【画像】入場無料! ルイ・ヴィトンの歴史を紐解くラグジュアリーな展覧会『旅するルイ・ヴィトン』展レポ
『ルイ・ビィトン』ー
誰もが知っているファッションブランドであり、誰もが憧れるファッションブランドだ。しかし現代の日本において、そのファッションの歴史における数々のエポックメイキングなプロダクトについて思いを馳せる事は、ともすれば一筋縄ではいかないかも知れない。何故ならば、ルイ・ビィトンの真髄とは「旅」においてこそ見られるからである。一体どれだけの人が、「旅」のシーンにおいてルイ・ビィトンを見出すのであろうか。
財布やハンドバッグではなく、である。
そこで朗報。4月23日より東京紀尾井町において、時代の変化と共に変化していった旅とルイ・ビィトン、そしてそのルーツに迫ることが出来る特別展示『旅するルイ・ヴィトン』展が開催されている。
予想を全く裏切らない、恐ろしくラグジュアリーなこの展示はなんと無料。そもそも展覧とは名ばかりで、その実ちょっとした博物館クラスの規模をも誇る同展覧会。実際の製品に裏打ちされた、確かな歴史の厚みを感じる事ができる展覧会の様子を、写真と共にお伝えしたい。
「Volez, Voguez, Voyagez – Louis Vuitton」(空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン)展では、創業者一族のアーカイヴから今日のルイ・ヴィトンを創り上げる人々にいたるまで、1854年から現在までのルイ・ヴィトンの壮大な軌跡を辿る旅をお楽しみいただけます。
開館時間
2016年4月23日(土)-2016年6月19日(日)
午前10時-午後8時(最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(5/9, 5/16, 5/23, 5/30, 6/6)
※ただし4/25, 5/2, 6/13の3日間のみ午後1時より開館4/23より「旅するルイ・ヴィトン」展開催|ルイ・ヴィトン
[リンク]
会場にたどり着くと、ルイ・ビィトンのラゲージを沢山積んだ黄色い車が出迎えてくれる。今から旅に出んとするかのような、心くすぐられる粋な計らいだ。
中に入ると左右にカフェとショップが見られるが、こちらは後ほど触れるとしよう。先に進むと入場口が見えてくる。混雑時は、事前のオンライン予約が便利だ。改めて言うが、入場は無料。店舗と同様に、極めて丁寧にスタッフが誘導してくれる。また入場の際には、国立博物館で見かけるような音声ガイドを借りる事が出来る。こちらも無料。至れり尽くせりとは当にこの事か。
いよいよ展示室に足を踏み入れる。
まず最初に目に飛び込んでくるのは『1906年のトランク』。
「旅のスペシャリスト」を自負する、ルイ・ビィトンの100年以上前のトランクであるが、近くでまじまじと観察してみると全く無駄のないデザインの中に、『モノグラム・キャンバス』や象徴的なロック、サイドの大きなLVのイニシャルなど今と変わらぬモダンなデザインを見ることができる。
最も目立つ最初の展示に、最もシンプルな長方形のトランクを配するあたりに、ルイ・ビィトンの旅のお供としての真摯な姿勢と自信を感じることが出来る。
ちなみに、こちらが創業者ルイ・ヴィトンさん。
今から150年以上前の1854年に、パリに自身最初の店を開く。
次に見えてくるのは木目調の壁が清々しい『木材』の部屋。
以後この展覧会では、特定のモチーフによって部屋分けがなされている。時系列順に前半は旅、後半はその他様々なシーンにフォーカスされているようだ。
そしてこの「木材」の部屋は、家業が木工製造だった創業者ルイ・ビィトンの最も得意とする分野だった事から、トランクの重要なパーツである木材そのものに焦点を当てている。
壁をそのままキャンバスとした創業者ルイ・ヴィトンの家系図など、壁からは様々な情報を読み取る事ができる。壁はもちろんリアルウッド。どうやらこの展覧会、妥協という事を知らないようだ。
写真や文章などで、ルイ・ビィトンの原点が語られるこの部屋の中央には、木工製造の職人道具がずらりと陳列してある。クラフツマンシップのルーツに触れることが出来るというわけだ。
次の部屋は『クラシックなトランク』の部屋。いよいよ様々な種類のトランクが登場する。多種多様なトランクが展示してあり、そのどれもが目新しい印象を与えるものだった。様々な用途に合わせ、それぞれ異なるトランクを都度作るその多彩さには驚くばかりである。
例えばこの大きなトランク。様々なバリエーションのトランクが、1世紀も前から既に網羅されていた事が伺える。
トランクをただ展示しているだけでなく、細かな小物もしっかりと再現されている。
こちらは『レイエ・キャンバスのトランク』。百年以上前にあったであろう、実際の使用風景をイメージ出来るような配慮にも事欠かない。
このように目の覚めるようなカラフルなトランクも。
また、各部屋の随所には控えめ言ってもかなり多くのスタッフが常駐しており、わからないことがあれば直ぐに教えてくれるだろう。ここまでホスピタリティーに溢れるな博物館は初めてだ。
そして時代は下り、ハーフトラックのような探検隊用自動車が開発されるようになると、ルイ・ビィトンも冒険にアダプトしたトランクを作るようになる。
