「あと1発の事故は絶対に起こしてはいけない」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(8)
グロービス代表堀義人氏のツイートがきっかけで2011年8月5日に実現した「『孫正義×堀義人』トコトン議論 ~日本のエネルギー政策を考える~」。孫正義氏と掘氏のフリーディスカッションだけで2時間を超えた。討論の後半には、孫氏が「あと1発、(原発)事故がおきたらもう大変。そのことは堀さんも同意いただいた」と語るなど、両者の意見が合致する部分も見えてきた。
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv58739430?po=news&ref=news#2:56:36
以下、孫氏と堀氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する。
「たいがいにせい!利益は1円もいらない!」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(7)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw97499
■「東芝や日立は原発を作ることも社会貢献と思っている」。
堀義人氏(以下、掘): 一方では、東芝にしても三菱重工にしても日立にしても今、原子力を輸出しているわけですが、世界のエネルギーに対して貢献していこうという気持ちでやっているわけです。CO2も減るし。それに対して、否定をするのではなくて肯定的に見ていただきたい。
孫正義氏(以下、孫): 僕はそもそも東芝や日立の人にも一度言っておきたいことがある。今回、東電だなんだと強烈に批判されているけど、そもそもが東芝や日立に対する批判が少なすぎるんじゃないかと。彼らが(原発を)納めたのではないのか。
堀: 今回、GE(ゼネラル・エレクトリック)のやつですよね。
孫: GEのやつをマネージしているわけですよね。GEの人にも聞いたけど、GEの人は「私は発注されたスペックのときには『震度はこのくらい未満であればよろしい』と、発注された通りのスペックで収めました」と居直っている。発注した側は「このくらいしか震度はないんだ。津波は無いんだ」と言ったからそういう設計だった、と。もっと震度があるかもしれない、津波があるかもしれないというならば、もっと頑丈なものを作っていたというわけですよね。
だから発注する側の責任と、その発注に関わったエンジニアも含めて、その後のオペレーションをやっている東芝や日立の人は、そのことについてぜんぜん頬かぶりということについて、僕はいささか疑問がある。その上で(原発を)海外にどんどん輸出しようと(している)。最終処理手段がまだ見えていないにも関わらず、最終処理手段がはっきり「私は最終処理方法はこれです」と自信を持って彼らが言えるならば、しかも「安全です」というならば、どんどん輸出していいのかもしれない。まだそれでもクエッションマークが3つあるけど。でも最終処理手段が見えていない。いま起きた事故について、自分が関わっていたものに対しての事故処理がまだやれていないという状況の中で、「原発を輸出させてもらわないと日本の国力が落ちる。経済が不況に陥る。日本の優れたものの輸出を止めてけしからん」と言われても、「ちょっと待って」と僕は思う。
堀: 孫さんが例えばソフトバンクの新会社、新エネルギーに取り組んでいるというのは、社会貢献ですよね。
孫: そうです。
堀: 原子力(発電所)を作るということもこれは社会貢献だと彼らは思っている。孫さんは違うと思っているかもしれない。例えば実際には海外においては、コストの問題を含めて太陽光や風力によって(電力を)賄えない国も多くあるわけです。そういった国に対して、日本のテクノロジーを持って輸出していくと。安全性がもっと高いものを導入していくというのは、日本の社会への貢献だと思う。それをもって「けしからん」ということは・・・。
