ブラック企業・パワハラから身を守る知恵=小道具(ガジェット)
世にいう「ブラック企業」認定されているところでは、半ば放任・黙認状態で、”パワハラ”は猛威をふるっており、新人研修段階から早くも異常性を発揮しているところもあります。また、世の中から「ノーマーク」状態の、普通の企業であっても、残念ながら”パワハラ”は起こり得る現象ではあります。2009年に改定された厚労省の「職場における心理的負荷評価表」の中に”パワハラ”が強度Ⅲ、つまり最強度の精神的苦痛として明記された背景には、あまりにも被害者が続出しているという深刻な実数字があります。
すでに、1998年から労働災害に「精神障害」が認められて以来、「業務起因での精神疾患発症」という労災申請がうなぎ上りで、昨年など1181件で最高記録でした。脳梗塞や心疾患などの申請件数802件を優に上回っています。
国立社会保障・人口問題研究所によれば2009年の「うつ病・自殺」による経済損失の総計が2兆7千億円、GDP損失だけでも1兆7千億円と推計(2010年)していますから、国家としても大きな問題で、職場のメンタルヘルスはもはや「うるせぇ課長ww」では済まされない事態なんですね。
そこで、業務起因の精神疾患で強度Ⅲを認定され、国際語になってしまっているKAROSI(過労死)のような過重労働の環境の中にも、必ずといっても良いほどに見られる”パラハラ”について、実際的には、どんな方法で「対抗策」をとれば良いか? ということです。
パワーハラスメントの定義
(1)職場での上下関係があること。これは逆もまたOKではあります。つまり、技術的優位性を使って、上司に対して部下がハラスメント行為をする、というケースです。
(2)パワーハラスメント成立要件で一番象徴的なのが「不適切な指導・命令」です。「お前のせいで業績が伸びないんだよ、バカ野郎!」とか「いやなら会社辞めちまえ!」とか「目障りだから消えろ!」なんて課長の怒声が響く、なんて、ある意味で職場のありふれた日常ですが、全部アウトです。(刑事の侮辱罪や民事での不法行為という面は別として)
(3)上記の厚労省の負荷評価法には、強度の他に「その出来事がどの程度持続されたか」という基準もあり、この場合「パワハラ行為の頻度」の成立要件も必要です。これらの怒声が「継続的に浴びせられる」ことで立証できます。
(4)ここで、「うっせー、バカ課長」と本人がそこそこ開き直っていれば、パワハラは成立しません。あくまで本人が精神的なダメージを受けていることが成立要件でもあります。適応障害とか非定型うつとか、診断書でもあれば最強でしょう。でも、「辞めちまえ」だけでも雇用不安が発生しますからね。
昭和大学附属烏山病院の調査(2010)では、サラリーマンの5人に1人が不安障害にかかっており、推計では70%近くが精神的に問題をかかえている、とのこと。WHOの調査でも日本の受診率は最下位なので、ちゃんと医者に診てもらえば何らかの診断が下される可能性があります。(大丈夫だった人はそれはそれで良いということで…)
パワーハラスメントで相手をやっつける問題点
上記のパワハラ成立要件が出揃ったところで、自治体の設置する労働相談機関に訴え出るわけです。(社内コンプライアンス窓口もあると思いますが、某大手光学機器メーカーのように内部で揉み消され、逆に左遷されるというケースもあり注意)
これが最大の問題点。つまり、上記の”パワハラ要件”が整っていることを立証しなければならないからです。
10月の厚労省メルマガの中でも、労働基準局の労災認定の不支給事例(つまり労災として認めない事例)の内容でも、「請求者の申告している事実の証明がなく」みたいな一文が散見できます。そして「通常の業務の指導範囲内での指導と思われる」になってしまう。
労基の調査といっても、警察のような捜査権はないから、社内の証人からの聴取くらいしか出来ません。証人といっても、すでに会社側から箝口令が出て味方になってくれないケースがほとんど。
そこで、ボイス・レコーダーの出番です。携帯のサウンド・レコーダー機能でも良いでしょう。これで録音されたデータは、甲号証(原告の提出する証拠)として認められます。「辞めちまえ」「脳みそ腐ってるな」「死ね」なんて上司の罵詈讒謗のすべての日時が生録されるわけですから、パワハラの発生の事実、そしてその継続性の立証が、証人など不要で出来てしまいます。
しかし、まさか録音されていると分かれば相手も言葉を選びます。本気でやるとなれば、ボールペン型のレコーダーや腕時計内臓のレコーダーなら、いつでも自然に録音できます。ペン型は2000円代からありますが、よくコスパチェックして下さい。
長時間録音できるものもあるし、また音声を探知して起動するVOX機能付や、暴力上司にはPCカメラ付、ハイビジョン撮影機能付などの腕時計タイプもあります。
証拠確保がないがために、多くの被害者らがパワハラの泣き寝入りをするはめになっています。医者は、自己申告として業務起因であると診断書は書いてくれますし、「1ヶ月の休養を要す」とか所見を付けてくれます。でも、それは労災認定、あるいは民事で損害賠償を求める場合には、パワハラの証拠にはなりません。会社側が否認してくるからです。個人的要因(親の介護や子供の不登校とか)があるからだとか、もともとメンタル脆弱性(過去にうつ病歴のある人など再発率高いこと)があるからだとか。
もちろん労災不支給になっても、労基判断ごと国を訴えて勝訴しているケースが増えてはいますが、それも「決め手」となる証拠揃えが難航してしまうからです。信じられないほどの”パワハラ”の事実があって本人が自殺に至った場合でも、遺族の訴えが、事実を否認する会社と会社側証人(上司・同僚)に対して反証できずに敗訴、なんてケースは山です。
“セクハラ”の認定基準も、厚労省の検討会議のたびに引き下げられています。”パワハラ”に関しても、いろいろな項目が追加検討されています。しかも、そのために発症した精神疾患に関しては、認定の「迅速化」まで盛り込まれる予定です。また、深刻な労災を発生させた”ブラック企業”への社会的制裁案(企業名公表)も検討中です。
ただ、それにはやはり、「証拠」の確保が重要なわけです。産能大の調査(2010)では中間管理職の4割以上が「メンタルヘルスに不安感あり」と回答しているくらいだから、上司も精神的に追い詰められているのが現状。あまり上司の人徳やモラルに期待するのは甘いと言わざるを得ないのが職場の現実です。
身を守る知恵=小道具(ガジェット)の活用、今のうちから心掛けておきましょう。
※画像:『写真素材 足成』よりhttp://www.ashinari.com/
※この記事はガジェ通ウェブライターの「pape.佐野」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
30年のサラリーマン生活後、心理カウンセラーとしてNPO法人東京カウンセル設立、無料のメール・カウンセリングを行っています。
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