会議の進行役を任されたら?すぐ使える「ファシリテーション」テクニック

会議の進行役を任されたら?すぐ使える「ファシリテーション」テクニック

次の会議の進行役を任せる」と言われたら、さて、あなたはどうしますか?

依頼された会議が上司や先輩も多く参加する場だったら、やっぱり緊張しますよね。中には、「自分にはリーダーシップなんてないし…」「口下手だからうまく進行できる気がしない…」「好き勝手なこと言う人が多いから、自分がとりまとめられると思えない…」なんて、不安を感じる人もいるのではないでしょうか。

しかし「会議ファシリテーション」の専門家によると、「優れたファシリテーターには、リーダーシップや統率力などは必要ない」とのこと。また、「ファシリテーター」としての専門的訓練を積まなくても、「誰でも使えるテクニック」によって、会議をうまく進行することができるそうです。

そこで、会議を有意義なものにするための進行のコツについて、会議ファシリテーター普及協会代表の釘山健一さんから教えていただいたノウハウをまとめてみました。

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「合意形成型」の会議なら、参加者の充実感・満足度がアップ

まず、せっかく時間をとって会議を行っても、参加者の多くが「ムダ」と感じてしまうのはどういう場合でしょうか?

それは、会議で決定されたことに「納得」していない状態のとき。会議が多くても、長くても、それがよい効果に結びついていれば、我慢できるものです。しかし、「会議ではああいう話になったけど、現場は現場でやっていこう」なんてことでは、会議はムダで面倒なものでしかありません。

そうなってしまうのは、会議の目的を「結論を出すこと」に置いてしまうから。そこで登場したのが、会議の目的を「決める」ではなく「参加者が納得する」という点に置く「合意形成型会議」です。このタイプの会議の進行役を「ファシリテーター」、そのスキルを「ファシリテーション」といいます。

では、「合意を図る」にはどうすればいいか。それは「できるだけたくさんの意見を引き出す」こと。そのために、自由な雰囲気で、活発な発言が交わされる場を作ります。そして、もっとも大切なことは、出た意見についてファシリテーターが整理するのではなく、参加者自身に整理をさせることです。自分たちで整理することにより、合意を図っていこうという意識が生まれるのです。

「意見がある方、どうぞ」からスタートするのはNG

それでは、具体的な進め方として、簡単にできる方法をご紹介しましょう。

会議中全体を通して、「ファシリテーターのあり方」は次のとおりです。

・教えない ・目立たない ・リードしない ・引っ張らない ・意見を言わない ・仕切らない ・元気に話さない ・中立 ・引き出す ・支援する

くれぐれも、従来のリーダータイプの「議長」のイメージにとらわれないようにしてください。さて、まずはその日のテーマの議論をどうスタートさせるか。

このテーマについて、意見がある方、お願いします

これはNGです。

まっさきに手を挙げて、長々と話す「困ったちゃん」を生んでしまうからです。困ったちゃん数人が議論を始めると、他の参加者が発言しなくなってしまうのはよくありがちな光景。結果、参加者全員が納得しないうちに「一番声が大きい人」「一番偉い人」の意見が結論とされ、現場での実践に結びつかないことになり得ます。

そうした事態を防ぐためには、会議のスタートは「発言」させるのではなく「考える」時間にします。具体的には、まず参加者全員に付せんの束を配ります。サイズは「7.5cm×10cm」のものがオススメ。なるべく多めに用意しましょう。そして、「このテーマについて5分間(10分間)、自分の意見を書き出してみてください」「1つの意見・アイデアにつき、1枚の付せんに書いてください」と促します。

この方式なら、手を挙げて発言するより、より正直な考えをアウトプットしやすくなります。

自分の考えを書き出すだけでも、参加者は胸がスッとして満足感を得るものです。また、普段「思いつき」で適当な発言をしてしまうメンバーであれば、一旦紙に書いて眺めることにより、冷静に考えられるというメリットもあります。