孫: それが本当に社会貢献かも僕はわからない。それでその結果、その経済的には貧しい国で「こっちのほうが安いからこっちでいこう」と(いうように)、そもそも経済的に苦しい国が、本当に十分安全な運用をできる余力があるのかどうかも僕にはわからない。
万が一、そこで事故が起きたときに、すみやかに適切な処理がその国のマネージメントでやるのかも僕にはわからない。それでもし、万が一事故が起きたときに、今まで社会貢献のつもりで立派に高い志でやったけれども、結果40年のものが水の泡になるくらいの大きな事故になったと(いうことがあるかもしれない)。社会貢献のつもりで経済的に苦しい国にこれを輸出しました。でも結果、何十年か先にその国の人々に恨まれるかもしれない。だからそれについては、本当に社会貢献かどうかも僕にはわからないというのが僕の正直な気持ちです。少なくとも彼らには最終処理の手段すら提供できていない。我々だって最終処理の手段を持っていない。
■「もんじゅもプルサーマルもまだ問題だらけ」
堀: また議論が戻ってしまいますが、最終処理に関して言うと、CO2の排出とどちらがいいかという天秤。それは200万倍の排出をするということですから、どっちがいいかという議論になってくるわけであって、一方では最終処理の方向性は見えているわけで。現時点で無いわけではない。一方では使用済み核燃料をまた燃やすことができる。それはテクノロジーの進化だと思うんですよね。
孫: それはプルサーマルのことを言っているのか。
堀: プルサーマルとは違います。
孫: (高速増殖原型炉)「もんじゅ」のことを言っているのか。
堀: 違います。
孫: 「もんじゅ」だってプルサーマルだってまだ問題だらけだというのが僕の認識。
堀: この「もんじゅ」の問題も、当事者から話を聞くとナトリウム事故が起こっても海外ではあんなに10年間も止まらないですよ。それは多くの人たちが、「それが問題だ問題だ」と騒ぐことによって大きな問題になってしまっていることが僕の見解。
孫: それは僕にもわからない。それはどっちが正しいかわからない。少なくとも海外では「もんじゅ」的な方式はみんなもう諦めて「止めた」と。
堀: いや、そんなことはない。現時点でロシアで、(「もんじゅ」と)高速増殖炉は動いていまして。地域に対して電力を共有しています。
孫: 少なくともアメリカだなんだというところは、その研究開発を止めたというのが僕の認識。ロシアがどういう方針でどうやってるか、僕にはわかりません。もう一回確認しますと、少なくとも日本の東芝だ日立だというのがガンガン海外に輸出していきたいと。これに対してもう少しよく安全性だ、最終処理だというのを検討したらどうですか、ということについて、その議論がけしからん議論だと僕は思わない。その議論はそれはそれでしっかりしながら、少なくとも十分に反省してというのが今日の冒頭にもあったけど、十分に反省するならば、自分がまだ解決していないものを人に売りつけることに対してどうなのか。そういうことが僕にはわからないということです。
堀: 最終処理に関して、すでに法律もできていて地層に関する研究もすでに行われています。
孫: でもまだできていないじゃない。研究はしているけど、できていないじゃない。
堀: まだできていないです。
孫: できていないのが事実で、できてからその点については解決しましたというなら、まだ僕は聞く耳を持つと。できていないのに「まだ大丈夫だ」「もう大丈夫だ」ということで、無軌道にどんどん増やすということについては、まだ議論が僕は必要だと思う。
■外国が「原子力がほしい」と言うのを反対するのは内政干渉?
