慶應大・村井教授、IT復興の鍵は「北極」

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慶應義塾大学環境情報学部長の村井純教授

 ITを中心に震災復興策を議論する「IT復興円卓会議」の第3回会合が、2011年9月27日夜に都内で開かれ、ニコニコ生放送で中継された。今回のテーマは「通信・インフラ」。被災地の復旧から、次世代ネットワークのあり方まで、さまざまな意見が交わされた。慶應義塾大学環境情報学部長の村井純教授は「復興の鍵は北極にある。(温暖化で)ついに北極に光ファイバーのケーブルを通せるようになった。各国が死にものぐるいで取りに行っているが、日本がやるべきだ」と壮大な構想を語った。

 今回のゲストは村井氏のほか、ソフトバンク株式会社社長室長の嶋聡氏とNTT東日本福島支店長の澁谷直樹氏、慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏。それぞれが、東日本大震災からの復興に向けてのキーワード・提言を発表した。

 嶋氏は「”電力と通信の融合”がこれからの復興のキーワードになる」と述べ、澁谷氏は「現場力(人を信じる)」とボードに書いた。澁谷氏は「今後5年間で4割の技術者が退職する中、ぎりぎり(人員が)震災に間に合った状況」と話し、電話網を支えてきた退職者と採用者とのバランスが取れない中で、いかに現場の力をつないでいくか重要性を説き、さらに「(通常時は)人的ミスを起こさせないためのプロテクションがあるが、そのために救済に時間が手間取ることもあった。災害時には現場の技術者を信じて、ある程度ガードを外しててでも、復旧スピードを上げてほしい」と緊急時の対応のあり方について今一度議論を求めた。

 夏野氏は、クラウドサービスや周波数オークション、スマートグリッドといったITによる新しい社会システムの構築にはさまざまな障壁があると感じており、「クラウドサービスを推進しているにも関わらず、自社でGmailにアクセスできない企業が山ほどあるのはどういうことか」、「Wi-Fiを無料開放し、簡便なネットワーク網の構築をしてほしい」と求めた。さらに、「例えば、(被災地を)前の状態に戻すだけではなく、徹底的にITが埋め込まれた都市として再興するとか、全く新しいIT復興をやってほしい」と述べ、IT分野へ予算を傾斜配分することを主張した。

 村井氏は、東日本大震災時に東北沖で国際海底ケーブルが切れたが、ケーブルは太平洋側に集まっている点を指摘。そして「今ついに、光ファイバーは(温暖化で)北極を通れる」と語り、

「アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、ロシア、死にものぐるいで取りに行っている。北極は地震がないのでケーブルを引けばずっと持つ。これは日本がやらなきゃいけない。本当の復興は”北極にケーブル”」

と提言。IT復興の鍵は「北極」だとして、かの地の重要性を訴えた。

・[ニコニコ生放送] 村井教授の「北極にケーブル」の提言から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv64628534?po=news&ref=rews#2:03:33

(慶應義塾大学メディアデザイン研究科・永田晃)

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