知らない間に実名で発言!? Webのアカウント紐付けサービスにご用心
「個人情報を登録」は諸刃の剣
SNSには個人情報が満載です。特にFacebookは、氏名、生年月日、出身校、勤務先、既婚か未婚かなどなど、多くの個人情報を登録することができ、サービス側も個人情報の入力を推奨しています。
個人情報をしっかり登録して公開すれば、友人・知人との交流はスムーズにいきます。古くからの友人があなたのプロフィールや投稿を見て「お、高校の同級生だった増田君、いま地元企業で経理部長をやっているのか…… え、離婚しちゃったの!? あんな盛大な結婚式をやったのに!」と、同窓会を開催しなくても、相手に近況を伝えることができ便利ですね。
一方で、あなたの個人情報が第三者に漏洩する危険性も高くなります。ネットで炎上行為を行ったユーザーが、2ちゃんねるやまとめサイトに取り上げられて、SNSのデータを元にさらに盛り上がる事例はみなさんもご存じでしょう。一般ユーザーが炎上事件に巻き込まれる確率は宝くじで300万円当てるより低いのですが、就職・転職活動を行う際に、企業の採用担当者があなたのSNSデータを確認している事例は珍しくありません。
SNSは宝の山
採用担当者にとって、応募者のSNS情報は宝の山です。
送られてきた履歴書は、応募者自身が書いたものであり、お見合いをする際の釣書(身上書)と一緒で、自分にとって都合が良い情報しか書かれていません。履歴書のなかでは、みんな紳士・淑女なのです。本当はどんな人間なのか? 採用担当者はそれが知りたいのです。
もし応募者がFacebookに活発に投稿し、第三者でも閲覧できる状態であれば、採用担当者が望む情報が存在する可能性があります。投稿したコメントから本音が判明し、アップされた写真からどんなライフスタイルを送っているかを推測できます。注目すべき点は友人関係です。どんなタイプの友人たちと付き合っているのかを調べれば、その人の本質がよりわかります。
もちろん、採用担当者がSNSの情報を見て「この人は素晴らしい。すぐに採用だ!」となれば問題はありません。しかし、応募者多数の場合は、採用基準は減点主義傾向になりがちです。減点主義では、子犬を拾って世話をしたり、重い荷物を抱えたおばあさんを助けたことといったプラス行為よりも、飲み会で泥酔して裸になった写真をアップしたといったマイナス行為の方が大きく捉えられます。
採用担当者にとって、応募者のFacebookのアカウントは、LinkedIn以上に「公開履歴書」なのです。
ニュースサイトのコメント投稿が危ない
数年前、コンビニエンスストアの冷蔵庫に入ったり、調理場でふざけた写真を従業員がTwitterにアップし、社会問題となりました。それ以降、多くのネットユーザーは
「個人情報をむやみにインターネットにあげると危険だ」
「インターネット上で反社会的、モラルに反することを書いたり、アップロードするのは良くない」
ということを学びました。
一連のTwitterでの事件をきっかけに、ネット上でモラルに反する行為を公開する人は減りました。この記事を読んでいる皆さんも、ネットリテラシーが高く(なぜならリテラシーが低いユーザーは最初からこの記事に興味を持たないでしょう)、「ネットの怖さは良く知っているよ。だから注意している」という方ばかりでしょう。そして「就職活動時に採用担当者に見られるリスクを理解している」人も多いでしょう。
しかし、そんなインターネットの怖さを知っている人でもやってしまう失敗が「Facebookに紐付けされたアカウントでうっかり発言」です。注意深く運用していたFacebookアカウントも、この失敗で一気に「採用担当者が見たらよろしくない情報源」になる可能性があります。
気軽に発言したコメントで「見られたくない履歴書」になる可能性が!
