「原発よりも電磁波のほうが怖い」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(3)
ソフトバンクの孫正義社長のツイートがきっかけとなって実現した「『孫正義×堀義人』トコトン議論 ~日本のエネルギー政策を考える~」。2011年8月5日に行われたこの公開討論は、グロービス代表の堀義人氏と孫氏それぞれのプレゼンののち、フリーディスカッションに入った。「原子力村」と呼ばれる限られた社会の中で専門家の議論がなされた結果、今日の原発が作り上げられていったことを批判する孫氏に対し、堀氏は「電磁波のほうが怖いです。本当に怖いです」と、孫氏率いるソフトバンクの事業でもある携帯電話から発せられる電磁波の危険性を指摘した。
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv58739430?po=news&ref=news#1:02:18
以下、孫氏と堀氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する。
「”脱原発”ではなく”原発ミニマム”論者」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(2)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw97043
■自然界にある自然放射線はどれくらい?
孫正義(以下、孫): 4月に福島の学校がほとんど再開した。そもそもそれって僕は正しいのかということをまず疑っていて。そもそも20ミリ(以下、「シーベルト」を省略)、大人の原発の作業員の方への閾値(しきいち)が年間20ミリ。世界的には原発作業員の方々が、確か僕の記憶では年間20ミリを上限として作業している。そういう中で、大人が20ミリ、これは緊急事態だから一時的にはしょうがないのかもしれない。僕はその20ミリでも分からないけども。少なくとも子供にまで20ミリのままでいいのかということについては、今日現在もまだ非常に疑問がある。分からない。僕は専門家じゃないから。だけど、さっき堀さんは100ミリでも健康被害の事例がないと。
堀義人(以下、堀): 100ミリ未満ですね。
孫: 100ミリ未満でも健康被害の事例がない、分からないと仰ってますが。それは事例がないと言ってるだけで、要するに分からないと言ってるにすぎなくて、20ミリでも非常に危険だという専門家の方も沢山いて、これはいろんな説があるんだろう。いろんな説がある時に、さてどっちを取るか。きっと大丈夫そうだからいいんじゃないかという説でいくか。いろんな説がある中で、取り返しのつかない、つまり健康というのは一旦やばいとなって、あとから「しまった」と、取り返しのつくものと、取り返しのつかないものがあって。我が子が「やっぱり100ミリじゃやばかった」、「20ミリでもやばかった」ということが我が子が大人になってからそんな害が出てきた(としたら)、親としては泣くに泣けない、死ぬに死に切れない、血の涙が出るんじゃないか、僕は自分の子供がそうなったら。・・・というぐらい、僕は取り返しのつく範囲のものは賭けをしてもいい。いろんな事故でいろんなことを学びました。
他の事例で仰ってましたが、いろんなことの事故でいろんなことを学んで、これから学習してちょっとずつ良くなりましたということで済ませる問題と、取り返しのつかない事故を起こしてしまうかもしれない。今回の福島(の原発事故)だって、まだ不幸中の幸いレベルで僕は収まってよかったなと思ってるぐらいで、これがあと一歩間違えると、溶融物がメルトダウン・・・メルトダウンも最初していないんじゃないかとずっと政府は人も言ってましたが、結局メルトダウンしてた。メルトスルーまでしてるんじゃないかというのが最近の説ですが。どろどろに溶けたヤツがどーんと爆発して、300キロ400キロ飛んできてたとしたら、今頃我々はこの部屋でこんな話をしていられるのかというぐらいの状況があると僕は思います。
堀: ちょっと孫さんに質問したいのが、自然界にある自然放射線、人類が住んでいて一番高いのはどれくらいだと思いますか? 何ミリシーベルト?
孫: それは外部被曝でしょう?
堀: いや、外部被曝だけじゃなくて内部被曝も含めて。内部被曝も含めてどのくらいか知ってますか?
孫: いや、僕は知りません。
堀: だいたい想像すると。20ミリが危険と仰るなら。
孫: いやそれはね、外部被曝で自然にくるものと、プルトニウムから何からいろんなものまで含んでる。これがね、自然界にプルトニウムが、ストロンチウムがどれくらいあるかということを僕は逆に問いたい。
堀: 質問のポイントを1個ずつ絞っていきたいんですけど。私はいろんな人に聞いていると、内部被曝といいますか、ラドンを含めて吸引しているんですね。日本の場合は鉱物資源がないから基本的に低いんですが、自然の(被曝は)。例えばイランのラムサールとかは400ミリシーベルト/年間。しかもラドンですから。吸ってるわけです。ラドンの放射線を。
孫: プルトニウムを吸ってるんですか?
