「ニコ動ユーザーの発想にはいつも驚かされる」Yahoo!映像トピックス編集部に聞く

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Yahoo!映像トピックス

 ニコニコ動画が主催する「動画アワード2011(夏)」のグランプリが2011年8月31日に決まる。「動画アワード」はニコニコ動画に投稿された動画の中から、視聴者の投票によってグランプリを決めるコンテストだ。今回は審査する側にYahoo! JAPANが運営する映像サービス「Yahoo!映像トピックス」が初参加。グランプリとは別に「Yahoo!映像トピックス特別賞」が設けられることになった。

 Yahoo!映像トピックスとは、どのようなサービスなのか。どういった動画を扱っているのか。そして「Yahoo!映像トピックス特別賞」の選考基準とは。その”ヒント”を求め、ヤフー株式会社メディア編集部の映像トピックスの岡田聡編集デスクに聞いた。

■ニコ動の存在も追い風になった? Yahoo!映像トピックスの成長

――Yahoo!映像トピックスはどのようなコンテンツなのでしょうか。

岡田デスク(以下、岡田):  Yahoo! JAPAN上で2009年から始まったサービスで、ウェブ上の動画のなかから、私たち編集者がお客様に見ていただきたいと思うものを紹介しています。映像を「音楽」や「スポーツ」といったカテゴリ別に探したり、お気に入りの映像を登録したりすることができます。ページ下部には関連リンクをつけることで、動画に興味を持った方がさらなる情報を得られるよう工夫もしています。

――対象はどの年代ですか。

岡田: Yahoo! JAPANのお客様は10代から60代と年齢層が幅広いんです。でも、年代を意識しだすと動画の選択が歪(いびつ)な形になってしまうので、あまり意識はしていません。ただ、エンターテインメントのジャンルは特にそうなんですが、20代後半から30代にかけてのお客様が反応するようなものが多いのかなと。ニコニコ動画に投稿されている初音ミクなどのネットユーザー発のコンテンツも積極的に紹介しています。

――1日に何本くらいの動画をチェックするのですか?

岡田: 数名のスタッフで、日に200本以上は見ていますね。ですが、いま世界中で一秒間に何時間分もの動画が公開されています。だから本当は数十人くらいで面白い動画を探したいんです(笑)。

――これまで運営してきて動画やユーザーの変化を感じることはありますか。

岡田: 映像トピックスの開始当時と比べて動画そのものの環境が大きく変わっていると思います。ニコニコ生放送やUSTREAM、YouTubeなどの影響もあってか、インターネット上で動画を見るのはスタンダードになっているのではないでしょうか。実際にサービスを開始してから、Yahoo! JAPANのトップページに載せているとはいえ、動画を見てもらおうとするのは、かなりハードルが高かったんです。その中で高い成長率を維持できているのは、ニコニコ動画をはじめネット動画を楽しむ方たちの盛り上げや映像コンテンツ業界からの風があったからだと思います。

■「私たちはいわば、勝手にお節介をやいているんです」

Yahoo!映像トピックスの岡田聡編集デスク

――動画をトピックスに取りあげる際の基準はありますか。

岡田: 「これが良い」「これが劣っている」と価値判断をしているわけではなくて、テレビ局やコンテンツ制作会社をはじめ、世界各地で話題になっている動画、アルファブロガーやユーザーから教えていただいたものを総合的に判断して紹介しています。基本的に、私たちは見つけてきた動画にリンクをすることが仕事なんです。その作品を見たときに、新しい世界との出会いとなるためのきっかけを作っています。紹介した動画のあとには関連リンクで動画の制作者の新しい作品や、まったく別の方の関連性の高い動画を紹介することもあるります。つまり私たちは、お客様に対し勝手なお節介をやいているんですね。

――どの動画をトピックに取りあげるか、編集部で意見が食い違うことは?