堀: いま無いとしても、例えばフィンランドやスウェーデンとかの地域については、もうすでに決まっているところもある。そういった意味で、それこそ内政干渉のようなもので、例えばトルコが「原子力がほしい。プラントがほしい」と言ったときに、なぜ孫さんがそれを反対するのですか。
孫: 僕はそこ自体を反対しているわけじゃない。その国の内政干渉を、その国の外の人があまり干渉するべきではないというのが、僕の基本的スタンス。最終的にはその国の人たちが自分で判断して決めるべきだ。
ただ、日本で原発の事故を起こしてそれに関わっていた会社が、日本の会社が日本のブランドを背負って他の途上国だなんだというところに、政府あげてバンバン売りに行くことが、ひょっとしたら後で恨まれるかもしれないよということについて、これは慎重に議論をするべきだというふうに僕は思っている。それはいま、全面的にそれを「ストップせい」とまでは断定的には言いません。だけど、少なくともこれだけの事故を起こした今の局面は、もう一回立ち止まって、本当に我々は罪作りなことをしていないかということを。その国がどっか他の国から買ってきて、あるいは自ら作ってということなら、それは内政干渉をしてはいけないと思いますが、民間企業が作ったものを、国民の税金を使って生きている我々の国の政府の人たちが、販売エージェント、代理店のようなかたちで海外に売りに行くということはいささか疑問がある。
孫: その国がどこかほかの国から買ってきて、あるいは自らが作ってというのは、それはその中での内政干渉をしてはいけないと思いますが、我々の国の政府が、我々の民間企業が作ったものを、政府が販売エージェントのような形で、国民の税金を使って生きている政府の人たちが、販売エージェント、代理店のような行為で、海外に売りに行くということについてはいささか疑問がある、と僕は言っている。
堀: 菅さんが・・・。
孫: 菅さんもそうだし、その前の自民党の人もそうだし。ずっと関わってきた人たちみんな、少なくともこの事故が起きたあとは、おおいに反省して、少なくとも1回立ち止まって議論すべきでしょう。十分に議論して、その上で国民が「大いに言ってこい」と喜んで送り出すならば、国民の税金を使った彼らが販売代理店業務をやるのは構わない。もし国民がそれをよしとするならば。
だけど少なくとも1回その議論が必要じゃないか。そのまま輸出しないと日本のGDPが下がるということについては「ちょっと待ってくれ」と。原発1基で何十億ですか。毎年何基売れるんですか。GDPに占める比率は微々たるもので、それは今回の事故で起きたマイナスの影響に比べれば微々たるものだ。
堀: 僕が言っているのは、社会貢献ということに関していうと「同じじゃないか」という話をしているんですが、孫さんは「違う」と。政府に関しては、基本的に社会の価値を創造して、ニーズがあるから行うわけであって、安全な最新のテクノロジーを投入していくことは、僕はいいことじゃないかと。
孫: 僕はもしかしたら、それは、かの国に求められて、なおかつ、送りだす日本国民も「大いに行ってこい」という最終議論になって、結果あとあと、ずっと100年、200年後に振り返ってみて、確かに一度も事故が起きなかったと、その国の人にもずっと感謝されたということであれば。しかも最終処理まで立派にできたということであれば、結果、それは大いなる貢献だったかもしれないと。でも、それを何の議論もなしに「1回契約してしまったからバンバン行こうぜ」というのは、少し乱暴じゃないか。
堀: 願わくば、貢献。
孫: 僕もそう願いたい。
■「ピーク時の原発依存度は20%。今22%節電できてるから…」
堀: 一方では、日本のもっているテクノロジーを、多くの国に貢献する形で使っていきたいという気持ちもありますし、それが僕らが果たすべき役割でもある。
孫: テクノロジーで安全になるようなコンサルテイションをする、安全になるようなアドバイスをする、お手伝いするというのは、僕は大いにいいと思うんです。それは、我々がそういう事故を起こして、それなりの経験をして、それなりの反省をしているわけだから、非常に安全対策をして、くれぐれもということで、いろいろ貢献するのは立派な貢献だ。だから、研究開発をやめろとは僕は絶対に言いません。