堀: プルトニウムは別です。
孫: 僕はプルトニウムとかストロンチウムが今回放出されているということが証明されていると。
堀: いや、プルトニウムに関して言うと・・・。
孫: 最初、政府の人は「プルトニウムは出てない」と、「測る必要がない」と言ってた。
堀: プルトニウムに関しては1950年頃の原爆、水爆を含めた実験によってフォールアウトでものすごいそこら中に落ちている、世界中に。この部分で今はおそらく東京含めて見ていくと、ストロンチウムはプルトニウムも含めてそれが検出できると言っていて。一方でプルトニウム自体は重いから、福島第1原発の地域においてはほとんと敷地内を含めた部分にしか見られてないという認識している。
孫: プルトニウムがもっと遥かに遠いところに飛んでるという説も聞いています。
堀: 一方では仮にそれは僕ら専門家じゃないので聞いていることだけ言っているのであって。考えなくてはいけないのはそれが人体にどれだけ影響があるかなんですよ、一番のポイントは。つまりメルトダウンしてようがメルトスルーしていようが、人体にどれだけ影響があるのか考えなければならない。
孫: それはまだ分かってないわけですよね。
堀: そうです。それでツイッターに来てたのは・・・。
孫: 人体にどれくらい影響があるかというのが分かってない状況で「安全だ」と言い切るのは危険じゃないの?
堀: これはね、孫さん、孫さん。これはかなり分かってるんですよ。相当聞いてきたので。これはできたら放射線医療の専門家の科学者同士で議論していただけたらいいと思ってますが、これは相当分かってきている。長崎、広島、それからチェルノブイリの状況に関してかなり綿密な・・・。
孫: 堀さんが聞かれた専門家が(そう)言ってることがわかってるというだけで。
堀: だからこそ・・・。
孫: 僕が聞いているのは、全然違う説の人も沢山いる。ですからこれは両論あるわけですよ。さっき「電磁波で危険だ」と仰いましたが、電磁波だって両論あるわけです。携帯が電磁波が出てて、これがガンになると言ってる人もいるし、そうでないと言う人もいるし、携帯によるガンになるリスクは漬物とかコーヒー程度です(と言う人もいる)。それも「まだ分かりません」という状況の中で言われてて、それもいろんな諸説がある。
携帯の時にいろんな諸説ある中で、堀さんは携帯を使うと頭が痛くなる。堀さんがそうなら僕は相当敏感な人だと思うけど、イヤホンマイクを使えばいい、堀さんは。頭が痛くなると自分が思う人はイヤホンマイクを使う選択肢がある。それはいろんな説があって、どの説を信じるかによりけりだけれども、自分が危険だと思うならば、頭が痛くなるというセンシティブな方は、それはその人が正しいかも知れない。その人は自分の身を守るために、イヤホンマイクをいくらでも使える選択肢がある。
でも原発は、そこに代々住んでいる農家の方、漁業の方、自分が代々そこに住んでいて、そこにいる子どもたちとか母親たちはなかなか選択肢が無いわけです。そもそも反対しているのに、地元に勝手に(原子力発電所を)作られてしまったという人もいっぱいいるわけです。そういう選択肢を提供してもらえない人々の苦しみと、自分の説でイヤホンマイクを使えると(いうのでは)、全然次元が違うと思います。
■「あなたは学んでいて、僕は学んでいない?」
堀: ただ孫さん、基地局はどうします?
孫: 基地局だって、これまたいろんな説がある。
堀: 基地局の周りの方は、選択肢が無いわけですよね。
孫: 我々が聞いている範囲では、これは「問題無い」と聞いているから、世界中基地局が建っているわけです。そうですよ。
堀: 孫さんは自分が・・・。
孫: 世界中、携帯の基地局は建っていて、東京タワーだなんだという基地局もあって、そういう中で我々は住んでいるわけですよね。その基地局が、現に放射能を巻き散らかした人間の遺伝子にまで影響を与えたという話は、僕はあまり知らない。
堀: 孫さんね。もっとお互い学んで、このセンシティブなことに関しては話をするのが一番良いと思うんですね。ツイッターから来ている・・・。
孫: あなたは学んでいて、僕は学んでいない?
