【孫正義氏も認めたプレゼン術】前田鎌利さん直伝!プレゼンテクニックでキャリアを切り開け!

【孫正義氏も認めたプレゼン術】前田鎌利さん直伝!プレゼンテクニックでキャリアを切り開け! f:id:tany_tanimoto:20160201150238j:plain

あなたのアイデアは、ちゃんと上司に伝わっていますか? 気合いを入れて、ときには徹夜までして仕上げた企画書なのに社内稟議が通らない……そんな悔しい思いをしていませんか?

社内プレゼンのテクニックはキャリアアップに直結する

そう断言するのは、その名もズバリの著書『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)が発売1カ月で3万部を超えるベストセラーとなった前田鎌利さん。プレゼンクリエイターとして、そして書家として活動する前田さんは、ソフトバンク在籍時にあの孫正義社長(当時)のプレゼン資料作成を担当していたという経歴の持ち主です。

プレゼンテクニックを認められ、日本を代表する大手企業の中枢で活躍した前田さんは、どのようなキャリアを歩んできたのか。そして上司や経営トップの首を縦に振らせるプレゼンテクニックの意義とは――? ご本人にお話を伺いました。

営業職で培った“つかみ”の技術がきっかけ

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大学を卒業し、光通信に入社しました。まだPHSが移動体通信の主流だった1990年代半ば、法人向けに携帯電話を売る営業職として配属されたのです。営業方法は主に飛び込みで、毎日100件ほどの企業を回っていました。

当時はまだ携帯電話も高価で、ごく限られたひとしか持っていませんでしたから、「こいつなら話を聞いてやろう」と思ってもらえるまで関係性を築くことが第一。とてもハードな営業でした。訪問先の担当者と仲良くなるためにその会社をすみずみまで観察して、会話の「つかみ」を見つける習慣ができました。「エントランスのお花がきれいですね」とか、そういった類いのことです。

今にして思えば、この頃の経験が僕のプレゼン術の基礎になっているんです。いかに相手の心を「つかむ」か。社内プレゼンの相手は上司であり、社内決裁者であり、ときには経営者の場合もあると思いますが、忙しい相手の立場に合わせて会話をすることがすべての基本だと思っています。

プレゼンの前に大切な「ホウレンソウ」の技術

常日頃、ビジネスの現場で相手の立場に合わせるということを意識するのは、案外難しい。たとえば「ホウレンソウ」。報告、連絡、相談はビジネスの基本ですが、「ホウレンソウが苦手」という人も多いのではないでしょうか。「報告したつもりなのに伝わっていない」とか、「なかなか相談に乗ってもらえない」とか。

ホウレンソウが上手になれば、社内プレゼンの精度も上がります。ポイントは、上司のタイプを見極めること。参考として「ハーマンモデル」をご紹介しましょう。大脳生理学の研究成果をもとに、GEの能力開発センター所長であったネッド・ハーマンが開発した人間の思考・行動特性モデルで、「論理型」「堅実型」「独創型」「感覚型」の4つに分類しています。

論理型…ロジックや、データなどの客観的な事実を重視するタイプ。 堅実型…計画性や実現可能性、実行する際のプロセスを重視するタイプ。 独創型…イノベーティブな新しい提案を好み、ビジョンやストーリーを重視するタイプ。 感覚型…人間関係や他部署との関係、コミュニケーションを重視するタイプ。

こうしたフレームを知っておくことで、上司の思考・行動特性に合わせたホウレンソウができるようになるでしょう。論理型の上司に対してはこまかな数字の間違いもアウトです。堅実型なら明確なスケジュール感を持って話をするべき。独創型の上司にはまず話の全体像を把握してもらえるように結論から伝える。感覚型であれば他の関係者のコンセンサスを得た上で相談を持ちかければうまく進むかもしれません。

この考え方は社内プレゼンを成功させる上でも大切です。もちろんすべての人を上記の通りに分類できるわけではありませんが、相手のタイプを考える上での参考にはなるはず。上司や社内決裁者をよく知る先輩や同僚に、「どんなタイプの人なのか」を事前に聞いておくと手っ取り早いかもしれませんね。

「3分で伝え、承認を得る」ための資料作りを考え抜く

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僕自身は、もともとプレゼンが得意なほうではありませんでした。光通信からJ-フォンに移り、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)と移動体通信事業に携わる中で経営戦略を練るような仕事にも関わるようになりましたが、始めの頃は自己流で作っていたプレゼン資料を上司に何度も却下され、再提案を求められるなど、苦労の連続でした。一度却下されると再提案の機会まで1カ月のブランクが空いてしまうことも。それで、プレゼン資料の作り方を徹底的に考え抜くようになったんです。

経営トップである孫さんの意思決定はとにかく早くて、次々と課題が下りてきます。会議で社内プレゼンをする際に与えられる時間は3~5分。そんな環境だったので、「短時間でいかにしてプレゼン内容を効果的に伝え、承認を得るか」ということに知恵を絞りましたね。