そして、テーマについて「解決法」や「アイデア」などを出し合う場合、「10個」「20個」など、書き出す数を指定しましょう。このとき、多めの個数を設定します。目標個数を達成するために、かなり頭を絞らなければならない状況になれば、さまざまな角度から考えるようになります。普段とは異なる視点のアイデアが生まれたり、脳が活性化したりすることで議論が活発化するでしょう。

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全員の意見を共有し、それぞれの考えや視点をもとに話し合う

次のステップでは、書かれたことを全員が共有します。口で話し合う既存の会議のやり方では、発言力の強い人が会議を仕切ってしまうことになります。

しかし、「付箋に書く」ということで、普段は会議で発言できていない人も、自分の意見を会議のテーブルに乗せることができ、「偉い人」の意見と平等に検討されます。

そして、ここからの進め方は、

意見が書かれた付せんをホワイトボードにすべて貼り出す(模造紙に貼り、テーブル上に置いても可) 似ている意見が書かれている付箋を集めて、1ヵ所にまとめて貼り直す 集めたものを1グループとしてマーカーで囲む 丸で囲んだグループにそれぞれ見出しをつける

この時のポイントが、これらの作業をファシリテーターがやるのではなく、参加メンバーが皆で行うようにすることです。このとき、立ったり座ったりする動作が発生しますが、こうして身体を動かすことは「主体的な意識」の向上にもつながります。ファシリテーターは、メンバーに対し、「自分から立ち上がって何かをする」ように、さり気なく誘導することを心がけてみてください(無理に立たせるのはNGです)。

こうしてひととおりの意見の書かれた付箋を並べると、「多くのメンバーが共通して考えていること」「少数派だけど新しい視点」などが見えてきます。出た意見を参考にしながら、メンバー全員で考え、メンバー自身で意見をまとめていきます。

このとき「いい意見を選んでください」ではなく「ひとつの意見にまとめてください」という促し方をするようにしましょう。「選ぶ」は対立を生む行為で、「まとめる」は協力の行為であり、それが話し合いを合意へと促すのです。

なお、会議の参加者が十数人~数十人と多数の場合、4~5人程度のグループに分けて、グループごとに考えてもらい、後で発表してもらう形にします。

「会議の終え方」も、参加者に決めさせる

会議終了の10分前、まだ意見が分かれている状態だったとします。

ここで「結論を出さなくちゃ」と焦る必要はありません。「どう終えるか」を参加者に問いかけることこそファシリテーションの真骨頂です。つまり、「皆さん、あと10分しかないのですが、このあとの進行はどのようにしましょうか?」と問いかけます。

参加者の主体性を引き出すために、全体に共通する、ファシリテーターの「黄金の言葉」があります。

それが、「みなさん、どうしましょうか?」です。

これでいいのです。「こんな問いかけをしたら、自分に主体性がないようだが、いいのだろうか」と思うかもしれませんが、会議のファシリテーターは「考えさせる」のが重要な役割。下手にリーダーシップをとって自分がまとめると、参加メンバーには依存心が出てしまいますし、結論に対して「押し付けられた感」を抱くかもしれません。

「全員が主体性と納得感を持つ」。そんな会議にすることで、参加者の満足度が増し、会議を仕切ったあなたへの評価もアップするはずです。

釘山健一氏/会議ファシリテーター普及協会 代表

学習方法の開発に情熱を燃やし続けた熱血教師時代、ベンチャー企業の営業部長として猛烈に働いたサラリーマン時代を経て、環境NPOのスタッフとして数多くの「協働事業」に関わる。2005年には「愛・地球博」におけるEXPOエコマネー事業の事務局長を務める。この3つのキャリアを積む中で培った「会議の仕方」について、独自のノウハウを確立。2006年4月「会議ファシリテーター普及協会(MFA)」を立ち上げる。年間100本のファシリテーター養成講座を開講。著書に『もっとすごい!非常識な会議』(ソフトバンククリエイティブ)『会議ファシリテーションの基本がイチから身につく本』(すばる舎)など。

EDIT&WRITING:青木典子

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