堀: 孫さん、僕に喋らせてくださいよ。できたら時間配分を取りながら、どっちが多くの時間を取っているか計ったほうが良いと思うのです。そのほうが、恐らく聞いている側も含めて「トコトン議論」としてフェアだと思うのですが。
ツイッターに意見が出てきたのが、「孫さんほど影響力がある方が、放射能が危険だと言うと不安になり心配で身体に支障をきたす方もいると思います」。つまり、僕らも含めて影響力のある人間、相当調べた上で自分がどう考えるのかを認識して発言をしなければならないと思うのです。それが「放射線に関しては危険だ」と、「電磁波は大丈夫だ」と。これが本当に正しい見解なのかどうかというのは認識しなくてはならないと思うのです。従って、このポイントに関しては僕らが議論をするよりも科学者を呼んできて議論をするほうが良いと思うのです。
孫: だから、今まで御用学者の先生方がテレビでずっと言ってきましたよね。「原発は大丈夫だ、大丈夫だ」と。私は専門家だということで言ってきたわけです。その人達の方が専門家として、意見にはよっぽど影響力があるわけです。NHKだなんだも含めて、テレビにずっと年がら年中の様に、事故の時に言っていたでしょ。私が何回そこで言えたかと。ちょっとでも言おうとしたら、「プルトニウム」と言ったらもうNHKでもすぐ発言を止められましたよ。生放送だと事前に「何を喋るのですか」と(NHK側に)聞かれて、「事前にわかりません」と言って、生放送で「プルトニウムを測らなくて良いのですか」と言ったら、すぐに話題を変えられました。
そもそも、専門家の先生方が御用学者として、「安全だ、安全だ」とずっと今まで言ってきたわけでしょう。その方々のほうが、僕は遥かに影響が大きくて、聞いている人は全員、私は原子力の素人だと分かった上で聞いているわけです。
堀: いやあ・・・。
孫: それで一意見として聞いているわけです。一意見ですから、それはいろんな両論の説があって。僕が発言すると、ツイッターでフォロワーが多いから、危険思想のことを危険に言ったら、影響が大きすぎるから「黙れ」と言われたって、僕は困る。「わしにも言わせろ!」ということです。
会場: (笑いが起こる)
堀: 学者さんの話に関して言うと・・・。
孫: 学者だけに任せて良いということでは無いと思うのです。
堀: もちろん。ただそれは、分かった人が分かったことを言わなければ、不安を生み出すだけです。
孫: ちょっと待って。今まで、僕らがこういう話をすると、風評被害を呼ぶ「不埒な輩」だという風に、僕はしょっちゅう非難されるわけです。危険だということを言うたびに風評被害と。「風評被害」という言葉を大辞林か何かで調べてみました。「事実で無いことを事実かのように言って、そして経済的な被害を与えること」ということを「風評被害」と呼ぶという定義でした。そもそも原発での事故が起きたというのは事実ではないのか。
堀: いや、孫さんね・・・・
孫: そもそも、それで100ミリシーベルトだなんだというのを、急性に浴びて病院に入院した人もいます。実際に亡くなった人までいるではないか、これは事実でしょうと。だから風評被害というのは、セシウム牛がいっぱい出てきたと。これも「牛に害は無いのだ」ということをずっと言われて、大丈夫だと思ってそういうことを喋ること自体が風評被害を呼んで経済的被害を与えるから、なるべくそういうコメントをするなと言った結果、調べないでどんどん結局広がってしまったわけでしょう。むしろ危険だと思うことは、どちらか分からない時には、危険の可能性があるということを早め早めに言って、その上であとは自己判断と。両方説がありますよと言うことを僕はあえて言うべきだと思う。
堀: 孫さん、フェアにいきましょう。僕も発言をしていたので、できたらそれが終わった上で次の議論をしたいと思っているので。
孫: 討論とは両方言って良い・・・。
堀: そうなんですけど、僕は(孫さんのほうが)先輩ですから、どうしても遠慮しがちなので。もしも孫さんと同じように割って入って良いのならば、どんどん入っていきます。
孫: 割って入って良いです。
会場:(笑いが起こる)
■「リーダーが風評被害を拡大するようなことを言ってはいけない」
堀: いいですか。わかりました。最近、今日会った学者の方が言っていたのは、NHKの出演が決まると、前の晩に物凄い批判のメールが来て、次の日のその出演が取り止めになるということもあるわけです。そういった今、フェアな議論が出来にくい環境があるということを聞いておりまして。従って、だからこそそういう「御用学者」というレッテルを貼らずに、学者同士がフェアな意見を飛び道具みたいにバンバンYouTubeとかで発言をするのは良いと思うのですが、今回こういう形の場をつくったことによって、多くの方が聞く機会を設けたわけです。そして考える機会があったと。
同じ様に学者の方も、そういった意見を言い合う、そして僕らが判断をしていくと、そういった場を設けないと、逆に多くの人が判断出来ないということになってしまいますし、一方ではそういった風評被害に関しても、これは実態でも拡大します、いくらでも拡大します。拡大することが風評被害と言うわけであって、あったことは事実です。ただし事実以上にそれが拡大してしまったがために起こされた問題も多いと思っていまして、それは政府の対応があると思っています。よろしかったらもう少し良いですか?