TwitterやFacebookのアカウントを連携させれば、新しくユーザー登録をしなくても利用できるWebサービスが増えています。私が個人的に注目しているのは、Yahoo!ニュースのコメント欄です。Yahoo!ニュースの月間PV数は約100億*1。約200社、300媒体以上からデイリーで4000本近いニュースを提供されている、日本最大級のニュースサイトです。
Yahoo!ニュースは、各記事の下に読者のコメントを投稿できるシステムがあります。Yahoo!のアカウントでも投稿できますが、Facebookのアカウントでもポスト可能です。そして、驚くことにFacebookと連携させた投稿は、Facebookに登録した氏名と所属がそのまま表示され、あなたのFacebookアカウントにリンクされています。
Facebookのアカウントでもコメントを投稿できるポジティブな内容ならば問題ありませんが、あなたがイライラしていたり、酔っ払っている状態で、政治・宗教・人種・差別といったセンシティブなテーマのニュースに、うっかり酷いことを書き込んだら大変です。気がついて自分で削除をすれば傷は浅くて済みますが、書き込んだことをすっかり忘れていたり、自分の書き込みは注目されないだろう……と考えて何も対策をとらないのは危険です。
うっかりした書き込みは永遠にネットに残ります。現在は就職・転職活動をしていなくても、将来、あなたの読まれたくないコメントが発見される可能性があるのです。採用担当者があなたの名前を検索し、コメント欄の書き込みを発見。酷いことを書いているけど、同姓同名かな? と思いつつ、リンクされているFacebookのアカウントを見ると本人だった……不採用決定の瞬間ですね。
それだけではありません、もしあなたの罵詈雑言が、運悪く2ちゃんねらーや炎上を取り扱うサイトに発見されたら、野次馬根性や暇つぶし、PV稼ぎのため格好のネタになってしまいます。Facebookからあなたの個人情報はほぼ丸裸となり、あなただけでなく所属している組織や関連している会社にまで被害が及ぶ可能性があります。
リアルワールド以上に、ネットでは紳士・淑女たれ
インターネットの炎上は交通事故と一緒で、「自分は被害にあわないだろう」と甘い認識を持っている人がたくさんいます。特に、ネットリテラシーが高い人ほど、己のスキルと経験からくる自信があるため、その傾向が強いです。
Facebookのアカウント連動したコメント欄の危険性は、まだあまり知られておらず、注意も払われていないので、ある日突然トラブルや不利益になる実態が発生するかもしれません。炎上に巻き込まれたら嫌でも実感し、対策を考えますが、就職活動の不採用の材料にされた場合は、本人は絶対に気がつきません。こちらの方が恐ろしいですね。
これらの悲劇にまきこまれないようにする対策は1つ。それは現実社会以上にインターネット上で紳士・淑女になればよいのです。他人に攻撃されるのではなく、他人のお手本となる生き方を行うのです。
「え、いきなり紳士・淑女になるなんてできない!」
という方もいるかもしれません。そんな方に一読してほしいのが、Facebookが公開しているプライバシー基本ガイドというページです。その中でも特に「自分の情報の共有範囲」という項目は、自分が投稿した情報がどのように他人に伝わるのか、どこまで非公開にできるのかが書かれています。
Facebookプライバシー基本ガイドの「自分の情報の共有範囲」まずは、公開・非公開の設定を学び、公開している場所はインターネットの「公共」、非公開は「プライベート」だと捉えましょう。そして「公共」の場所だけでも、紳士・淑女に振る舞えばよいのです。どうです、これなら簡単でしょう。そして、SNSアカウントと紐付けされているサービスでは、「公共」として活動すれば問題ありません。
著者:Hagex (id:hagex)ネットウォッチャー。2004年、ネットウォッチ日記「Hagex-day.info」を開設。日記では2ちゃんねるエピソード、炎上事件の観察記、釣りエピソードの鑑定、ネットデマの検証などを行って支持を得る。月間平均PVは300万と、個人ブログとしては希有。マスコミ企業に勤務後フリーランスとなり、現在はネットメディア企業に勤務している。著書に『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(アスキー新書)がある。
※記事公開時、誤字・脱字がありました。読者様からのご指摘により、1月28日(木)18:20ごろ修正いたしました。ご指摘ありがとうございました。
*1:http://staffblog.news.yahoo.co.jp/newshack/yahoo100pv_pc.html 参照
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