岡田: 多少あります。私たちも一人の動画好きとして好きな作品を紹介していいという方針なので。自分の好きなジャンルに没入する人もいます(笑)。もちろん全体のバランスは考えますが、気持ちとしては複数人でひとつのブログをやっているような感覚です。

――「カメラがへたくそ」「画質が悪い」など技術的な面で動画に不満を抱くことはない?

岡田: それはないですね。誰でも最初はみんな稚拙ですから、技術の上手・下手は過度に重要視しません。何を撮ろうとされたのか、それが重要かなと思います。私はもともと情報誌の編集者をやっていたんですが、その雑誌ではかつてアマチュアの自主映画も、プロの映画も並列的に紹介していました。それと同じように、Yahoo!映像トピックスでも分け隔てなく並列に紹介したいなと考えています。その中から新しいクリエイターさんが生まれてくれば面白いなと思うんです。そういう一般の人たちの動画を積極的にとりあげていきたいし、Yahoo! JAPANのお客様に見ていただきたい。それをきっかけにテレビや映画で活躍するような人が現れたら嬉しいですね。

■「ニコ動ユーザーは斜め上の発想が面白い」

――岡田デスクがいま注目している動画は、どういうものですか。

岡田: アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)の公式動画が面白いですね。ふつう、試合のハイライト動画を流したところで人気がでないと思うんです。ところが試合中のある局面、たとえば「延長19回で誤審があった」「その時の観客の様子は?」というシーンを整理して分類した状態で提供するのがMLBの特徴で素晴らしいところだと思います。インターネットでのある種ライトな映像の楽しみ方、動画視聴スタイルにマッチしてると思うんですね。

――「動画アワード2011(夏)」の審査では、どのような点を重視するのでしょうか。

岡田: ニコニコ動画のユーザーさんが作られる作品はすごく質が高いですよね。発想がもう、誰も及びつかないような「斜め上」の発想をされるので、それを純粋に楽しみたいと思います。むしろ、型にはまったものというよりも、そこから逸脱するような感覚の作品があると面白いかなと。あとはオリジナルで勝負している方の作品も見たいですね。

 「動画アワード2011(夏)」では、グランプリを受賞すると賞金が出ると聞いています。 機材が安くなったり、自分で編集できるようになったりと、動画の制作者が増えましたが、動画を作るのにもお金かかると思うんです。新しい才能が出てくる可能性が大きくなっている時代だと思うので、ぜひ機材を買うお金を返せてあげればと思います。

――Yahoo!映像トピックスの果たす役割は大きくなっていきそうですね。

岡田: 先ほども言いましたがYahoo! JAPANのいいところは、幅広い客層に見てもらえるところだと思います。以前、ある大学生の卒業制作だという動画をトピックとして取り上げたら、その学生さんがブログでそのことを書いてくれていたんです。もともと映像をどこかで発表しようとしていたらしく、Yahoo! JAPANのように幅広いお客様がいらっしゃる場所に掲載されたことで、「老若男女、多くの方々から意見をいただけてよかった」と。これは私たちも嬉しかったですね。これからも私たちは裏方に徹して、ネットにある動画に接する機会を増やす仕事を続けていければと思います。なので、動画を作られたら、ぜひ教えていただけると嬉しいです。Yahoo!映像トピックスを「発表の場」としてとらえてもらえればと思います。

 「動画アワード2011(夏)」では8月8日から22日まで、ユーザーによる推薦動画を募集している。ただし、対象となる動画は2011年4月から7月末までに投稿された動画に限られる。「動画アワード2011(夏)」最終審査の模様は8月31日にニコニコ動画で生中継され、グランプリ受賞者には賞金25万2525円とトロフィーが贈呈されるほか、「Yahoo!映像トピックス特別賞」も決まる。

(松本圭司)

◇関連サイト
・Yahoo!映像トピックス – ツイッター
http://twitter.com/YahooEizoTopics
・Yahoo!映像トピックス – フェイスブック
http://www.facebook.com/YahooVideoTopics
・ニコニコ動画 動画アワード2011(夏)
http://info.nicovideo.jp/award2011/summer/

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