孫: はい。
堀: それは、私が現地に行ってよく分かったことが、先ほど20ミリシーベルトに対して「1ミリシーベルトでないとダメだ」と泣いた人がいたと。これによってガラッと変わって、飯舘村も本当に全村避難すべきだったのかどうか、これは私は疑問を感じますし、一方では南相馬市に行った時に、(枝野)官房長官が防護服を着て行って、手袋をしたまま握手をするわけです。この行為がどれだけ地元の人達に恐怖を作り出すのか。風評被害というのは、政府を含めて、それをきちんと認識しなければ恐怖を大きくしていきます。それは実際の危険を、どれだけ危険なのかというのは科学的根拠に則って考えなければならない。これはしっかり認識をした上で話をする必要性があって、僕らのようなリーダーが風評被害を拡大するようなことを言ってはいけないと思うのです。従ってその部分というのは、学者の方々に任せて議論をしてもらって、こういった「トコトン議論」をやってもらったら良いのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
孫: 僕は取り返しのつかない危険性がある時には、そこで言論を抑え込むのではなくて、両方の論を堂々といくらでも議論をすべきだと。
堀: 仰る通りですね。
孫: 「影響力があるから黙れ」と言われても困ると。
会場: (笑いが起こる)
堀: いや、僕は影響力があるから黙れではなくて。
孫: だってそうでしょう。あなたはフォロワーが多いから黙れ、私はフォロワーが少ないから言っていいのかと、そんな話は無い。皆に与えられた平等な権利が言論の自由ではないのかと。何で私が喋れなくなるんだ、それはおかしいだろう。誰だって、すべての国民に喋る権利があると。危険の可能性があるならば「危険の可能性がある」ということを泣き喚いて喋ったって良いではないかと。それを判断するのは、両方の説、あらゆる百論を聞いた上で、それぞれの国民が自分の判断をすれば良いということだと思うのです。逆に事故が起きた瞬間、直後にほとんどのマスメディアは風評被害を恐れて、あまり危険だということを言うなというのがほとんどのテレビ局での指示だったのです。僕はよく知っているんだから。現に私がNHKに出る時だって言われたんだ。体験者だ。
堀: 孫さんがそういう形で仰るのは自由です。基本的に仰りたいこと仰って良いと思うのですが、ただし私が言いたいのは、それは可能な限り多くの知見を踏んだ上でお願いしたいということだけです。
孫: 十分、専門家では無いから喋ってはいけないというのはおかしいと。専門家と言われた学者の人たちが限られた村の社会の中で議論をしてどうなったのだと。学者ではない専門家は黙っていろということのほうが、僕はおかしいと思う。学者は学者なりに・・・学者だっていろんな説の学者がいる。それをまるで御用学者ばかりを中心に議論をするということもおかしい。大体、(原子力)安全・保安院だって、原発に反対している、危険だと思っている学者も、その保安院の中に入れるべきだ。
堀: 孫さんね、ただ・・・。
孫: (原子力)安全委員会にも入れるべきだと。
堀: いや、孫さん。学者のオープンな意見交換は反対はしないでしょ。
孫: 反対はしないよ、僕は。言論はどんどんやってください。
堀: どんどんやったら良いと思いますね。
孫: 偏った学者ばかりを集めていることのほうが「(原子力)村」の問題だと。
堀: もちろん。だからそういった意味で、孫さんが考えられて正しいと思われる方をお招きして、僕は聞いてみて非常に信頼できると思った方をお招きして、議論をしていただくという機会を設けませんか。
孫: それはそれでいくらでもやったら良いけども。今日はあなたと私が議論しているのだから、話を後ろ送りしなくて良いではないか。
堀: いや、いっぱい議論することあるので、では良いですよ。