ヨーロッパ諸国がアフリカ奥地のフロンティアを探し求めた様に、展示もより野心的に。突如として砂漠が『冒険』の部屋に出現したのだ。
驚くなかれ。目を転じてみれば、向かい側には豪華客船のデッキ。
「海風にはためくサマードレスとそのトランク」といった風の光景が再現されている。クラシックなトランクと異なり、手前に見えるのが『スティーマー・バッグ』。使用済み衣類入れとして使われたこのバッグは柔軟性に富み、またそのレザーフレームの開閉システムはその後ファッション業界のデファクトスタンダードとなったという。
ルイ・ビィトンの旅は続く。一般人が自動車を持つ時代になると、勿論自動車用のトランクも作られる様になる。
『スピードを操る自動車の旅』の部屋では、フランスのどこかの並木通りを思わせる細長い部屋の両サイドに、幾つもの車載用トランクなどが展示されていた。
『空の旅』の部屋には、モダニズム溢れる複葉機が登場。
空の上にいるかのような空色の室内には、重量の制約が大きい空の旅にも対応した軽量型ラゲージ『マル・アエロ』などが展示してある。今までのトランクから一転、デザインからして軽そうな印象を受ける。
この展覧会『旅するルイ・ヴィトン』展の、「文字通り旅するルイ・ヴィトン」というスタンスは、留まるところを知らない。
次の部屋はなんと列車を再現。一等車と思しきシックなインテリアの列車には、様々なタイプの旅服がズラリと並ぶ。
車窓からは外の田園風景などが映しだされ、視覚的にも一工夫されていた。
展覧会も折り返し点。次なる部屋は『ウール・ダプサンス(余暇の時間)』。ここからは「旅」から離れ、また違ったルイ・ビィトンの一面を垣間見ることができる。
見どころは、デスク・トランクやライブラリー・トランクなど作家やコレクターに愛用されたであろう、執筆や読書に関するトランクだ。
特筆すべきはこの部屋、壁一面が『モノグラム・キャンバス』で覆われているのだ。かなり抑えられた照明に反射するLVのイニシャルは、非常に豪華で重厚な空気を醸成している。
『セレブのためのトランク』の部屋では、文字通り高級感溢れるトランクやドレスが、まるで王宮の応接間のような空間に鎮座している。白で統一された部屋の天蓋とシャンデリアも非常に分かりやすく、「ゴージャス」。
『洗練されたダンディズム』の部屋では、渋いメンズトランクを堪能することができる。
『ファッションとクリエーション』の部屋では、コンテンポラリーなルイ・ヴィトンのコレクションが多数展示されている。部屋の中央には回転するステージが設置してあり、通常であればまずお目にかかれないであろう『ファッションショー・トランク』が展示してある。そしてこのトランクには、黄色と黒のイールスキン袖なしドレスとラッセルニットの半袖の白いトップで構成された、2015年春夏ウィメンズ・コレクションなどが収納されていた。
室内では実際のファッションショーの映像が流れており、背の高い照明スタンドがスタジオような雰囲気を演出するのに一役買っている。
展覧会も終盤に近づく。
『インスピレーションの国、日本』の部屋では枯山水を模したエリアに、日本アートシーンの著名人とのコラボ作品が優雅に展示されていた。
草間彌生、村上隆、コム・デ・ギャルソンの川久保玲など日本人によるルイ・ヴィトンは、今まで見てきた製品とは大きく違った一面を覗かせてくれる。
日本の部屋を抜けると、最後にルイ・ヴィトンの本物のクラフツマンシップを直に至近距離で体感する事ができる。
本国から来た本物のルイ・ヴィトンの職人が、自分の目の前でレザー製品を手作りしている様子は実に芸術的。
この時は、焼きごてを使って刻印を焼き付ける作業を実演していた。職人技をこんなにも近い距離で見るのは初めてだったので、丁寧ながらも素早い手つきについ見とれてしまう。
以上が、ごくごく一部であるが『旅するルイ・ヴィトン』展の概要である。実際にはトランクやドレス・スーツ以外にも時代を象徴する小物、例えば絵葉書やパッチ、フレグランスなどが所狭しと展示してある。その数は膨大であるため、とても一度に全てを網羅することは難しいが、無料であるため何度でも足を運び、気のゆくままに見学することが出来るのが素晴らしい。
なお冒頭で触れたように、エントランス部分にはモダンなカフェとショップが併設されており、芝生のテラス席で休息を取ることも出来る。
如何であっただろうか、ルイ・ヴィトンによる期間限定特別展示『旅するルイ・ヴィトン』展。正直、無料でここまでの事を経験できるとはゆめゆめ思っていなかったので、非常に満足度の高い展覧会見学となった。
また全体的にホスピタリティーに満ちあふれており、スタッフの数・質ともに「さすがルイ・ヴィトン」。さらに、お土産にB2ポスターまで戴いてしまった。
ラグジュアリーな気分に浸るも良し、ルイ・ヴィトンを通じて服飾の近現代史を勉強するのも良し。少しでもファッションに興味があるなら、見逃せない展覧会と言えるだろう。
ネット・オタクカルチャー全般に対応。専攻は歴史学。ガジェット通信では生放送業務全般にも従事。1年の1/3は海外。将来の夢は宇宙飛行。
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