【鉄道】宇都宮でのんびりと余生を送る車両たち
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大都市の雑踏にまぎれて働いて働いて走り続けてきた日々……。
過酷な通勤ラッシュ、分刻みでの運行ダイヤ、何もかもが”桁外れ”の首都圏。
やがて技術面での見劣りやサービス低下など、時代に追い付けなくなった車両たちは首都圏を追い出される……。
ずいぶんと悲劇的な書き方をしましたが、実際に首都圏の通勤型電車の世代交代はすさまじい早さで行われます。
技術は絶えず進歩し、利用客のニーズも時代とともに変化をします。
それらに対応するため新型車両が生まれ、これまで走ってきた車両たちは役目を終えて引退をしていきます。
ここ10年でJR東日本の通勤型電車もめまぐるしく車両の入れ替わりが行われました。
2000年(平成12年)にデビューしたE231系、2006年(平成18年)にデビューしたE233系。
主にこの2形式が首都圏の大部分の路線を担うようになり、今は首都圏の顔としてすっかり定着しました。
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さて、これら新型車両たちが登場するまで走っていた車両をおぼえていますか?
いつの間にか引退していた…そう感じる方もいらっしゃるはず。
毎日のように乗り、通勤通学の思い出を運んでくれた愛着のある車両でもあると思います。
そんな通勤電車たちも都内から姿を消しても、地方でまだまだ元気に走り続けている車両があります。
都心から北へ約100km。栃木県宇都宮地区ではかつて首都圏を走りまわった車両たちが編成を短くして元気に走っています。
今回は都内から姿を消し、宇都宮でローカル輸送で余生を送る車両たちにスポットを当ててみましょう。
115系…なつかしい、みかん色の電車
115系は都内では主に宇都宮線と高崎線で見ることができました。
最大で15両編成を組み、国鉄時代から30年以上にわたって都心と北関東の輸送を支えてきました。
『湘南色』と呼ばれる緑にオレンジの塗装は誰もが1度は目にしたことのあるなじみ深い塗装です。
2000年(平成12年)6月から宇都宮線に、翌年9月から高崎線にE231系1000番台が進出。
次第にその数を減らし、都内からは2005年(平成17年)1月をもって姿を消しました。
現在は高崎車両センターにわずかに残る車両たちが上越線、信越本線、吾妻線、両毛線と同線からの宇都宮線の直通列車で活躍。
小山駅から宇都宮駅ではかつての主力であった宇都宮線も走り、往年の姿を現在も見ることができます。
ボックス席、床下から響き渡るモーター音。国鉄のにおいを色濃く残す車両です。
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211系…関東で現役湘南色が見られるのはココだけ
211系も都内では宇都宮線と高崎線の他、東海道本線で見ることができました。
こちらも115系と同じく最大で15両編成を組み、長らく115系とコンビで都心と北関東の輸送を支えてきた車両です。
ステンレス車体には伝統の湘南色の帯が巻かれ、近代化された近郊型電車の主役として活躍してきました。
東海道本線の編成はデビュー時から、宇都宮線と高崎線の編成は2005年(平成17年)からグリーン車を組み込み、快適な着席サービスを提供した車両でもありました。
115系と比べるとまだまだ新しい印象を受ける211系ですが、こちらにも置き換えの波はせまってきました。
今は通勤型・近郊型という区別はほとんどなくなり4ドア車が主流になった時代。
3ドア車の211系は車種統一といった保守効率化の影響もあって次第に都内から姿を消し始めました。
東海道本線は2012年(平成24年)に。宇都宮線からは2013年(平成25年)、高崎線からは2014年(平成26年)にいずれもE233系3000番台によって置き換えられています。
特徴的なグリーン車は残念ながら転用されることなく廃車・解体となりました。
もともと地方ローカル線へ転属することを考慮して設計されていたため、編成を短くして新たな活躍を始めています。
湘南色の211系は現在は両毛線のみで活躍していますが、新たに中央本線方面で活躍を始めた211系はブルーの帯を巻いて活躍中です。
編成も身軽な5両編成となって高崎車両センターに所属し、115系と共に両毛線の運用を支えています。
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205系日光線…観光地への大事な足は変わらず
205系と言えば都内では山手線や埼京線、京葉線で見ることができた車両です。
とくに115系や211系とは異なり、通勤型電車として誕生したので宇都宮地区で走ることはまずありませんでした。
そんな205系が宇都宮へやってきたのは2013年(平成25年)。
日光東照宮へのアクセス路線、日光線と宇都宮線のローカル運転用に使用されるために転属してきました。
やってきたのは東京ディズニーリゾートへのアクセス路線、京葉線で活躍していた205系。
鉄道ファンからは『メルヘン顔』と呼ばれている前面デザインが変更されたタイプです。
日光線用の205系は600番台を名乗り、10両編成から4両編成に縮められて半自動ドアやトイレ設置が行われました。
シックなブラウン塗装をまとい、車体に貼られた日光のPRステッカーなど旅心を演出してくれます。
都心時代は東京ディズニーリゾート、現在は日光と観光地へ輸送を担うのは今も昔も変わりありません。
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205系宇都宮線…ついに登場した湘南色205系
日光線用と時期を同じくして205系600番台は宇都宮線のローカル運用にも充てられることになりました。
宇都宮線小金井駅~黒磯駅間で使用され、これまで運用に就いていた211系を置き換えました。
今までありそうでなかった湘南色の205系がついに誕生し、新たなラインカラーが加わりました。
日光線と同じく10両編成から4両編成に縮められて半自動ドアやトイレ設置が行われました。
大部分の車両は京葉線で活躍していた205系が改造されましたが、一部は埼京線で活躍していた205系も使用。
『メルヘン顔』と『オリジナル顔』が混在し、ラッシュ時は2編成連結をして最大で8両編成を組みます。
205系600番台は日光線を含めて全車が小山車両センターに所属しています。
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上野駅を思い出す…小山駅両毛線ホーム
両毛線終点、小山駅のホームは東北新幹線の高架橋のすぐ真下に位置し、頭端式ホームになっています。
宇都宮線直通列車はここで進行方向を変えて宇都宮線に乗り入れることになります。
高架下の薄暗い雰囲気はどことなく上野駅の地平ホームに似ています。
ここに入線する115系と211系は1990年代初頭の上野駅に立っているかのような気分を味わわせてくれます。
かつては当たり前のように都心に乗り入れていた両形式。
すぐ横(宇都宮線)を走る後輩たちを見て何を思うか…そんなことを考えてみるのも楽しいですね。
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(執筆者: kenttakamatsu) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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