孫: 専門家は専門家同士でしょっちゅうやっているわけです、テレビだってなんだってやっているではないか。
堀: 実はやっていないんですよ。
■「電磁波のほうが怖いです。本当の意味で」
孫: 僕が言いたいのは、いろんな説の学者がいて、結局それは平行線の場合もあればいろんな(場合が)あると。それはそれで良いではないかと。
堀: いや、良いと思いますよ。
孫: それは今でも結論は、結局分からないのだろう。10年後、20年後にもう少し時間を経て、実際に証拠が出てきた後に初めて、学者の皆さんの多くは後付けで言われる方もいっぱいいるんだけど。後付けではなくて、早め早めに予知できる人というのは、余っ程優れた一部の学者ですよ。大半の人は後付けで分析をするという人のほうが多いと。だから想定外の事故が起きたではないですか。「想定外」と言ったこと自体が、もうすでに後付けではないですか。
堀: 孫さん。ただ私は、「何でも言っても良い」ということなので申し上げますが、電磁波のほうが怖いです。本当の意味で、本当に怖いです。
孫: 今日は電磁波のことを議論する場ではないでしょう。
堀: もちろんそうなのだけど、何が怖いかというものをきちんとフェアに考えた上で話さなければ、二重標準、ダブルスタンダードと言われますよ、本当の話。従って・・・。
孫: いやいや、だから僕が言っているでしょう。電磁波が怖い携帯を、従って使いたくない・・・。
堀: 基地局の問題があるではないですか。
孫: 基地局は世界中にありますよね。
堀: だから、基地局の周りの人は選択権が無いんですよ。
孫: だけど基地局は、それなりに全部検査をして、私が聞いている範囲では基地局の電磁波については「大丈夫だ」ということで、今まで国が定めた基準でそれこそやっているわけです。もちろんそれが「違う」という説があるならば、それはそれで、そのテーマについてしっかり議論をすれば良いと思うのです。その点について。全世界で基地局が建っているわけですから。それは僕にだけ言うのではなくて、(NTT)ドコモとKDDIにも言ってくださいよ。
会場: (笑いが起こる)
堀: もちろん。孫さんに申し上げて・・・。
孫: 私だけ「やめろ」と言われたって困る。
堀: 孫さんに申し上げている理由は何かというと、私から見て危険ではないものを危険と堂々と言って、電磁波・・・。
孫: (NTT)ドコモとKDDIも止めるなら私もやめますよ。
堀: 孫さんの場合には危険ではないものが、二重スタンダードになっているから申し上げているわけであって。
孫: 大体、危険だと言うならば、3社の鉄塔を共有化してと私はいつも言っているんです。(NTT)ドコモとKDDIに「鉄塔は共有しましょう」と。「そこに皆で機器を載せれば良いではないですか」といつも言っているんです。彼らが乗ってこないだけで。だから、もし基地局の数を減らすべきだと言うなら、さっさと我々にも届く電波をくれと。その上で同じ鉄塔を使わせろと。そうしたら「同じ土俵で勝負をしてやる」と、そういうことを言いますよ。それを電磁波がどうのこうので、私の携帯の事業をやめなさいというのは、これまた変な話だと思うのです。私はイコールフッティング(同一の条件)であれば、皆で世界中の携帯会社が「基地局の危険かもしれない」ということで、皆がミニマイズすると、皆が「共有化の鉄塔にしましょう、数を減らしましょう、届く電波にしましょう」とイコールフッティングでやるなら全然文句は無い。
堀: すみません。私はその意見はフェアだと思います。
孫: でしょう。ありがとうございます。
■「交付金の出所はすべて電力会社」
堀: ちょっと違うことに質問して。「トコトン」ですから、もしもよろしかったら(先ほどの議論に)戻ってきても良いのですが。いろいろと仰った中で、今まで使われた交付金が「13兆円ある」と仰っていますが、これは出所はすべて電力会社ですよね。
孫: ん?