もしかしたら、10年後か50年後か100年後に、夢のような、しかも最終処理までできる、しかも絶対安全なもの、あるいは、万が一事故が起きても、それが本当に局所で、人命にいささかも影響がないというものであれば、それは技術開発の可能性の芽を摘むものではない。研究開発は大いに続けるべきだ。もしかしたら、素晴らしい結論が出るかもしれない。
堀: そうですね。
孫: それまでは、僕は「ミニマム論者」と言ったのは、「原発はOKです」と言っているわけではなくて。最低限の期間、最低限の台数、しかも一番安全だと思われるピカピカ順に、ミニマムの間を、もしかしたら使わざるをえないかもしれない。そのための再稼働は、もしかしたら必要なのかもしれない。僕が言う「ミニマム」というのは、「ゼロを含むミニマム」だ。
つまり十分に検証して、もしかしたら、先ほど言われたように、ピーク時間の、これまで原発に30%頼っていたと言うけれども、それは夜も含めた平均の30%で、昼間のピーク時間における原発依存度は20%だと。日本が一番活発に使っていたときですから。20%しか使っていないんですよ。原発依存度。だけど、いま22%節電できている。
堀: いやいや、それは・・・。
孫: いまは根性論で、無理してがんばっているかもしれない。でも、日本国民は素晴らしく、健全で真面目で献身的で一生懸命努力して、いま22%節電できている。そうすると、もしかしたら、もともとピークのときに22%節電できていたら、原発ミニマム論というのはゼロかもしれない。それは僕が先ほどプレゼンしたこと。これはただし、ここで1回の議論で、十分なデータもなしに、僕がなんとか白書をかき集めてきたら、そういう数値になっているけども、それこそ専門家を入れて、十分に議論しなければいけない。チェックしなければいけない。十分チェックして、しかも日本の各電力会社がお互いが融通接続をして、それでなおかつ足りないのはどれくらいかという検証をして、そのミニマムが5基だったら、5基使うのは仕方ないかもね。2年間だけ仕方ないかもね、という論説。
■「節電によって生産が落ちていると聞いた」
堀: 一方で僕は、節電に関して十分な話をしたいんですが。節電をしていることによって、もうすでにコスト、代償を払っているんですね。生産が低下しています。メーカーでいうと、15%の(節電)命令によって、ある自動車(メーカー)に聞いたら(生産が)25%低下しているんですよ。15%に対して、なぜ25%も減るのかというと、15%を超えてしまうと罰則が入るから、現場では25%にいくとアラームが鳴ったりするわけです。そうすると、生産量が減ってきていると。一方では、安定供給ができないということが分かると、外部から海外から企業も来ないし、さらには出ていくと。そういうことを考えた場合に、がんばっているからできるじゃないかということよりも、節電に対するコストが発生しているということは認識したいなと。
孫: 少なくとも今は根性論も含めた節電の努力を一生懸命、みんなが苦労しながらやっていると。だけど先ほども言ったように、もうすこし科学的に、たとえば電気を白熱灯からLEDに切り替えるだけで原発13基分の節電がさらにできるという数値もある。これだけ「地デジは無理だ」と。「絶対、地デジはその期間にはできなくて、延長戦に入るだろう」と専門家が言っていたけど、結果、できちゃったねと。
同じように、LEDの電気に置き換えるというのを、たとえば「3年以内に置き換えましょう」、「5年以内に置き換えましょう」と。そうすると電気が大幅に消費電力が減る。しかも、罰則だけでなく、エコポイント。それこそ今までエコポイントはいろんなものにむやみやたらについていたような気がするけど、今回は「節電エコポイント」ということで、節電ということに重点をおいたエコポイント制度をすれば、景気の浮揚にもむしろ役立つかもしれない。僕は「いまそれをやれ」と断言しているのではなくて、たとえばそういう検討で、単なる根性論でない、論理的な、科学的な節電もできるかもねということを言っている。
堀: それは賛成です。LEDも含めた家庭用も含めた節電については。日本はそもそも、アメリカの3分の1しか電力を使っていませんから。そう考えた場合に、電力量が実に少ない中において、物凄い省電力、あるいは省エネルギーの生活を送っているというのが日本だと思います。そういった意味で、個人部門はいいんですが、産業部門の節電というのはコストが伴う。簡単ではないし、多くの場合には命令を下してはいけないと思うんですね。そういったことにおいて、安定供給が重要であって、孫さんはそれが原発の事故のせいじゃないかとおっしゃいますが、それを乗り越えたうえで、しっかりと安定、供給を考えていかないと、将来に禍根を残していくことになっていく。
