「何も無い。駅名標しかない」 写真で振り返る「被災鉄道」の惨状
週刊誌『AERA』とニコニコ動画のコラボ企画が2011年8月19日、ニコニコ生放送で始まった。第1回目のテーマは「震災と鉄道」。東日本大震災により大きな被害を受けた太平洋沿岸の鉄道路線では、いまだに400キロ以上が運休中だという。そして、その内の大半は運行再開の見込みすら立っていない。番組はそんな鉄道網の被害状況を、写真を通して視聴者に伝えた。
番組では、東日本大震災で甚大な被害を受けた被災地の駅が、衝撃的な写真とともに次々と紹介された。被災した駅を撮影したカメラマンの今祥雄さんは、印象に残った駅の一つに、大津波の後に発生した大規模火災によって焼け落ちた、陸中山田駅(岩手県)を挙げた。今さんは陸中山田駅を訪れたときの印象について「足を踏み入れるのも躊躇するくらいの惨状だった」と述べた。
甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市にある陸前高田駅の写真が映し出されると、その惨状に出演者らは絶句。4月に現地を訪れたというAERA編集部の福井洋平さんは、その時の様子を「何も無い。駅名標しかない」と述べた。また、鉄道ジャーナリストの小野純一さんは「(震災前は)駅舎の前に大木が2本だか3本ありまして、夏に行ったときはそれが木陰を提供してくれたが、その大木まで幹が二つに折れて流された」と話し、陸前高田駅の震災前の様子と比較して、大津波が残した爪痕の凄惨さを強調した。
そんななか、心温まるエピソードを紹介したのは、ライターの小林沙友里さんだ。震災発生直後、常磐線の新地駅(福島県)では列車が津波にのみ込まれた。乗客40人を救ったのは2人の警察官だったという。相馬署地域課の斎藤圭巡査と吉村邦仁巡査は、大津波が迫っていることを確認するとすぐに乗客を誘導し、全員を無事に避難させた。2人に話を聞いたという小林さんは、彼らの発言が「印象的だった」と話す。斉藤巡査は小林さんの取材に対し、駅に留まろうとするおばあさんを懸命に説得したことや、たまたま通りかかったトラックに乗って避難したことなどを挙げ、「いろいろな偶然が重なって助かった」と述べたという。また、吉村さんは「もし自分が当時スピーカーを持っていたら、電車に乗っていた方々だけではなくて近隣住民も一緒に避難できたのではないか」と振り返ったそうだ。
このほかにも数多くの印象的な写真とエピソードが紹介され、「ビジュアル重視で鋭く切り取る」という週刊誌『AERA』ならではの番組となった。
(三好尚紀)
◇関連サイト
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv60507558?po=news&ref=news#23:08
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