることは、あまりありませんでした。出社していても在宅勤務と同じように、メールやグループワークツールを通して会話することが多いためです。相手が会議などでつかまらないときは、出社していてもつかまらないですし。

ただ、「いま隣で困っている人」を助けてあげられないとか、新人さんにアドバイスできないとか、そういう問題はあるかもしれません。だから、ある意味、成熟した集団でないと組織的なリモートワークの導入は難しいかもしれませんね。

成果の面でも、掲げた目標はほぼ達成できました。私の勤務する組織は、出勤している時間の長さではなく、最終的な成果を評価する仕組みを導入しているので、在宅勤務の1年で評価が下がることはありませんでした。(もちろん労働時間の上限はあります)。

ロスと疲れが少ないことのメリット

仕事と育児の両立に在宅勤務がもたらすメリットは、「時間のロスが少ない」ことと「(肉体的・精神的に)疲れが少ない」ことの2点だと思います。それが結果的に、生産性を上げる(下げにくい)ことにつながるのではないでしょうか。移動に取られるパワーは、意外と大きいです。

長男が保育園児のころ、看病のために1週間ぐらい仕事から離れてしまうことがよくありました(子どもの病気ってなかなか治らないのです!)。1週間も空いてしまうと、どうも自分の気持ちも仕事から遠ざかりやすく、そのたびにリセットされてしまい、独特の辛さがあったように思います。

また、長い通勤を毎日していると体が疲れるのか、毎晩寝落ちしていました。在宅の日は疲れにくい、と感じています。通勤がないことで、朝早い時間から働くと、ただただ気分が良く、仕事の調子が乗りやすいことが多いです。

そして、会社に行くと、周囲で私語をしている人の声がすごく気になるようになってしまいました……。

家の近所は自然が多いので、お昼休みに散歩したりできるのが嬉しい(写真)家の近所は自然が多いので、お昼休みに散歩したりできるのが嬉しい

在宅勤務のここが課題

仕事の内容が制限される

会社や組織全体がリモートワークに対応していないと、在宅勤務の内容はどうしても「それ以外の方法で働けない人のための限定的な仕事」になってしまうのではないでしょうか。在宅なのは良いが自分の力を活かす仕事はできないのは、本人だけでなく組織にとっても、もったいない気がします。

さらにリモートワークに対応した組織に勤務する私でも、本来なら担当するはずだった業務を「ネットワークの問題(リモートアクセスに伴うセキュリティ上のもの)」で変更になったことがありました。

また、よく「喫煙室でのちょっとした雑談からアイデアが生まれる」などと言いますよね。在宅ではそういうことがなくて、これでいいのかなあと思ったこともあります。もっとも、チャットツールなどでなんとかなる気もしました。

子どもや自分が病気のときでもつい仕事をしてしまう

これは私自身の反省も込めて、注意が必要だと思います。「できるかな」と思って、ついつい仕事を受けすぎてしまうのですよ……。

自分や子どもの体調が悪ければ、まずは「しっかり休んで治す」ことが大事ですよね。私の場合は、子どもの回復期などに仕事を進めるようにしていました。

運動不足になる

なんだか個人的な課題感ですみません……。通勤しないと、本当に動かないなと思いました。買い物とか、休日の運動で解消しなさいよ、私。という感じです。

在宅勤務やリモートワークができない職種もある

「その場所に行かないと仕事にならない」という仕事はたくさんありますよね。どんな職種でも在宅勤務やリモートワークができるわけではないのです。そういう難しさをどう乗り越えていくか、が課題だと思います。

まとめ・「子どもが過ごす場所」の方に「仕事」を近づけるという考え方

在宅勤務を実際にやってみると、「もう戻れない!」と思うぐらい、子育てしながらの生活には大きなメリットがありました。

経営的な視点では「生産性が上がるのかどうか」が気になるところかもしれませんが、少なくとも「下がらない」とは思っています。子育てと仕事の両立は勤続の妨げになり得ますが、それを取り除く効果はあると思います。

やはり「物理的に家にいても良い」ということが、「家の近所(保育園や小児科などの生活圏)」で基本的に行われる子育てに向いているのだと思います。早めに仕事を終わらせることができたら、まだ明るい時間なら子どもと外で遊んであげられる。たったこれだけのことでも、子育て中にはとても大きなメリットです。

いま都市部で問題になっている待機児童についても、オフィスに最適化されている場所の近くに、子どもが育つ場所としての保育園を増やすということの難しさがあると思います。公園が少ないだけでも、子育てにおいてはデメリットです。

例えば、待機児童問題を「子どもが過ごす場所」という観点から考えてみる。期間限定でも「子ども達が過ごす場所の方に仕事を近づける」という考え方をしてみるのも、ひとつの解決の方向性じゃないでしょうか。

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著者:kobeni (id:kobeni_08)

kobeni (id:kobeni_08)) 7歳と2歳の男児を子育て中のワーキングマザーです。はてなで「faviconkobeniの日記」というブログを書いています。仕事はインターネット広告など。運動会のお弁当づくり、今から気が重いぞ……。

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