イマドキ新入社員のストレス傾向とは?指導するときに意識したい2つのこと

5月は新入社員が導入研修を終えて各部署に配属される時期。新しい環境に適応できずに悩む「五月病」も発生しやすい頃です。

例年、ここで心が折れて辞めてしまう新人が一定数いるのも事実。新人を指導・教育する立場にある人は、コミュニケーションの取り方や指導の仕方に苦心している人も多いのではないでしょうか。

特に近年の新人や若手は「ゆとり教育」で育った世代。先輩や上司から見ると「えっ?」と思うようなことでストレスを感じたり、傷付いたりする傾向があるようです。ゆとり世代とひとくくりにはいえないものの、若手のメンタル面の特徴を理解した上で、適切な対応をとりたいものです。

そこで、企業のメンタルヘルスケア対策支援を手がける(株)アドバンテッジ リスク マネジメントを訪問。入社後の研修サービスを手がける菊田卓氏にお話を伺いました。

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ビジネスパーソンのストレス傾向、以前となにが違うのか

菊田氏によると、企業の人事担当者からは「例年新人はメンタル面が弱いものの、メンタル面の不調を理由に休職や退職する人が出てきた」という声が多く寄せられるとか。

ゆとり世代は教育において「競争」が少ない環境で過ごしてきたため、社会人になっていきなり競争にさらされ、これまで身を置いていた環境とのギャップをストレスに感じるようです。

「ビジネスパーソンはどんなことにストレスを感じるか」という指標は複数ありますが、ひと昔前の世代がストレスを感じやすかったのは次のパターンだそうです。

・業績や成果にこだわりすぎる。達成できないことに人より過度にストレスを感じる。

・失敗したときに自分を責めてストレスを感じる。

これに対し、イマドキの新人には「自己愛が強く、指摘や批判に弱い」というタイプが多く見られるようです。

イマドキの新人の指導で意識したいこと

では、イマドキの新人を指導するにあたり、どんな点に注意すればいいのでしょうか。

菊田氏は2つのポイントを挙げています。

●人前で叱らない

●個性に合わせた「やる気スイッチ」を押す

「30代以上の世代は、人前で指摘や叱責を受けることに対して比較的免疫があるのに対し、ゆとり世代の新人は人前で怒られた経験が乏しいのです。また、人の目を気にしすぎてしまう人も一定数います。人の目を気にしすぎる人は、人前で怒られると必要以上に落ち込む可能性が高い。もし人前でなにか言われることが特に苦手そうな人が仕事で失敗をした際、個室に呼んで指導をした方がいいでしょう」(菊田氏)

そして、悪いところの指摘や叱責だけで終わらないことも大切。特に自己愛が強く、人から批判されることに強い抵抗感を抱く持つ人も一定数います。

そこで、仕事上のフィードバックを行う際に、ネガティブな内容だけでなく、ポジティブな内容も付け加えるといいようです。つまり、できていることをほめたり、その人の強みを認めたりするということです。

「たとえば、数字を扱うのが得意な人、論理的に考えるのが好きな人、人の役に立つことに喜びを感じる人――個々の強みやモチベーションの源となるものは、学生時代のうちからでも何かしら持っているはずです。そういうものを見つけて、それが発揮されている点をほめたり、これから発揮することを期待している旨を伝えるといいでしょう」(菊田氏)

新人が抱え込んでいる悩みをどう引き出すか

自分一人で抱え込んでしまう人、つまり、悩みがあっても人に相談しない人・相談できない人がいます。

「このタイプはどの世代にも共通して存在するが、そういう新人が最近特に増えたと感じている人事担当者が多い」と菊田氏。

さて、あなたが先輩・上司だとして、新人がまったく相談してこなかったら、どう声をかけますか?

「元気?」「何か悩みはない?」

こういう聞き方はNGです。もともと人に相談しないような人がこう聞かれても、「ないです」「大丈夫です」「元気です」と答えます。そう言われてしまうと、それ以上は突っ込みづらくなります。正解はこちら。

「何か課題はない?」

「『悩み』があるというと、自分が弱みを持っている、社会人としてそれを見せてはいけないと思ってしまいがちです。けれど、『課題』は仕事をしている以上はどんな人にもあって当然のもの。『課題』を問われれば、素直に話しやすく、そこからさらに深い『悩み』を把握することにつながります」(菊田氏)

また、自主性や積極性に欠けている新人も一定数います。もし、悩みを抱えてそうな場合には、「助けを求めてくるまで待つ」ではなく、「今こんな課題にぶつかっているんじゃないか?」と、こちらから手を差し伸べるほうがいいようです。

放置すると「あの案件はどうなった?」「すみません、まだです」の繰り返しになってしまったり、クオリティの低いものを提出して上長に叱られるはめになったりと、いい結果にはつながりません。

「すべてを教える必要はありません。『この人に相談してみれば』『こういうデータを調べてみれば』『こんな方法もあるよ』といったように、ヒントだけ伝えればいいのです。手を差し伸べて、早めにリスクの芽を摘み取り、生産性を上げるためのアドバイスをしていくといいでしょう」(菊田氏)

自分自身の感情のコントロールも重要

菊田氏は、「新人を教育する先輩や上司は『EQ』を高めることも重要」と言います。

EQとは「心の知能指数」と呼ばれるもの。感情の察知力や感情のコントロール力、対人スキルなどを評価するものです。

「『人への気遣い』と思われがちなのですが、ちょっと違います。コミュニケーションにおいて、目的に応じて自分の感情をうまく選択し、行動に移す能力を指します。相手がイライラしているときに自分もイライラしたのでは冷静な議論はできないですよね。こちらは気分を落ち着かせる、恐縮するといったように、自分の気持ちをつくること、気持ちの出し方をマネジメントすることが大切です。この場ではこういう気持ちを出して、こういう振る舞いをすればうまくいく、といったように『感情の方程式』を操れるようになれば、新人とのコミュニケーションも円滑になるでしょう」(菊田氏)

菊田 卓氏/(株)アドバンテッジ リスクマネジメント

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採用・EQソリューション営業部部長。

2004年より(株)ライフバランスマネジメント(2008年にアドバンテッジ リスクマネジメントと統合)にて営業/商品開発/マーケティング責任者として、企業のメンタルヘルスケア対策に携わり、採用時のミスマッチ防止を目的とした 適性検査「アドバンテッジインサイト」ならびに従業員の対人関係力を向上させるEQ研修の提案に従事。現在は企業の採用・育成(EQ能力開発)サービスの責任者として企業の人材採用・人材育成の支援を行う。

EDIT&WRITING:青木典子

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