孫: 企業が原発の事故のせいで節電を迫られた結果、25%本当に出荷が落ちていますか? これは僕は初耳で、25%も本当に出荷が落ちていれば、GDPはもっと急激に下がっているはず。
掘: 僕が聞いたのは、自動車会社1社で・・・。
孫: 1社の事例の、ちょっとオーバーな話かもしれない。
堀: そうかもしれない。
孫: それはむしろ、ぜひチェックしていただきたい。25%も節電が理由で出荷が落ちているのか、と。円高が理由でちょっと落ちたというのはあるのかもしれない。でも節電が理由で落ちたというよりは、節電の結果、電気代の原価はむしろ下がっているんじゃないか。直接的な負担は。ですから、節電の結果、電気代が少し、10%上がった。だけど、むしろ22%節電できているから、電力にかかわるコストはむしろ下がっている可能性がある。そういうことも含めて、ぜひ再チェックしていただきたい。
堀: もちろん。15%削減命令が出ているのは、東電管内だけです、現時点においては。今後どういう形になるか分からないですが、関電管内あるいは九電管内がどうなっていくか。それは節電をすることによってできているじゃないかということを、簡単におっしゃらずに、それには物凄いコストがかかっていて、代償を払っているんだということを、各自に認識していただきたいと思います。当然、人命も大事ですから、それを含めて考えていきたいと思います。
■「3時間18分! まさに『トコトン議論』」
孫: いろんな数値は今からそれぞれ、さまざまに検証すればいい。だけど、あとでゆっくり検証してもいいけど、とにかく人命だけは取り返しがつかない。このことについては、慎重の上に慎重を期してほしい。両方の説があったら、より慎重なほうをむしろ今は取ったほうがベターだと、僕は心底思っている。だから、そう信じているから、僕はただ「反対」「反対」と言っているんじゃなくて、せめて解決策、具体的な代替案を示しながら、なおかつ、こうやって時間を費やしながら、お金も費やしながら、金銭的見返りは少なくとも40年間、利益が入っても1円もいりません。少なくとも僕が生きている間は配当をとらないでくれということを、いま僕はうちの委員会の中では議論している。
俺が死んだあとは、普通にほかの会社並みの、健全なレベルの利益を取るかどうか、それは知りませんよと。俺が生きている間は取らないでくれと。それは俺の生きざまに反すると。どうせそのときは僕は経営者じゃないから。僕はそれから先のことまでは断言できないけど、少なくとも僕が生きている間は、このことは本当に人々の安全を心配して、やむにやまれず、泣きたい気持ちでやっているんだということで、ぜひそこについて、さきほど撤回してくれたけども、災害で多くの人が、僕はときどき非難されるので、はっきりそこのところは今日確認しておきたい。
堀: 3時間18分! 「トコトン議論」・・・。
孫: 俺はまだ元気。
会場: (笑いが起こる)
堀: おそらくパラパラと出ていかれる方もいらっしゃるかもしれないし、僕のほうから言いたい論点をほぼ出せました、質問も含めて。孫さんのほうから何かあれば、逆に・・・。
孫: 僕は議論して大いに良かったと思います。少なくとも、堀さんは自然エネルギーについては反対するものではない。
堀: 賛成です。
孫: 「全量定額買い取り」ということについて、今日だいぶ理解していただいたんじゃないかと。しかも、それについて、いささかもソフトバンクに利益誘導とか、自らにだけ特別な利益誘導をしようなんてそもそも思っていないということについて、いま理解いただいたと。
ただ我々の会社ではなくて、自然エネルギー「産業」が起きなければいけない。そこには一般的、普通の健全な平均的利回りがないと、欧米並みの利回りがないと、産業が起きない。ソフトバンクに「儲けるな」というのは構わないけど、その産業が起きる、せめて一般的な、普通の健全なレベルの利回りは、法律の枠組みとしてやっておかないと、日本は笛吹けど誰も踊らずとなるのは危険です。ということについて、だいぶ理解いただいたというように、僕はうれしく思いました。
あと1発、事故がおきたらもう大変だと。そのことは、堀さんも完全に同意いただいたと。そもそもそう思っておられたかもしれないけど、今日の議論で、僕は少なくとも、それがしっかり確認できた。あと1発の事故は絶対に起こしてはいけない。そのコストは一時的に安いと思いこんでも、本当は高いものかもしれないということについても、だいぶ今日は理解が進んだ。