堀: 100%電力会社からきているものだと。
孫: 電力会社が・・・。
堀: (電力会社が)払ったものが、特別会計として国に入って、そこから交付金として地方自治体に対して払われている。従って出所は電力会社です。
孫: それは僕は確認してみないと分からないけど。
堀: そうですか。確認したほうか良いと思います。
孫: でも、少なくともそれが原子力(発電)のコストとして計算されていますか。
堀: もちろん、それは含まれています。
孫: いやいや、原子力(発電)が他の火力(発電)よりも安いとか何とか言っている時に、交付金が原子力のためのものに使われているものが、原子力の計算として入っていないでしょう。
堀: もちろん、これは・・・。
孫: そこは原子力(発電)の値段が安いというのは、やはり算数が違うでしょうと僕は言いたい。
堀: 僕が申し上げているのは、内部コストと外部コストがあって、内部コストが単純な原子力の発電に使われるコストで、それにプラスアルファ交付金を含めた税金と、それからあとは灰色の費用であったりとか、あるいは最終のものをすべて乗せた金額として計算しています。
孫: 確か石油特会とかいろんな他のものがあったのではなかったかな。交付金の財源の中に。それは僕がもう1回、確認する。
堀: そうですね。これはちょっと確認して・・・。
孫: 交付金は全部電力会社が払っていると、誰か知っている人います? 僕は知らないけど、後で確認します。
堀: 後で調べたら良いと思います。
孫: どちらにしろ、その交付金が仮に電力会社が払った税金、税金ってどの会社も税金払っているのに・・・。
堀: これは、所得税とは違うのです。それとは別に特別な税が含まれていて、その部分というものが一旦特別会計に入っている。
孫: 原発用の税として。
堀: 原発用の税としてですね。
孫: それ、原発用のキロワット当たりの単価にその部分が入って、「5円だ、7円だ」と言っていますか。
堀: 「5円だ、7円」が内部コストなので、外部コストを加えたら大体10円~12円くらいの幅になっています。
孫: その段階ですでに原子力のほうが安いのだという説は違うではないか。
堀: 太陽光より安いんですか、原子力のほうが。
孫: 太陽光は、今一時的に高い。10年、20年、30年という単位で見れば、確実に下がる。原子力だって最初の10年、20年はえらく高くて、補助金のほうが遥かに大きかった。それがこなれてきて、減価償却もだいぶ終わって今はそういう値段だと言っているけども。さっき僕が言ったように、原子力だって正確なコストは、事故の補償費だとか、最終処理費用だとか、産業の被害、これは全然入っていないではないか。
堀: 原子力の補助金というのはオペレーションには投下されないんです。基本的には、研究開発には投下されますが、オペレーション補助金というのは、原子力で生まれたその膨大な電力から生み出されたものによって、払われているということになっていますので。
■「原子力がないと産業界の電気代があがるのは本当か?」
孫: とにかく、今まで原子力が安いと思い込まされていたのは、事故以前の話。それからトータルコストを入れる前の話、最終コストを入れる前の話。今、堀さんが様々な・・・「補助金は電力会社が全部原発用だとして払っている」と仰っていますが、僕は信じていない。もう1回あとで確認する必要があるけれども。
堀: そうですね。間違っていたら僕は謝罪します。
孫: はい。是非おぼえておいてください。
会場: (笑いが起こる)
堀: 孫さんも間違ったら・・・。
孫: 間違ったことは僕はいつでも謝罪しますよ。
堀: わかりました。
孫: 少なくとも原子力が一番安いのだと、原子力が無いと産業界の電気代が上がるのだということは本当かと。これは、誰も正確な数字をオフィシャルに出していない。大体、電力会社がいろんな細かい数字を公表していないということが、そもそも地域を独占しておいて公表をしないで、そして「節電命令」なんていうのが法律でくるということ自体が、そもそも僕はおかしいという風に思っている。だから、少なくとも今回のような大事故を起こして、国民に多大な迷惑を掛けている状況では、「原子力の正確な本当のコストを出せ」ということを僕は、経産省にも政府にも電力会社にも(原子力・安全)保安院にも全員に言いたい。
堀: これは出してもらいましょう。その上で議論をしたほうが良いと思うのです。恐らく推測とかいろいろとあると、また違った数字が出てきてしまうので。
