日本のネットレーベル 初めの10選
今回は『netlabel.jp』さんからご寄稿いただきました。
日本のネットレーベル 初めの10選
ネットレーベル。名前だけ知っていて、実際リリースを聞いたことがない人が多数ではないだろうか。またネットレーベル? なにそれ? という人も多いことだろう。そんな人たちのために編集部で日本のネットレーベル10個ピックアップした。
1. Maltine Records
Maltine Records Logoポップとダンスミュージックの融合を試みているレーベル。2005年の設立当初から『2ちゃんねる』を初めとするあらゆるネット文化と接近し、吸収しながら肥大。imoutoidやmadmaidなどといった新進気鋭なアーティスト発掘にも長けている。イベントを多数行うようになった2009年からはネットを飛び出し現実界でも無視できない存在になっていき、2010年にはCDをリリースし、タワーレコ—ド、HMVなどでも販売されている。イギリスのKanji KineticやSubmerseといったトラックメイカーからのリリースのみならず日本に呼び込みイベントを企画したりと、イギリスのクラブシーンとの関わりも深めている。他にも現代アートとのコラボ、大学での講演など他のレーベルには見られない予想できない活躍も見られる。今日も主宰のtomadは我々を驚かすためにどこかで暗躍していることだろう。
Maltine Records
http://maltinerecords.cs8.biz/
2. 分解系
エレクトロニカやアンビエントがリリースの中心となっており、フィールドレコーディング作品のリリースもされている。こうした傾向は、フロアだけでなく日常的なタイミングでも作品が聴かれることを明らかに意図したものだ。レーベルのコンセプトとして、「作品をコミュニケーションの産物として捉える」旨が明記されており、その結果さまざまなコラボレーションが行われている。例えば『BK-K 010』での『COMIC LO』コンピや、ソーシャルTV局『2.5D』でのラウンジプロデュースを挙げることができるだろう。はっきりとしたコンセプトとそのデザインセンスによって、分解系レコーズは大きな存在感を放つネットレーベルとなっているのである。
3. bump foot
テクノ・ハウス及びそれに準ずるタイプの楽曲を扱うbump sideと、アンビエント・IDM・エレクトロニカなどを扱うfoot sideを二本柱とするネットレーベル。リリース数は2005年の設立から6年を経て既に300を越えており、これほどの数を有するネットレーベルは数えるほどしかない。さらにリリースの殆どは海外アーティストの作品であり、海外からの注目度の高さが窺える。100作目を記念した2つのコンピレーションアルバム『bump100』、『foot100』には過去の参加アーティストの楽曲のほか、レーベルオーナーであるtatsu氏自身の楽曲も収録されており、レーベルの傾向を知るのに最適なアルバムだ。現在も続々とデモが届いているようで、さらなる発展に期待したい。
bump foot
http://www.bumpfoot.net/
4. totokoko label
音楽だけでなく、写真や絵などもリリースするネットレーベル。ギターやピアノなどアコースティックな音を基調とした柔らかく暖かい雰囲気の楽曲を中心に、エレクトロニカやポップなど様々な作品が公開されている。なかでも2010年冬と2011年春にリリースされた二つのコンピレーションアルバムは音楽の楽しさが溢れ出る、おもちゃ箱のようなアルバムで出色のでき。2010年設立でまだ日が浅いが、ライブなども企画されており、今後の展開が楽しみなレーベルだ。
totokoko label
http://totokokolabel.com/
5. 迷われレコード
実験的なフォークやロックといったジャンルに特化し、日本ネットレーベルの中で特に盛り上がりを見せている“クラブミュージック” “アニメ”などの文化とは少し異なった異彩をはなつレーベル。が、それがごく”自然”に成り立っていることが面白い。作品の多くは宅録的な音で、メロディーセンスや歌声・演奏・マスタリング技術なども音楽的には”未成熟”といわれるようなものだが、それゆえに筆者のように惹き付けられるものがある。中でも03番目の緑色少女によるリリース、11番目のユウタイサンセットによるリリースはこれらの要素が集約されている好例だ。2009年末に発足とまだ新しいが今後もマイペースに個性的で、特殊なリリースが期待できそうなレーベルだ。
迷われレコード
http://mayoware.seesaa.net/
6. Anything Records