それから、送電ということについても、電力会社が送電網をしっかりとお互いにつないで融通が効き合うようにするということが必要だというのは、さっき論点の中で「自分は賛成だ」とおっしゃった。情報開示を徹底的にすべきだということについては、いろんな諸論があっても、影響力が大きい人間だろうが何であろうが――僕は影響力が大きいかどうか自分ではわかりません――わかりませんが、僕にも言いたい放題、言わせてもらう自由をもらったと。
会場: (笑いが起こる)
■孫氏と堀氏、がっちり握手
孫: さらに私は、(脱)原発原理主義者として、世界中いますぐ全部ゼロにせよという論者でもないし、日本で無軌道に使っていいという論者でもない。ストレステストが通ったら全部オーケーというのは、僕は反対。ストレステストそのものについて、僕は中身を見ていない。ストレステストを通ったやつは、20基でも40基でもオーケーと。いま16基で回っているのに、それをまた40基に増やそうというのは過剰じゃないかと僕は思っている。
あと1発、事故が起きたら、やっぱり今から先の利益を全部吐き出すからダメだと。「ゼロを含むミニマム論者」だと。ゼロを含むというのは、安定供給がちゃんとできて、ゼロで済むならばゼロにこしたことはない。でも、安定供給するために、どうしても5基が必要だと、8基必要だと。2年、3年必要だと。そういうミニマムの間、ミニマムの必要悪を受け入れるということについては、僕は賛成という論者だということを、今日もう1回はっきりと、USTやニコ動で見ている人に確認したい。ほかにメディアの人もいますから。
堀: 僕も、僕なりの考えを申し上げると、今日の議論を通して、僕はもともと自然エネルギーに関しては賛成だと申し上げていて、孫さんが企業家としてやってらっしゃるということを確認できて、非常にうれしく思っています。孫さんが影響力がないとおっしゃっていますが、おそらくいま日本の経済人で最も影響力があるのは孫さんじゃないかと思っているくらいなので、孫さんと議論することによって、原発に対する危険性というのは、まだ孫さんと僕の間の・・・確かに事故があったことは認めますし、それ以降の苦しみ、悲しみ、人命を考えて、福島のみなさんの苦しみに共感したうえで、次代の子供たちのためにどういったエネルギー政策を考えるべきかということに関しては、私が申し上げたいことを申し上げることができたと思っています。
一方で、科学的根拠にのっとった議論が重要だと思っていますし、今の僕の発言の中でもしかしたら誤解があった場合には、それは全部チェックして、訂正を載せます。一方では孫さんに関して、僕が「政商」と言ったことは撤回して謝ります。
孫: ありがとう。いや、うれしいよ。それだけで今日は来た甲斐があった
会場:(笑いと拍手が起こる)。
堀: そのうえで、ぜひとも原発の従事者はすべてが目先に利益にとらわれているわけではなくて、夢をもちながら社会に対して貢献しているんだという人たちが多くいるということと、将来のために何が必要かということを、こういうオープンな場で議論できたことをみなさんに感謝するとともに、孫さんに感謝を申し上げたいと思っています。
そんな中で、みんなでまた、多くの場で、さまざまな場で、今回は企業家対企業家だったわけですが、今度は政治家対政治家、学者対学者という、さまざまな論点があって、多くの人たちが聞いて、それに対してどう思うかということを考えながら、そのうえで、今回の不幸な事故を乗り越えていく。今まで日本がさまざまな罹災を乗り越えてきたわけで、それを乗り越える底力が僕らにはあると思うし、孫さんのようなリーダーとともに、僕らが乗り越えていかなければいけない。
方法論では違いがあったとしても、それを、みんなでオープンな意見をしていきながら、おそらく僕のところに、あるいは孫さんのところに非難がいくかもしれませんが、みんなで、こういう議論はいいんだということで、自分の意見をどんどん言い合っていくということが、僕は良いことだと思います。
孫: 良かった。
会場: (2人が握手)。
孫・堀: ありがとうございました。
会場:(大きな拍手が起こる)
(了)
(亀松太郎、土井大輔、丹羽一臣、西川真帆)
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