孫: 少なくとも細かい計算をする前に、先ほど僕がプレゼンでやったような、数十兆円の今回の事故補償金だなんだというのは、計算するまでもなく、今までの利益を全部吐き出して足りませんねと。だから東電は潰れなければいけない状態でしょうと。自分で全額払いきらなくて国民負担に頼らなければいけないくらい、過去の利益を全部吐き出しても足りないと言うことは、もう明らかになったではないか。
堀: ただ、数十兆円もちゃんと計算をできたらしたいと思うんです。
孫: 今から30年間、40年間、除染にかかるわけです。
堀: そのコストも含めて、きちんと理解した上で・・・。
孫: 少なくとも、事故を起こしたチェルノブイリとかの実際の数字があるわけです。そういうことは、細かな重箱の隅っこの計算をする前に、まず大きなそろばんではっきり見えていることがあるではないかということを、僕は申し上げたい。その上で正確な数字は計って、もう一回さらに確証を得るべきだけれども。細かな重箱の隅っこの計算をするのに、また半年だ1年だとかかる。その間に慌てて再稼動をしたいと、安いから、これが無いと困るからということのほうが僕は問題だと。
再稼働する前に、そういう安全性の部分と正確なコスト部分、それから本当にどのくらい電力が足りないのか。これについてちゃんと数字を明らかにして、国民に十分にコンセンサスを得てからやらないと、「やらせメール」で慌ててやるというのはまずいよ。
堀: 私もそれは同感ですね。従ってきちんとした数字を元に、その上でどのくらいのコストが上乗せになるか考えた上でやっていくということが重要だと思いますが、原子力の場合はものすごい膨大な電力を発しているので、1キロワットあたりに換算すると1円とか、あるいは多くて2円とかいう数字になってくるんですね。そう考えると僕は、1キロワットあたり1円とか2円でも・・・。
孫: え。さっき十何円って・・・。
堀: 上乗せコストが、ですよ。上乗せコストが1円とか2円になってくる。例えば10兆円の被害があったと考えた場合、これが今まで30年で1回、初めて事故があったわけですね。30年間に1回と考えた場合にはこの10兆円というコストが1キロワットあたり1円になる。これが30年に2回あったら別ですけど、僕はもう2度と起こしてはいけないと思っているので。安全性に関しても、しっかりとした津波を含めた対応をしていく必要性があると思いますが。10兆円のコスト増というのは電力に関していうとだいたい1円になってくる。
その場合のコストっていうのを全部含めた上で、すべてのトータルのコストを含めて税金を含めて考えた場合に、今度は石炭と石油とLNGと、風力と火力と。すべてポートフォリオを考えて何が安定なのか、何が実現性が高いのか。何が環境、CO2を含めた害を及ぼすのかを考えてトータルで安全保障と、それから未来に渡って何が必要か考えていくのがエネルギー政策だと思っているので、こういった視点で考えたいと思っている。脱原発か、原発推進かじゃなくて、基本的にはそういったトータルなエネルギー政策で考えていきましょうというのが僕のポイントです。
孫: 堀さんのポイントは「原発は安い」、原発は・・・。
堀: 僕は1回も「原発は安い」と言ったことないですよ。
孫: 原発の事故コストは1円だという説で仰ってますが、僕は1円どころではないと。それは正確な数字を積み上げましょうと。そもそも10兆円では絶対済まないと僕は思っている。先程の観光だとか、魚だ肉だ、それから土地の除染費用、こういうことまで含めて考えると、「絶対に1円じゃすまない」という風に僕は思いますが。それは数字でもう1回検証した上で、この数字を出すのは、僕はまさに政府の責任だ。経産省なり、(原子力安全・)保安院なり、何なりが正確な数字を出すべきだ。
堀: そうですね、仰る通り。
孫: ここで3分、5分で済む問題ではないと思いますが、僕は1円では絶対済まないと思う。堀さんは1円説に立って、この原発の事故は安いと・・・。
堀: 僕が言ってるのは、損害賠償というものはどこまで含めるか考えなければならない(ということ)。
「今日は一度も『政商』と言っていません」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(4)
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