INES評価細分化へ 福島原発事故がチェルノブイリと同じ”最悪レベル”ではなくなる?

政府・東京電力統合対策室の合同記者会見で質問に答える細野豪志首相補佐官

 細野豪志首相補佐官は2011年6月23日に行われた政府・東京電力統合対策室の合同記者会見で、IAEA(国際原子力機関)に原発事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)を見直す動きがあることについて、「(同じ最悪のレベル7でも)チェルノブイリの事故の場合はかなりの数の死者(※)が出ており、そういった意味で福島とは質的に異なる部分がある」と語った。チェルノブイリと福島第1原発の事故が同じレベル7であることに関して「ある関係者からは、もう少しきめ細かく分けたほうがいいのではないか、福島とチェルノブイリの問題が同じ評価というのは必ずしも適切ではないのではないかという発言があった」ことを明かした。その一方で「第三者の間から、そういう(見直しの)声が出てきて変わるのであればかまわないが、これだけ大きな事故を起こした日本から言い出す種のものではない」とも述べた。INES評価の対象外である海洋汚染水については「(関係機関から)INESの評価に加えるべきだという話はない」とし、「ただ国際的に非常に影響が大きいということについての懸念の声は特に近隣諸国からは聞こえてきており、それは私どもが解決をしなければならない深刻な問題だ」との認識を示した。

 レベル8の新設を含めた今回のINESの見直しは、IAEAの天野之弥事務局長主導で進められている。6月20日ウィーンでの閣僚級会議では「福島第1原発事故ではINESの評価は役に立たなかった」と発言。両原発の構造や被害拡大状況等から「チェルノブイリ原発事故と(福島第1原発))はかなり違う」との主張を繰り返してきた。

 細野補佐官とニコニコ動画の記者(七尾功)との質疑応答は以下のとおり。

七尾記者: IAEAが国際評価尺度INESの見直しに着手するとの報道がございますが、細野さんが先日海外に行かれたときに、あるいは従前から、この評価尺度の見直しについて耳に入っていたことはあったでしょうか。

細野補佐官: 今回私が海外に行ったときはIAEA関係者とは直接会っていませんので、IAEAの関係者からはそういう声は聞こえてきていませんでした。ただ、固有名詞は控えますけれども今回の事故をうけて、チェルノブイリと日本の事故が同じ評価になっているということに関して、ある関係者からは、もう少しきめ細かく分けたほうがいいのではないかと。日本のこの福島の問題とチェルノブイリの問題が同じ評価というのは必ずしも適切ではないのではないかという発言があったということは、何度かそういう話を聞いたということはございました。

七尾記者: まさにIAEAの天野之弥事務局長がそういうことをおっしゃっておりまして、おそらく1段階増えて福島原発が(6か)7になりチェルノブイリが8になる可能性が高いと思います。細野補佐官もやはり今回の事故はチェルノブイリの事故と比較して大きく違うという認識でしょうか。もう一点は以前も細野さんとお話させていただいたんですが、ご承知のようにINES評価は大気だけで海洋へ放出した汚染水分はカウントされておりません。国際関係者とお話されてきたなかで海洋への放出についてお話があったということはありますでしょうか。

細野補佐官: チェルノブイリの事故の場合は、かなりの数の死者が出ておりまして、そういった意味で福島とは質的に異なる部分はあるだろうというふうに思います。われわれのひとつの最低限の責任はこのことによる死者を出さない、ということでございますので、そこは守っていきたいという思いはございます。

 ただ質的に異なるからといって、INESの基準そのものにこれだけ大きな事故を起こした日本が、今の時点で意義を唱えるというのはちょっとそれは筋が違うのではないかというふうに思っております。さまざまな第三者の間からそういう声が出てきて変わるのであれば、それはもちろんそれで結構なんですが、日本から言い出す種のものではないのではないかという気がいたします。

 (海洋汚染)水の問題は、水に出ているからそれをINESの評価に加えるべきだというお話は、私の方にはあまり海外からは入ってきてはおりません。ただ、国際的に非常に影響が大きいということについての懸念の声は、これはあちらこちら特に近隣諸国からは聞こえてきておりますので、それは深刻な問題として私どもが解決をしなければならないというふうに思います。

※チェルノブイリ原発事故
1986年4月26日発災。旧ソ連のチェルノブイリ原発4号炉が爆発し、職員や消防士など31人が死亡。事故に起因するがんで9000人が死亡したとの世界保健機関(WHO)の報告もある。

(七尾功)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 七尾記者の質問部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv54183376?po=news&ref=news#36:19

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