名前の通りAnything=なんでもOKなジャンル不問のレーベル。だがどちらかと言うと現時点ではハードコア・ナードコアよりのリリースが目立っている。アーティスト陣は日本のみならず『4ch』など海外のオタク音楽家も参加している様子だ。2009年設立で、当初は主宰のMOによる音源をリリースするくらいのレーベルだったのだが最近はCDRのリリース、海外ネットレーベルとの合同リリースなど日本のネットレーベル界において無視できない存在にまで成長している。今後も同人音楽・海外オタク文化との接近による波及効果に期待したい。
Anything Records
http://anythingrec.moebox.org/
7. Anansi
アナンシはいつでも謎に満ちている。ウェブサイトをいくら見て回っても、具体的に知ることができるのは、これが2008年に設立された日本のネットレーベルということだけだ。“about”ページを見ると、何やらローマのカンピドリオ広場を描いた絵が一枚置かれている。ミケランジェロが設計したこの広場は、形状の異なる建築物を対称軸線上に配置することで、安定したスケールの中に多様性を示したバロック様式の広場である。なるほど確かに、アナンシの楽曲は実に幅広い。アンビエントダブやエレクトロニカに始まり、ビートミュージックにオルタナティブ……、そして写真家とのコラボレーションや、クリスチャン・ラッセンへのトリビュートといった企画モノまである。これら一見すると何の脈絡のないような音の集合が、夜の夜中にでも聴きたくなるような、心地良いサウンドという一つの明快な軸を構成している。従来のレコードレーベルでは難しかった、インターネットならではの切り口と言えそうだ。アナンシという広場は、これからどのような広がりを見せてくれるのだろうか。
Anansi
http://anan.si/
8. セラミックレコーズ
主宰の二人は元々がデザイン畑の人間であり、セラミックレコーズのアートワークはその全てが彼らによって手掛けられている。そうしたデザインへの一貫した志向性はシンプルで美しいサイトデザインにもよく表れているが、彼らがリリースする音楽は一転して多種多様だ。エレクトロポップからノイズまで幅広いラインナップを扱い、『CRM-013』ではボカロコンピもリリースしている。こうした広いジャンルの楽曲群は、彼らの射程がフロアを盛り上げることだけを念頭においているわけではないことを感じさせるが、2011年3月には『シガクラスタ!』というクラブイベントも開催しており、関西圏を拠点に活動するネットレーベルとして要注目である。
セラミックレコーズ
http://www.ceramicrecords.net//
9. 16次元レコード
2006年にDongによって設立され、16次元の名の通り8bitを中心にピコピコした音を提供しており、ネットレーベルの中でも特に「ゲーム音楽」的な要素が強く感じられる。特に主宰自身による『16d002』はゲーム音楽のもつノスタルジックな様相を見事に表現しているアルバムとなっている。所属アーティストの多くが音楽以外の創作活動もしており、映像作品のリリースもあり、実験的なものも多く、『16d007』や『16d011』などのようなリリースにもそのようなノイズ・実験的な要素は反映されている。直近では主宰のDongが『すたどんたん』と言うブラウザ上でアーメンを刻んだり8bit音を操作できる音楽インターフェイスを作り人気を集めている。またHyperdubにてリミックスが発売されるなど、侮れないレーベルだ。
16次元レコード
http://www.16dimensional.com/wp/
10. ALTEMA Records
2009 年に設立されたアルテマレコーズは、オタク文化とクラブカルチャーを往来するネットレーベルである。その傾向はマルチネレコーズと似ているが、後発ならではの強みもあるだろう。ブリコラージュ風のコアなサウンドが多いマルチネに対して、アルテマではよりクラブミュージックとしての完成度を指向しているように感じる。『ALTM-020』のようなフロアチューンばかりではなく、『ALTM-004』のようにベッドルーム音楽に近いものもあり、室内でも聴きやすいのではないだろうか。新しい人材の発掘・育成にも力を入れている印象があり、今後が楽しみである。
ALTEMA Records
http://www.altemarecords.jp/
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以上が編集部がながーい議論を重ねた末に出した10レーベルである。アニメネタやクラブミュージックに特化していると思われがちな”ジャンル”ではあるが、実は実験音楽やアンビエント、シューゲイズ、ひいてはフォークやロックまで、ネットレーベルには多種多様なジャンルの音楽が存在している。また新たにネットレーベルから生まれている音楽ジャンルがあるかもしれない。
これらのレーベルを手始めに、さらにネットレーベルの世界に浸ってみてほしい。
(netlabel.jp編集部)
執筆: この記事は『netlabel.jp』さんからご寄稿いただきました。
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