「何が課題になっているのか」

「その原因は何か」

「原因を解消する解決策は何か」

「解決策を実施すればどのような効果が見込めるか」

資料は簡潔に、この4つの要素だけで構成すれば、ロジックがシンプルになり、伝わりやすくなります。もちろん提案に際してはさまざまなデータや数字を集めるのですが、資料に盛り込むのは必要最低限の部分だけ。その他は「アペンディックス(別添資料)」として手元に置いておき、データや数字の背景をこまかく質問されたときにだけ使います。「3分で理解してもらい承認を得る」ためには、まず決裁者にとって分かりやすく、簡潔な資料であることが大前提なのです。

古来より伝わる書道の知恵をプレゼン資料に

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僕のプレゼンテクニックの礎には、幼い頃から続けている「書道」があります。書道の奥深さは余白の見せ方……つまり「白をどう使うか」にある。メッセージをシンプルにして、伝えるための力強さを備えたフォントを使い、文字の配置を工夫するという資料作りの要点に、この考え方を取り入れました。

たとえばフォントに関しては、Powerpointであれば「HGP創英角ゴシックUB」、Keynoteであれば「ヒラギノ角ゴStdN」がおすすめ。目に入りやすく、文字に力強さを与えてくれるフォントです。他にも「メイリオ」など可読性に優れたフォントは多いのですが、プレゼン資料はインパクト勝負。もちろんスクリーンに投影するのか、紙資料として配布するのかといった状況によって最適なフォントは変わりますが、「文字の力強さ」という観点は大切だと思っています。

f:id:tany_tanimoto:20160201150725j:plain スライド例

文字の配置では、「重要なメッセージはスライド中央よりやや上に置く」ことが大切です。資料をスクリーンに写す場合、決裁者はおそらく座った状態で見上げることになるでしょう。その角度で資料を見たときに重要なメッセージが中央かそれより下に配置されていると、窮屈な印象を与えてしまうのです。

古い日本家屋やお寺の壁上部にはよく横書きの書が掲げられていますが、あれはすべて紙の中央より少し上に文字が書かれています。下から見上げる人に窮屈さを感じさせないための工夫ですね。古来より伝わる書道の知恵は、プレゼン資料を作る上でも大いに参考になっています。

意思決定数を増やせる会社が勝っていく時代

最近ではプレゼンテクニックについて講演や研修を行う機会も増えてきました。IT系や医療系、プロスポーツリーグ運営団体など、依頼される業種はさまざまですが、「社内会議をクリエイティブな場にしたい」という目的は共通していますね。

よくあるダメな会議の例としては、「提案者が長大な資料をもとに40分間説明して、2分で決まる」といったような流れ。長々と説明するプロセス自体が目的化しているようなケースですね。決を取る内容については事前に根回しが進んでいる。このやり方だと、1時間の会議で決裁できる案件が1つだけです。

根回しをするなら、説明の時間も資料も必要ない。そもそも最近では、どんな業界でも社内会議のために根回しをしているような暇なんてない。ビジネスに求められるスピードが増す一方の現代では、同じ1時間の会議でいかに決裁案件を増やすかが大切になってきていると感じます。これからは意思決定数を増やせる会社が勝っていくのではないでしょうか。

だからこそ、シンプルに提案内容を伝えられるプレゼンテクニックが重要なんです。

話し下手でも大丈夫。社内プレゼンの勝敗は「資料作り」で決まる

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研修を重ねる中で感じるのは、「プレゼンが苦手」だと考えている人の多くは「人前で話すことが苦手」だということです。不安だからこそ、資料をカンペ代わりにしてたくさん書いてしまうのかもしれませんが、これは効果的なプレゼンを行う上ではまったくの逆効果になってしまいます。

意思決定者は一つの会議の中で、たくさんの資料に目を通さなければなりません。その立場に立って考えてみれば、長い提案資料は迷惑でしかない。「社内プレゼン資料は5~9ページにまとめるべし」。資料は読ませるものではなく「見せる」ものなんです。

データや数字のロジックが明確で、シンプルに分かりやすく伝えられる資料があれば、話下手でもまったく心配はいりません。少しぐらい噛んだって問題なし。そういった意味では、社内プレゼンテクニックは誰もが身に付けられる技術だと思います。

プレゼンテクニックでキャリアを切り開け

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ソフトバンクでは、一般社員が社内事業提案に挑戦できる場が与えられていました。最近ではこうした制度を導入している大手企業が増えてきていますね。僕はこうした機会に積極的にチャレンジして、孫さんに自分のプレゼンを届ける機会をつかむようにしました。結果的にアイデアが認められ、さまざまな事業を立ち上げるチャンスに恵まれたのは、プレゼンテクニックを磨き続けていたからだと思っています。

プレゼンテクニックを磨くことは、自身のキャリアを切り開くことに直結します。どんなに優れたアイデアも、人に伝わらなければ意味がない。いかにして意思決定者へ、経営トップへメッセージを届けるか。特に大きな組織で働く人ほど、そのスキルを身に付けるべきではないでしょうか。

前田鎌利さん/一般社団法人 継未-TSUGUMI-代表理事、書家

1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に入社。その後J-フォン(現ソフトバンク株式会社)に転職。2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料作りを数多く担当。ソフトバンク子会社の社外取締役やソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍後、2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、ベネッセコーポレーション、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。著書に『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)。2016年2月、社外向けプレゼンの極意を説いた新著が発売予定。

前田鎌利さんウェブサイト

WRITING 多田慎介+プレスラボ PHOTO 安井信介

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